今回紹介するのは、人気ゲーム『アサシンクリード』(ユービーアイソフトモントリオール・スタジオ)シリーズ最新作のプロモーション用に制作された、フランスの街角を舞台としたパルクール(仏発祥のアクロバティックな移動術=フリーランニング)の動画広告です。
『アサシンクリード』は、主人公が自由を守るアサシン集団の一員となって、世界を洗脳しようと画策するテンプル騎士団のターゲットを暗殺していくというアクションゲームです。まずは、ゲームの予告編をご覧ください。
「Assassin’s Creed Unity E3 2014 World Premiere Cinematic Trailer」(無料動画共有サイト「YouTube」より)
動画URL http://youtu.be/-ohFulrJKhI
作品の舞台は、フランス革命当時のパリです。今作より4人同時プレイとなったこと、ゲームがさまざまな仕掛けを使った暗殺アクションであることなどが短く印象的にまとめられたものとなっています。
「Assassin’s Creed Unity Meets Parkour in Real Life – 4K!」(「YouTube」より)
動画URL http://youtu.be/S8b1zWOgOKA
そしてこちらは今回の本題である動画広告です。予告編同様ノートルダム寺院からスタートし、こちらでは現代のパリが舞台となっています。
フランス革命当時の民衆への圧制よろしく、現代のパリでも貴族がホームレスから小銭を奪っています。そこにアサシンクリード内のキャラクターの格好をした4人が登場します。その姿を見た貴族は慌てて逃げ出します。パリの街中で、子どもたちを押し分けて逃亡を図ります。華麗なパルクールで4人のアサシンが追いかけて行きます。小道へ逃げ込みますが、その頃アサシンたちは屋根の上から回りこみます。エッフェル塔やルーブル美術館の前などパリの名所を駆けまわりますが、ついに貴族は追い詰められて、暗殺されてしまいます。モンマルトルの丘に立つ4人のアサシンの後ろ姿で動画は終わります。
もともと『アサシンクリード』で遊んでいるプレイヤーであれば、黙っていてもゲームの予告編を見てくれるでしょう。しかし、そこまで熱心ではない人々へアプローチするために、ゲーム内容の中からパルクールの要素を切り出し、現実のパリの街で撮影したところに、この動画広告のキモがあります。観光地として知られるパリの名所をパルクールで駆けまわっていく集団の様子は、ゲームに興味のない消費者にも大きなインパクトを残し、そのうちの一定数を実際の購買へとつなぐはずです。
現に、この動画広告は大きな話題を呼び、7月22日の動画公開後1週間ほどで650万回以上も再生されています。
●世界観をうまく消費者にアピール
同様に、ゲームの主人公の特殊な能力を現実の世界で再現することに成功した動画広告の例として、同じユービーアイソフトモントリオール・スタジオ制作の「AMAZING STREET HACK」があります。
「AMAZING STREET HACK」(「YouTube」より)
動画URL http://youtu.be/1hpU_Neg1KA
スマートフォンを使った天才ハッカーとして、ゲーム上に再現されたシカゴの街を生きていくゲーム『ウォッチドッグス』の発売時に公開された動画広告で、YouTube上で1350万回も再生され、大きな話題を呼びました。
どちらの動画でも、ゲームに興味が薄い層をも取り込むかたちで動画広告が制作されています。ゲーム業界のマーケティングの現場で、パルクールやサプライズなどの「驚きのポイント」を用意しつつ、ゲームの世界観をうまく消費者にアピールする、優れた動画広告が次々と生まれているのです。
(文=黒沼 透@torukuronuma/株式会社アクトゼロ)
●株式会社アクトゼロ(http://www.actzero.jp/)
ソーシャルメディアマーケティング、コンテンツマーケティング、YouTube・Vineなどのネット動画プラットフォーム活用で、国内有数のクライアント実績を持つ。