
GX(グリーントランスフォーメーション)時代、脱炭素ビジネスが本格加速
Green Carbon株式会社(以下 Green Carbon)は2025年11月27日、NTTドコモビジネス株式会社(以下 NTTドコモビジネス)との間で資本業務提携を締結し、第三者割当増資を実施したと発表した。
この提携により、両社は「自然由来のカーボンクレジット市場の拡大」と「企業のカーボンニュートラル支援」を強化。GX(グリーントランスフォーメーション)が企業にとって不可避な潮流となる中、脱炭素ビジネスの本格展開へ踏み出した形だ。
気候変動対応とカーボン市場の活況
世界的に気候変動対策の重要性が高まるなか、企業の温室効果ガス(GHG)排出削減は喫緊の課題となっている。だが、技術やコストの制約から、自社だけでゼロエミッションを達成するのは容易ではない。こうしたなか、カーボンクレジットを活用して排出量の“オフセット”を行う手法が注目を集めてきた。
Green Carbon は、ネイチャーベースのプロジェクト(森林保全、水田管理、植林など)を通じて、カーボンクレジットを創出・販売する事業を展開してきた。NTTドコモビジネスとの提携により、通信インフラを持つ強みと、脱炭素/サステナビリティへの関心が高まる企業ニーズの両面を捉えて、さらなる市場拡大を狙う。
資本提携で脱炭素支援の“基盤”を強化
今回の提携は単なる業務提携にとどまらず、資本提携という形式を取っている点が特徴だ。Green Carbonは第三者割当増資を実施し、NTTドコモビジネスが出資先となる。これにより、脱炭素事業の仕組みと通信インフラを掛け合わせた中長期戦略の基盤を強化する。
具体的な狙いとしては以下が挙げられる:
- カーボンクレジットの安定供給:Green Carbonの自然由来プロジェクトと、NTTドコモビジネスのネットワーク/顧客基盤を組み合わせ、脱炭素を目指す企業へのクレジット提供をスケール化
- GXのワンストップ支援:カーボンオフセットだけでなく、GX推進に必要なDX支援、データ管理、報告体制などを含めた包括支援モデルの構築
- 国内外でのサステナビリティ対応の加速:企業のESG(環境・社会・ガバナンス)対応の強化とともに、脱炭素サービスの市場拡大
「信用」「透明性」「スケール」が試される
一方で、この取り組みが広く受け入れられるかどうかには、いくつかのハードルがある。
- クレジットの信頼性・透明性の確保:自然由来のプロジェクトにおいては、適正なモニタリングと報告が不可欠。GHG削減の正当性を示せなければ、企業の信用リスクにつながる可能性がある。
- コストと収益モデルの均衡:クレジットの生成や管理にはコストもかかるため、価格競争力と採算性のバランスが問われる。
- 顧客企業の理解と実装支援:単にクレジットを販売するだけではなく、企業が脱炭素を実行可能な体制を整える支援が求められる点。
つまり、今回の資本提携は“スタート地点”であり、今後の実行力と透明性がその成否を左右すると言える。
脱炭素だけでなく、事業機会としての意味
今回の提携は、脱炭素対応が“コスト”から“事業機会”へと転換しつつあることを示す象徴的な一歩だ。多くの企業がESG対応を迫られるなか、カーボンクレジットやGX支援サービスへの需要は今後増加が見込まれる。
Green Carbon + NTTドコモビジネスの組み合わせは、既存の通信・インフラ・企業ネットワークを活かしながら、環境価値を創造・提供できるスケーラブルなモデルとして注目される。
実績と透明性で信用を得られるか
最終的に注目されるのは、どれだけクレジットの質と削減実績を証明できるかだ。自然環境由来のカーボンオフセットは、モニタリングや報告の精度が求められるため、第三者監査や可視化された実績データの提示が重要となる。
また、企業がGXを実行するための支援体制の整備、価格競争力の維持、そして市場の需要拡大――このすべてを両社がバランスよく回していけるかが、今後のカギとなるだろう。