日本の伝統産業と環境スタートアップが手を組み、新たな価値創出に挑んでいる――。

カーボンニュートラルを実現する世界初の製品が、​Green Carbon株式会社(東京都港区)と、奈良県の老舗製紙会社・株式会社ペーパルによって共同開発された。

廃棄米を活用した紙製品「kome-kami」

「kome-kami」は、食用に適さない廃棄米や備蓄用アルファ米をアップサイクルし、FSC認証パルプと組み合わせて製造された紙素材で、フードロスの削減と環境負荷の低減を同時に達成している。​

さらに、製造時に発生するCO₂排出量を、Green Carbonが提供する水田由来のJ-クレジットで相殺し、実質的な排出ゼロを目指すのが今回の共同開発の試みだ。

水田由来のJ-クレジットでカーボンオフセット

Green Carbonは、全国の農家と連携し、水田の中干し期間を延長することでメタンガスの排出を削減し、その削減量をJ-クレジットとして認証・販売する事業を展開。​この仕組みにより、農家は新たな収益源を得るとともに、企業は自社のCO₂排出をオフセットする手段を確保できる。​

「kome-kami」では、このJ-クレジットを活用し、製品の製造過程で発生するCO₂を実質ゼロを達成した。

製紙汚泥と籾殻のバイオ炭化による循環型モデル

さらに、ペーパルの製紙工場から出る製紙汚泥(ペーパースラッジ)や、農家から回収した籾殻をバイオ炭化し、農地に施用する実証実験も進行中である。

​このプロセスにより、廃棄物の再利用と土壌改良、さらには追加のJ-クレジット創出が可能となり、地域内での資源循環と経済活性化を図るモデルケースとなっている。​

地域連携によるオープンイノベーションの推進

本プロジェクトは、奈良県が主催するオープンイノベーションプログラムの一環として採択され、県内外の企業が連携して脱炭素社会の実現に向けた取り組みを進めている。今後は、奈良県を中心に全国各地での展開を視野に入れ、地域資源を活用した持続可能なビジネスモデルの構築を目指している。

Green Carbonとペーパルの連携は、伝統産業と先端技術の融合による新たな価値創出の好例として、今後の地域経済と環境対策の両立に向けたモデルケースとして注目を集めているのだ。


株式会社ペーパル

1890年(明治23年)に奈良で創業して以来、133年に渡り紙の販売を通じて日本の紙文化に貢献。2008年にFSC®/COCを取得。SDGsを推進した製品開発によって、これまで「kome-kami」や「クラフトビールペーパー」、「momi-kami コートボール紙」、「vegi-kami にんじん」を発表。

詳しくはこちら: http://www.pepal.co.jp/

kome-kami公式サイト:https://foodlosspaper.com/kome-kami

グリーンカーボン株式会社

森林を軸にしたカーボンクレジット創出を行うスタートアップ。国内の森林由来のJ-クレジットを活用し、企業の脱炭素経営を支援するとともに、地方の森林保全・林業活性化に貢献。

詳しくはこちら:https://www.green-carbon.co.jp/