
2026年7月、京都で開催される国内最大規模のスタートアップカンファレンス「IVS2026」に、企画のひとつとして「IVS Youth」がある。
中学・高校生を中心とした次世代育成プログラムとして、2025年に初めて立ち上げられたIVS Youth。初開催で得られた手応えと学びをもとに、IVS2026では会場・規模・対象・コンセプト、そのすべてが丁寧に見直された。単発の企画にとどめず、IVSとしての中長期的な柱として、改めてスタートを切ろうとしている。
ディレクターを務めるのは、吉田大一氏(株式会社Blast School 代表取締役)である。
「日本を変えていく層の中の熱源が、ユース世代にもこれだけある」──そう語る吉田氏が、IVS Youthにどんな思いを込めているのか。IVS Youth ディレクター・吉田大一氏に聞いた。
目次
- 学生起業家育成に向き合ってきた人が、IVSと出会うまで
- 「初年度」から「次のステップ」へ──中長期で育てていくYOUTH
- IVS本体とともに──ひとつの場として一体感を育む
- 若い世代の熱量を、大人にも届ける場として
- 去年のファイナリストたちのその後、そしてIVS2026「IVS Youth」へ
学生起業家育成に向き合ってきた人が、IVSと出会うまで
吉田大一氏は、株式会社Blast Schoolの代表取締役として、高校生を中心とした学生起業家育成に長く取り組んできた。BLAST!SCHOOLとして展開する選抜制・完全無償の起業プログラムでは、これまで20名以上の学生起業家を輩出。資金調達やForbes掲載、各種受賞を経験する人材も育っている。
吉田氏がIVSに本格的に関わり始めたのは、2025年のこと。初開催となったIVS Youthで、集客やスポンサー対応を、京都府の担当者と連携しながら担った。運営の内側に立ちながら、吉田氏の中に少しずつ生まれてきたのは、ひとつの思いだった。
「YOUTHというものを、IVSがなぜやるのか。その意義や意味について、本質的に語られる機会は、まだ十分ではなかったように感じていたんです」
その思いが、後にIVS Youth全体のあり方を考え直すきっかけになっていく。
「初年度」から「次のステップ」へ──中長期で育てていくYOUTH

2026年のIVS Youthのディレクター就任は、IVS代表の島川敏明氏、IVS全体の企画責任者である前川寛洋氏との対話のなかで決まった。
「『やるんだったら、ちゃんと意義とか意味を持たせながらやらないと、サステナブルにならない。そこの設計も含めて、僕にやらせてください。』と打診したのが、今年僕がディレクターになった背景です」
吉田氏が思い描いているのは、シンプルなことだ。IVSが日本のスタートアップカンファレンスとしての歩みを重ねてきたからこそ、その存在感を、次世代育成にも自然なかたちで活かしていけるのではないか、と。
「IVSという国内でも有数のスタートアップカンファレンスが、次世代の人材育成にどれだけ寄与できるかによって、起業という選択肢や、有意な人材を輩出できる数も質も、大きく変わってくると思っています。IVSのなかでこれを、3カ年なのか5カ年なのか分からないですけど、単発ではなく中長期的に設計することの大切さを、ちゃんと共有した上でやりたい」
主催のHeadlineとも、長期的な視点で考えていきたいという文脈は、自然に重なっていった。長期的なファンド運営、グローバルとの対話を続けてきたHeadlineにとって、次世代の起業家との接点づくりは、これからますます大切になるテーマだ。
「即効性のある投資対象ではないけれども、将来的な起業家との接点や、次世代人材育成というところで、IVSが本格的に関わっていく。そういう命題を立てて、長期的な視点で取り組んでいきたい。去年は初年度として走ってみた、今年から本格的に進めていく。そんな位置づけだと思っています」
初年度の歩みがあったからこそ、今、次のステップに進める。そう吉田氏は感じている。
IVS本体とともに──ひとつの場として一体感を育む
初開催となった2025年のIVS Youthは、IVS本体閉幕翌日の2025年7月5日(土)、京都・QUESTIONを会場として単独開催された。実利性の高いコンテンツが設計され、メディアからの関心を集めた。一方で、運営の内側からは、次に活かしていきたい気づきも見えていた。
「ぶっちゃけ、すごくしんどかったんですよ」
吉田氏は、当時を笑いながら振り返る。
「どうしても本体との動線の繋がりがまだ十分ではなくて、IVSとIVS Youthの一体感をどう作れるか。そこに必死になって駆けずり回ったような感覚だったんです。でも、やっぱりそこの一体感をどう作れるかが、結構大事だなと感じました」
リソース、集客、スポンサーとのお付き合い──そうした観点を丁寧に見直していくなかで、吉田氏がIVS事務局と一緒に考えていったのが、IVS YouthをIVS本体内で開催するという方針だった。
「スポンサーに支えていただきながら大きくやっていくというよりも、IVSの中の価値の一員として広げていく方が、中長期的にも素直に育っていけるかなと思っています。だからまずは本体の中でやりましょう、という話を提案させてもらいました」
対象層も、これまでより少しはっきりと描いた。
「去年までは小学生をメインにしたコンテンツも置いていました。今年は、小学生をもちろん排除はしないけれど、メインは高校生が中心。なので幅は中学生〜大学生という感じ。主役はどちらかというと、何らかの挑戦の機会を作りに行こうと思っている、すでに思いを持つ学生たちです」
会場キャパシティは約120名、ローテーションで最大規模300名程度を想定。京都府・京都市はもちろん、文部科学省、経済産業省、各学校との連携も視野に入れて動き始めている。
去年までは「IVS Youthって何?」を一言で伝えるのが難しかったが、今年は対象とコンセプト、設計の解像度を上げて、本体の中で丁寧に育てていく。
若い世代の熱量を、大人にも届ける場として
吉田氏がIVS Youthについて語るとき、ふと言葉になるのが、こんな一言だ。
「子供コンテンツって、あんま思ってほしくなくて」
意欲ある高校生・中学生が集まり、その熱量が場をつくっていく。そこに大人が自然に立ち会える──それが、IVS Youthのめざす姿だ、と吉田氏は語る。
「本当に質のいいティアワン層が集まっている場、それが結果的に若い層、というだけなんですよね。むしろ、見にきた大人たちの方が、すごく気づきを得る機会になるかもしれない」
日本を変えていく層の熱源は、若い世代の中にも宿っている。それを大人にも触れてもらう場として届ける──。IVS本体内に組み込まれることで、IVSを目的に来た大人たちも自然に出会える場になる、と吉田氏は考えている。
もうひとつ、吉田氏が大切にしたいスタンスがある。それが「本質思考」という言葉だ。
「学生向けのイベントや支援は、今どんどん増えています。だからこそ、IVSでやる企画に関しては、本格的で本質的なものを届けていきたい。それがIVSなりの色であり、IVSがやる理由になる」
若い世代の挑戦の機会が広がっていること自体は、業界全体としてとても嬉しい流れだ。そのうえで吉田氏は、IVSとしての独自の色を残しておきたいと考えている。
「ピッチできますよ、とか、高校生・学生がフィーチャーされる機会が増えていくのは、すごく良いこと。一方で、ファッション的に起業を語るスタイルも、最近は多くなってきている。それ自体を否定したいわけではないんですけど、IVSはIVSとしての軸を、大切に持っていたいなと思うんです」
だからこそIVS Youthでは、本質思考、IVSだからこそ繋がるネットワーク、IVSだからこそできる発信、グローバルへの視野──そういったものを、確かに手にできる場を、ひとつずつ育てていく。
「ぶれずに、そこはやっていきたいなと思っています」
去年のファイナリストたちのその後、そしてIVS2026「IVS Youth」へ
吉田氏の思いを支えているのは、抽象的な議論ではない。初開催の2025年、IVS Youthの中高生ピッチコンテストに登壇した若き挑戦者たちは、その後、それぞれの場で次のステージへと進んでいる。
「あれ以降、いろんな場に出ていく機会が増えていますよ。彼ら、彼女らは」
すでに法人を立ち上げた学生もいれば、日本政策金融公庫が主催する「全国高校生ビジネスプラングランプリ」のファイナリストに選ばれた学生もいる。プロダクトをリリースし、海外のカンファレンスにも視野を広げていく女性ファウンダー。SusHi Techでも出展した学生──。IVS Youthでのピッチが、自分の活動を社会に発信していく入口になった事例は、ひとつやふたつにとどまらない。
「IVS Youthというきっかけで、もっと出ていいんだ、もっと出ていこう、ピッチって楽しいねと思って、いろんな場に出ていく学生は、確実に増えていると感じます」
IVS Youthのピッチは、賞金を競うようなスタイルではなく、「IVSという場でピッチができたこと」「今後の活動の中で、ここでの経験がプラスになること」を大切にしている。優勝することがゴールではなく、ここでの体験が次の一歩につながっていく──そんな価値観を、吉田氏は大切にしている。
来年以降は、グローバルの要素も少しずつ加えていきたいというビジョンも、すでに視野にある。
「来年以降は、もっとグローバルとかも巻き込んでいこうみたいな話もしているんです。単年度の計画ではなくて、本当に数年かけて、次世代人材育成というところに、IVSとして大きく寄与していけるか。そこが、IVSがやる理由にも、すごく繋がっていくと思っているんです」
「子供向け」ではなく、若い熱量を大人にもひらく場として。初年度の歩みを土台に、丁寧に育てていくフェーズへ。IVS2026のなかで、IVS Youthは新しい一歩を踏み出す。
その先には、いま中学生・高校生として参加した若者たちが、5年後・10年後にIVS本体のLAUNCHPADステージに立つ──そんな循環が、少しずつ近づいてきている。
(文=UNICORN JOURNAL編集部)