
2026年7月、京都で国内最大規模のスタートアップカンファレンス「IVS2026」が開催される。テーマは「Japan is Back」。京都市勧業館「みやこめっせ」やロームシアター京都を中心とするIVSエリアに加え、ホテルオークラ京都では招待制エリア「IVS CORE」も新設される。
そのなかで、IVS2026に新たに設置されるのが「IVS2026 CRYPTO ZONE Powered by NADA NEWS」だ。暗号資産、ステーブルコイン、オンチェーン金融など、世界的に変化の大きい領域を扱う特設ゾーンである。
このゾーンのディレクターを務めるのが、N.Avenue株式会社代表取締役であり、デジタル資産に特化したニュースメディア「NADA NEWS(旧CoinDesk JAPAN)」を率いる神本侑季氏だ。なぜIVS2026で、あらためてCryptoに特化した場所をつくるのか。神本氏に、その背景と狙いを聞いた。
目次
- 投機から実用へ、CryptoをIVSの導線に
- NADA NEWSが担う、深い議論の設計
- 特化ゾーンであり、開かれた入口である
- 「普段追っていない人」にこそ来てほしい
- 金融の夜明け前に、京都で交わされる会話
投機から実用へ、CryptoをIVSの動線に
IVSとCrypto領域の関係は、今回が初めての試みではない。過去には「IVS Crypto」として大型カンファレンスを切り出して開催してきた経緯があり、昨年はもう少し小規模に会場を分ける形でCrypto関連イベントが実施されてきた。
ただし、2026年のCRYPTO ZONEは、単に過去のCryptoイベントを復活させるものではない。Crypto領域がIVS全体とどう接続するのか。
「ブロックチェーンやCryptoの領域は、ステーブルコインやオンチェーン金融といったキーワードを起点として、AIなどとも一緒に既存の金融・経済と融合していく領域に来ていると思っています」
技術の進展はもちろん、法整備や税制適正化に向けた動きが進み、マスに広がっていく直前のようなタイミングを迎えている。
だからこそ、IVSというスタートアップカンファレンスの中に、Cryptoを独立した専門領域として閉じ込めるのではなく、起業家、投資家、事業会社、海外参加者が自然に行き来できる導線をつくる必要がある。
「IVS全体の来場者である投資家さん、スタートアップさん、海外からの参加者に来ていただける導線をしっかりつくることが、ブロックチェーンやCrypto領域と全体との融合というテーマに沿っていると思っています。」
CRYPTO ZONEは、Crypto業界のためだけの場所ではない。IVSに集まる多様な参加者が、次の金融や事業機会を考えるための接点として設計されている。
NADA NEWSが担う、深い議論の設計
一方で、Crypto領域には、表面的なトレンド紹介だけでは語りきれない深さがある。法規制、会計、税制、技術、セキュリティ、金融機関との接続。どれか一つを切り取っても、専門性の高い議論が必要になる。
神本氏は、その深さを担保する役割をNADA NEWSが担うとみる。
「Crypto特有の進化は、かなり深い議論まで行われる必要がある領域です。非常に進展があり、期待されている領域でもあるので、全体と融合しながらも、しっかり深さを伝えていけることを狙っています」
NADA NEWSは、2019年に創刊したCoinDesk JAPANを前身とするデジタル資産特化メディアである。2025年末にリブランディングし、現在はN.Avenue株式会社が運営する自社ブランドのメディアとして展開している。
NADA NEWSがCRYPTO ZONEの共同運営に入る意味は大きい。単に登壇者を集めるだけでなく、どの論点を扱うべきか、どの専門家を呼ぶべきか、どの言葉で読者や参加者に届けるべきかを編集する視点が入るからだ。
神本氏は、NADA NEWSの立場をこう説明する。
「国内有数のデジタル資産領域のメディアとしてやってきています。その観点で言うと、国内外で規制の変化、規制の進化が非常に進んでいるので、そのあたりの議論もしっかりフォローされています」
CRYPTO ZONEでは、政策や法律の議論をリードする専門家、海外の投資家、ステーブルコインに関わる金融機関や事業者など、領域ごとのキープレイヤーが集まる構想だ。
そして神本氏が今回の見どころとして挙げるテーマの一つが、ステーブルコインだ。
「ステーブルコインは、AIとともに決済が大きく変わるというところで注目されています。メガバンクや、ステーブルコインを発行している企業にも登壇いただく形になっています」
ステーブルコインは、法定通貨などに価値を連動させるデジタル資産であり、決済、送金、資金移動、オンチェーン上の金融サービスと結びつく。AIエージェントによる決済、グローバルな資金移動、企業間取引の効率化など、従来の金融システムだけでは扱いづらかった領域にも関わるテーマである。
「IVS2026 CRYPTO ZONE Powered by NADA NEWS」注目セッションリリース:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000105.000047016.html
特化ゾーンであり、開かれた入口である
CRYPTO ZONEは「特化ゾーン」である。しかし、特化しているからといって閉じているわけではない。むしろ、IVS全体の中に置かれることで、普段はCrypto領域に触れていない参加者が立ち寄れる入口になる。
神本氏は、IVS全体の見どころについて聞かれると、スタートアップへの期待が反映された場になっていることを挙げた。そのうえで、Cryptoの観点では「法律の転換期」「ステーブルコイン」「既存金融の変化」という言葉を重ねる。
「今は法律の転換期で、ステーブルコインなどによって既存の金融も大きく変わっていく、夜明け前のようなタイミングです。IVSには、スタートアップや日本経済の発展に関心を持っている方々が集まると思うので、普段Cryptoを追っている方でなくても、ぜひステージに来ていただきたいです」
ここで重要なのは、神本氏が「普段Cryptoを追っている人」だけを想定していないことだ。むしろ、IVSに参加する起業家や事業会社、投資家が、自分の領域とCryptoの接点を見つける場としてCRYPTO ZONEを位置づけている。
IVS2026のテーマは「Japan is Back」。それは、特定の業界だけが盛り上がることではなく、日本から世界で戦えるスタートアップや産業を増やしていくという問いでもある。Crypto領域もまた、その問いの中にある。
「普段追っていない人」にこそ来てほしい
Crypto領域は、言葉の難しさから距離を置かれやすい。暗号資産、DeFi、RWA、オンチェーン、ステーブルコイン。専門用語が並ぶだけで、自分には関係がないと感じる人も少なくない。
しかし、神本氏の語りから見えてくるCRYPTO ZONEは、専門家だけが専門用語を交換する場ではない。むしろ、これから自分の事業や投資判断に関わってくるテーマを、早い段階で理解するための場所だ。
たとえば、海外と取引するスタートアップにとって、決済や送金の変化は事業コストや成長速度に直結する。金融機関や大企業にとって、デジタル資産の制度設計は新規事業の前提になる。投資家にとって、オンチェーン上の資産や金融サービスは、新しい市場を見るうえで避けて通れない。
Cryptoを「業界の中の人」の話として見るか、「これから多くの産業に接続していく金融インフラ」の話として見るか。CRYPTO ZONEは、その見方を変えるきっかけになる。
神本氏の言葉には、専門領域を広く開くための意志がある。
「コンテンツもそうですが、ゾーンをあえて分けていることで、事業をリードしている方や関心の高い方が集まる場所になります。普段Cryptoを追っていない方にも、ぜひ来ていただきたいです」
金融の夜明け前に、京都で交わされる会話
IVS2026のCRYPTO ZONEは、暗号資産の価格やブームを語るだけの場所ではない。ステーブルコイン、オンチェーン金融、規制、既存金融との接続。そこで扱われるテーマは、これからの事業と金融の前提に関わっている。
「夜明け前」という神本氏の表現は、いまのCrypto領域の不確かさと期待の両方をよく表している。まだ全てが見えているわけではない。制度も、技術も、事業モデルも、これから変わっていく。だからこそ、いま何が起きているのかを同じ場所で見て、聞き、議論する意味がある。
まだCryptoを自分ごととして見ていない人にとっても、このゾーンで交わされる会話が、次の金融と事業を考える最初の一歩になるかもしれない。
(文=UNICORN JOURNAL編集部)