2026年7月、国内最大規模のスタートアップカンファレンス「IVS2026」が、4年連続となる京都の地で開催される。テーマは「Japan is Back」。

参加者目標は1万2000名以上、海外比率25%以上。前回1万3000名超を集めた巨大カンファレンスはいま、規模の拡大ではなく、別の方向に舵を切ろうとしている。ホテルオークラ京都に新設される招待制エリア「IVS CORE」、進化を遂げる「IVS Startup Market」──そこに込められた狙いは何か。

IVS代表・島川敏明氏に、IVS2026に込める想いを聞いた。

目次

  • 日本のスタートアップの現在地
  • IVS2026のテーマ「Japan is Back」
  • 「裾野は広げられた」──次は”高さ”を出す
  • 新設された「IVS CORE」誕生の背景
  • IVSは「遠心力」と「求心力」
  • 進化する「IVS Startup Market」
  • 自己否定を繰り返す、次のフェーズへ

日本のスタートアップの現在地

「アメリカの投資家から見れば、なぜ日本のスタートアップに投資しないといけないのか。それよりもアンソロピックやOpenAIのような、急成長するAIのメガベンチャーにノールックで投資した方が、何千倍のリターンが出る。そんな状況の中で、なぜ日本のスタートアップが選ばれる必要があるのか──。これが今、業界に問われていることだと思っています」

島川氏は、日本のスタートアップを取り巻く現状をフラットにこう語る。グローバル市場では莫大な資金が最先端AI銘柄に集中し、日本のスタートアップが投資先として選ばれる理由は構造的に弱まっている。「逆風の局面」だと島川氏も認める。だがそのうえで、こう続ける。

「日本のスタートアップだからこそ世界で勝てる、というところを証明していきたい。そういうところを生み出していかないといけない。これが今の日本のスタートアップ業界の至上命題だと思っています」

IVS2026のテーマ「Japan is Back」

IVS2026のテーマは、「Japan is Back」。

「このテーマには2つの想いを込めています。1点目は、ここまで規模が出てきたからこそ、集まったいい人たちをしっかり束ねて、質の高い場を作っていきたいという想い。2点目は、日本経済を、しっかりと押し進めていきたいという想いです」

「裾野は広げられた」──次は”高さ”を出す

「1万人規模でやってきて4年目の京都。裾野は広げられたと感じています」

島川氏は、IVSがここまで歩んできた道のりをこう振り返る。学生、起業家志望者、地域の支援者──多様な層が参加し、認知されるカンファレンスになった。前回IVS2025では1万3000名以上の来場者を記録し、海外比率20%、70以上の国と地域から参加者が集まった。

「自分の身の回りでも、IVSをきっかけに起業したという人が出てきている。『起業家を10倍にする』というIVSを始めた当初の目標は、徐々に形になってきていると思っています」

かつてIVSは、「スタートアップ3大カンファレンス」の一角として比較され、参加者は「IVS派」「〇〇派」「△△派」と自分に合ったカンファレンスを選ぶ関係性だった。

「今は1万人規模になって、だいぶ別のものとして変わってきたと感じています」

登壇者の属性も大きく変わった。各領域の最前線を走る人たちが登壇し、スタートアップど真ん中ではない人も参加するようになった。

「大企業の会長が来るとか、芸人さんが来ていることも!(笑)。あ、IVSってここまで届いてるんだ、と。学生も含めて、全然業界の違う人たちが普通に参加している。すごく裾野が広がってきたと感じます」

IVS2026、企画を考えるコアメンバーの間では次の合意ができていた。

「ここからのフェーズは、高さを出していこう、と」

参加者を増やすだけでは、業界の至上命題には応えられない。世界で戦える企業を生み出す、密度の高い場が必要になる──それがIVS2026の方針転換である。

新設された「IVS CORE」誕生の背景

「高さ」を象徴するのが、ホテルオークラ京都に新設される招待制エリア「IVS CORE」だ。2026年7月1日(水)〜2日(木)の2日間、約1,000名の意思決定者が集まる場として設計されている。
構想自体は昨年から温められていた。

「去年は平安神宮を借りて開催しようかという話もしていました。ただ、人員的にもオペレーション的にも、対応しきれないということで見送ったんです」

実現を後押ししたのは、IVS2025を終えた後のフィードバックだった。メインスポンサーや海外機関投資家など、IVSが力を入れて呼び込んできた登壇者層から、ホスピタリティへの課題が浮かび上がったのだ。

「みやこめっせの1階を使ったスピーカーラウンジやエグゼクティブラウンジは、課題でした。1万人規模での流動性を考えると、どうしてもみんなが触れる導線を考えがち。もちろん大切ではあるが、一般よりも高い費用を払ってくださっている登壇者やエグゼクティブな方々に対して、価値が還元できていなかったんです」

そこまでのホスピタリティを追求するなら、ホテルでの開催が最適だ──。最終的にホテルオークラ京都のワンフロア貸切に決まった。

IVSは「遠心力」と「求心力」

IVS COREの参加要件は、徹底している。CORE PASS、CORE PASS Startupを用意し、招待制と審査制を織り交ぜて運営。審査は島川氏自身が担う。

「上場企業の役員クラス、VCのパートナー以上、代表で時価総額も一定規模あるスタートアップ──そういう基準で絞っています」

参加者の質を保つため、明確な軸をもって審査すると島川氏は打ち明ける。

「『明らかに営業目的だな」という人については、審査の段階で慎重に判断しています。自分で事業を進めていて、日本の経済を動かしていくための事業を行っている人たちが集まる場にしたいです」

セッションの設計も独自だ。全セッションで録画・録音・SNS投稿を禁止。1セッション90分の長尺構成で、IVS本体のセッションよりも30分程長い。
そして、島川氏がIVS COREで最も重視するのは、コンテンツではなく、参加者同士の交流そのものだ。

「1番のコンテンツは、参加者同士のネットワーキングなんです。自分のビジネス、自分の成し遂げたいことを推進したい方に、ぜひ集まってほしいです」

その交流を最大化するために、3つの仕掛けが用意されている。

「ゲストコネクター」の配備で、会いたい相手を相談すればその場でつなぐ。「IVS Startup Marketツアー」への参加権として、みやこめっせ側のツアーにCORE参加者全員が参加可能。さらに「スピーカーラウンジ」へのアクセス権で、ロームシアター京都内の登壇者用ラウンジに全員が入り、直接交流できる。

「京都にまで来て出会うということをされているので、そこに対してしっかりと提供していく。それが一番です」

島川氏はIVSの動きを「遠心力」と「求心力」という言葉で語る。サイドイベントなどコミュニティ主導で広がる力が遠心力なら、本物の意思決定者が集まる場を作る動きは求心力。

「直近のIVSのムーブメントでは、遠心力が非常に強かった。なので今回は、その求心力サイドにちょっと寄りを戻したというバランスの取り方をしています」

IVS COREは、その求心力の象徴である。

進化する「IVS Startup Market」

「高さ」を出す動きは、IVSエリア(みやこめっせ)側にも及ぶ。代表例が、昨年好評を博した「IVS Startup Market」の進化だ。IVS2026では2つの軸で出展企業がセレクトされる。

「1つが去年と同じく、VCが選んだネクストユニコーン的なスタートアップ。もう1つが、時価総額トップ300にランクインしているような、すでにユニコーン予備軍ぐらいのスタートアップに声をかけて出展してもらう」

狙いは明確だ。

「海外の投資家が来た時に、”日本のイケてるスタートアップに会いたい”となった時、正直、去年までは『どこで会えばいいのか』という話になっていたと思うんです。それをしっかり受け止められる”お皿”を、企画として作っていこうと。ここに来ていただければ、日本で評価されているスタートアップに会えますよ、と言えるようにしたかったんです」

参加企業の質、参加者の質、出会いの質。すべての密度を上げにいく。それがIVS2026に貫かれた設計思想である。

IVS Startup Marketは2025年実績で5点満点中出展満足度4.40、マーケットツアー満足度3.94を記録。1ブース平均110名、最大500〜800名が来訪し、投資家平均22名、取引先候補者平均23名というディープな交流を実現してきた。IVS2026では3日間の会期中、延べ340社・1日100社以上が日替わりで出展する予定だ。

自己否定を繰り返す、次のフェーズへ

島川氏が一貫して大事にしているのは、過去の自分たちを”自己否定”し続けることだ。他のカンファレンスがIVSの企画を取り入れる動きについても、こう答えた。

「全然いいと思っています。むしろ真似されるくらいでないと、僕たちは常に最先端のことをしようと思えない。今回でいうと、過去にあった”参加表明”の機能は完全に否定しています。あれを今年もやるのはダサい、と。代わりに、リファラル(招待コードによる参加)でどんどん広がっていくことで、参加表明の機能を代替していくんです」

実際、IVS2026では、一緒に行きたい人を招待できる「リファラルチケット」を日本初導入。

「僕らが作ったものを、僕らが捨てて、新しいものを作っていく。常にそのスタンスでいくべきだと思っています」

「裾野は広げられた」──そう言い切れる場所まで来たIVSが、今度は「高さ」に挑む。

「スタートアップ業界や日本の経済界を変えていきたい人、その意思がある人に集まってほしいですね」

島川氏のこの一言が、IVS2026の招待状そのものなのかもしれない。

(文=UNICORN JOURNAL編集部)

UNICORN JOURNAL編集部