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静岡県立大学発の創薬ベンチャー、薬の有効性向上&副作用軽減の独自技術

2025.04.29 2025.05.01 19:47 ディープテック・アカデミア

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 Luna RD株式会社は、静岡県立大学発の創薬ベンチャーであり、革新的なドラッグデリバリーシステム(DDS)技術を基盤に、医薬品、試薬、ワクチンの研究開発、企画、製造を手掛けている。

 同社の主力技術は、薬物を必要な時間、必要な量、必要な場所に作用させることで、有効性を向上させ、副作用を軽減するDDS技術であり、特にメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの開発に不可欠な脂質ナノ粒子(LNP)技術において、独自の強みを持っている。

 30年近くにわたるDDS技術の研究開発の過程で、浅井知浩・静岡県立大学薬学部教授は、アカデミアで生まれた研究成果が実用化に至るまでのハードルの高さを痛感し、自らが研究室を主宰するようになったことを機に、Luna RDを設立したと話す。

「大学で生まれた発明を社会実装するため、静岡県立大学発のベンチャーを設立しました。私たちのLNP技術は、mRNAワクチンのような、DDS技術がなければ実用化が難しい医薬品開発に貢献できます」(浅井教授、以下同)

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浅井知浩・静岡県立大学薬学部教授

 ベンチャーの設立は、浅井教授にとって初めての経験であり、起業に関する知識や手続きはほとんどない状態からのスタートだった。株式会社リバネスなどからの支援や司法書士などの専門家からのアドバイスを受けながら、試行錯誤の末に設立に至ったものの、設立後も医薬品開発に必要な巨額の費用を要する知財の確保や、共同研究を行うパートナー企業との関係構築、ベンチャーキャピタルからの資金調達など、多くの課題に直面した。

「大学発ベンチャーにとって、知財の確保は非常に大きなハードルです。特に医薬品分野では、国内外で特許を取得する必要があり、多額の費用がかかります。また、共同研究を行うことで知財を確保できる一方で、ベンチャーキャピタルからの資金調達の際に、知財の帰属が課題となることもあります」

 Luna RDは、mRNAワクチンやRNA干渉薬などの開発に取り組んでおり、複数の医薬品候補となるパイプラインを保有している。これらの開発は、静岡県立大学をはじめとする大学や企業との共同研究によって進められており、基礎研究段階では良好なデータが得られているものもあるものの、非臨床試験や臨床試験に進むためには、さらなる資金調達が必要となっている。

 同社の強みは、LNP技術の有効性と安全性にある。浅井教授によれば、Luna RDのLNP技術は、既存のLNP技術と同等以上の性能を持ち、炎症誘発性が低いという特徴がある。

「私たちのLNP技術は、既存のLNP技術と比較して、有効性と安全性の高さが強みです。炎症誘発性が低いという特徴もあり、従来のワクチンで課題となっていた発熱や投与部位の炎症などの副反応を軽減できる可能性があります」

LNP技術の特徴と将来性

 Luna RDのLNP技術は、従来のLNP技術とは異なり、肝臓以外の組織への薬物送達を可能にするなど、さらなる改良が加えられている。この技術によって、がんなどの様々な疾患領域への応用が期待されており、浅井教授は、共同研究先との実験結果からも、その可能性を感じていると述べる。

「私たちのLNP技術は、従来の技術では難しかった肝臓以外の組織への薬物送達を可能にするなど、様々な改良を加えています。共同研究先との実験でも、がんだけでなく、他の疾患領域への応用の可能が示されており、この技術が医療分野に大きく貢献できると期待しています」

大学発ベンチャーとしての挑戦

 Luna RDは、大学発ベンチャーとして、大学との連携を深めながら事業を進めている。浅井教授は大学との連携について、大学とベンチャー双方にとってプラスとなる関係性を築きたいとの考えを示す。

「大学との連携は、研究スペースの確保や、大学が保有する権利の活用など、様々な面でメリットがあります。大学発ベンチャーが成功し、収益を大学に還元することで、大学の財政基盤の安定にも貢献できると考えています」

 一方で、大学発ベンチャーとしての苦労も少なくない。

「設立当初は、大学の事務手続きが煩雑で、関係部署との連携もスムーズにいかないなど、苦労も多くありました。しかし、徐々に大学側の理解も深まり、協力体制も構築されつつあります」

 このように、設立当初は大学の事務手続きが煩雑であったり、協力が得られにくい状況もあったことを明かしつつも、現在は大学側の支援体制が整いつつあることを語っている。

 浅井教授は、日本の創薬ベンチャーに対し、画期的な医薬品を創出し、世界市場で成功を収めることを期待しているとエールを送る。

「かつて日本は、世界のトップ10に入るような医薬品を数多く生み出していましたが、近年ではその勢いが衰えています。創薬ベンチャーが、かつての日本の創薬力を再び取り戻し、世界に通用する医薬品を開発してくれることを期待しています」

 最後に、浅井教授は、スタートアップ業界の関係者や投資家に向けて、こうメッセージを送る。

「私たちは、LNP技術に自信を持っており、この技術を広く社会に役立てたいと考えています。現在、積極的に資金調達を行っており、私たちの挑戦にご支援いただけると大変ありがたいです」

 大学発の技術が社会に広く普及し、さらに世界に向けても展開する未来も遠くないのかもしれない。

(構成=UNICORN JOURNAL編集部)

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Luna RD 公式サイト
https://luna-rd.com/

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