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OpenAIが無料の「オープンウェイトモデル」GPT-ossを出さざるを得なかった理由

2025.08.18 2025.08.18 09:18 グローバル
OpenAIが無料の「オープンウェイトモデル」GPT-ossを出さざるを得なかった理由の画像1
OpenAIの公式サイトより

●この記事のポイント
・OpenAI、オープンウェイトAI言語モデル「GPT-oss」をリリース
・無料で使うことができ、「重み」を開示しているため、開発者が自由にカスタマイズして利用可能
・市場圧力とプライベートAI需要の拡大に対応する動き

 OpenAIは7日(現地時間)、「ChatGPT」向けの新AIモデル「GPT-5」を発表したが、その直前の5日に同社が発表したオープンウェイトAI言語モデル「GPT-oss」が注目されている。無料で使うことができ、出力結果を左右するモデルの仕組みである「重み」を開示しているため、開発者が自由にカスタマイズして利用することができる。ここ数年、OpenAIは新たなモデルをリリースしてもソースを開示しない姿勢を示してきたが、今回、「GPT-2」以来5年ぶりにオープンモデルを発表。その背景は何なのか。また、「GPT-oss」はどのような特徴を持ち、どのような用途に向いているのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

●目次

オープンウェイトモデルとは何か

 軽量モデルといわれる「GPT-oss」は推論機能を持つリーズニングモデルで、数学やプログラミングなどに優れているという。公開されたモデルは「gpt-oss-120b」と「gpt-oss-20b」の2種類。「120b」は80GBの単一のGPU、米エヌビディアのGPU「H100」1枚で動作し、性能は「OpenAI o4-mini」とほぼ同等。一方、「20b」は性能的には「OpenAI o3-mini」と同程度で、ノートパソコンやスマートフォンなど16GBのGPUを搭載したエッジデバイスでも実行可能な点が大きな特徴。Apache 2.0ライセンスの下でリリースされ、マイクロソフト「Azure」、「AWS」、開発プラットフォーム「Hugging Face」などを通じて無料でダウンロードでき、商用目的での改変も可能。

 ちなみに8日に発表された「GPT-5」は、無料ユーザも使用できるが制限があり、一定量以上を利用する場合は月額20ドルの「ChatGPT Plus」、もしくは「ChatGPT Pro」を契約する必要がある。

 オープンウェイトモデルとは何か。ソフトウェアエンジニアで合同会社Hundreds代表の大塚あみ氏は次のように解説する。

「学習済み重み(weights)を公開し、ダウンロードしてローカル実行・再学習・蒸留・オンプレ運用ができる言語モデルを指します。しばしば“オープンソース”と混同されますが、学習データや学習コードの全面公開までは含みません。今回の gpt-oss は Apache 2.0 ライセンス+利用規約で提供されています。

 近年のオープンウェイトをめぐる潮流としては、米メタ(Llama系)、仏Mistral AI、中国アリババ(Qwen)が牽引し、中国勢(例:DeepSeek)の台頭で一段と加速しました。OpenAIが 2019年のGPT-2以来となるオープンウェイトを再開したのは、この市場圧力とプライベートAI(自社環境で完結させる運用)需要の拡大に対応する動きと見られます」

なぜオープンウェイト型のモデルをリリース?

 今回のGPT-ossの特徴・優位点は何か。

「性能レンジ:120bは標準ベンチマークで o4-miniに匹敵/一部で上回る、20bはo3-mini級の結果が公表されています。ツール使用(関数呼び出し/ブラウジングやPython実行)、構造化出力、CoT(Chain of Thought)に対応し、reasoning_effort(推論強度)も段階的に調整可能です。

運用性:120bは単一80GB GPUで推論可、20bは16GB級メモリでも動作可能とされ、クラウド/オンプレ/エッジまで展開しやすいのが強みです(それぞれ、80万円/15万円程度で買えるパソコンで使える)

安全性:OpenAIの Preparedness Framework下での追加評価レイヤー導入やシステムカードが用意され、同社内の安全性ベンチマークでフロンティア系に準じる水準と説明されています

 用途としては、クラウドに機微データを出せない現場や、レイテンシ/コスト/カスタマイズを最適化したい企業に有効です。ローカル運用であればプロンプトは自社環境外へ出ません」

 前述のとおり、OpenAIは近年、情報の公開を限定するかたちでAI言語モデルをリリースしてきたが、ここへきて5年ぶりにオープンウェイト型のモデルをリリースした理由は何であると考えられるのか。 

「あくまで私見ですが、以下が重なった結果だと考えます。

・データ主権・コンプライアンス要件に応えるローカル/オンプレ需要
・開発者エコシステムの奪還(Llama/Qwen等へ流れていた)
・『プライベートAI』市場の拡大(企業内での自律エージェント運用やツール連携)
・中国勢の高性能オープンモデルへの対抗」

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=大塚あみ/合同会社Hundreds代表)