スタートアップの資金調達に大きな変革の可能性…オープンイノベーションデットとは

株式会社Relicは、「日本から世界に誇れるイノベーションを生み出す」ことを目指し、2015年に設立された事業共創スタートアップ。多様なイノベーターの志と挑戦が連鎖循環する世界を創り、日本を再びイノベーション大国とすることを使命としている。
同社は、新規事業開発やスタートアップ支援を通じて、イノベーションの民主化を推進している。具体的には、大企業、スタートアップ、中堅中小企業などの様々なイノベーターに対し、事業共創プラットフォームを提供し、事業創出を支援している。
Relicは、アントレプレナー(スタートアップ起業家)、イントレプレナー(大企業内の新規事業担当者)、ネクストプレナー(中小企業の後継者)という3つのセグメントのイノベーターを支援する一方、インキュベーションテック事業、事業プロデュース事業、オープンイノベーション事業の3つの事業を展開している。創業以来9期連続で黒字増収を達成し、新規事業支援領域において国内トップの実績を持つ事業共創カンパニーとして成長している。
新たな資金調達スキーム「オープンイノベーションデット」
4月23日、株式会社Relicは、同社が開発した新たな資金調達スキーム「オープンイノベーションデット」に関する発表会を開催した。
発表会では、Relic代表取締役CEOの北嶋貴朗氏が、同社の会社概要、オープンイノベーションデット開発の背景、オープンイノベーションデットの概要、産業横断型イノベーション共創コンソーシアムについて説明した。
北嶋氏は、Relicが急成長を志向する中で、従来の資金調達手法であるエクイティファイナンスやデットファイナンスが、同社のニーズに合致しないという課題に直面したと述べた。
エクイティファイナンスは中長期的な投資には適しているものの、IPOやM&AなどによるEXITが求められるため、経営の自由度や意思決定のスピードを損なう可能性がある。一方、デットファイナンスは短期的な運転資金には適しているものの、中長期的な事業投資には向かず、資本性がないため、企業の成長を支える資金調達手段としては不十分である。また、オープンイノベーションにおいては、大企業とスタートアップの連携が、「広く浅い連携」と「狭く深い連携」の二極化しており、その中間に位置するような柔軟な連携の選択肢が少ないという課題がある。
こうした課題を解決するために、新たな資金調達とオープンイノベーションの形として「オープンイノベーションデット」を開発したという。
オープンイノベーションデットは、ハイブリッド社債(劣後特約付)と業務提携・協業を組み合わせた、新しい資金調達・共創モデルです。ハイブリッド社債は、資本性と負債の両方の性質を持つ社債であり、長期償還が可能であるなどの要件を満たすことで、金融庁のガイドラインにおいて一定の資本性が認められる。
これにより、オープンイノベーションデットは、エクイティファイナンスのようにEXITを前提とせず、デットファイナンスのように短期的な返済義務に縛られない、中長期的な事業成長を支援する資金調達を可能にするという。また、オープンイノベーションデットは、資金提供だけでなく、事業連携・協業を前提としているため、大企業とスタートアップ間の新たなオープンイノベーションの形としても機能すると説明。
産業横断型イノベーション共創コンソーシアム
Relicは、オープンイノベーションデットを活用した事業連携のあり方の一つとして、「産業横断型イノベーション共創コンソーシアム」を設立した。
コンソーシアムには、三菱商事の100%子会社である株式会社インダストリーワン、株式会社博報堂が初期参画企業として名を連ね、今後も異業種の企業が参加する予定。コンソーシアムでは、社会課題や市場機会の探索、事業構想の立案・実行、最先端技術の研究開発、個別の事業開発支援、イノベーションに資する知的資本・技術資本・社会関係資本などの共有・蓄積・発信といった活動を推進するとしている。
コンソーシアムに参画するインダストリーワン代表取締役社長の遠藤翼氏は、同社のDXコンサルティング事業を紹介し、Relicとの協業を通じて、社会実装を加速させたいと述べた。
博報堂のミライデザイン事業ユニットオープンインキュベーション局長の宮井弘之氏は、同社のオープンイノベーションへの取り組みを紹介し、コンソーシアムを通じて、Relicや他の企業と連携し、新たな事業機会を創出したいと語った。
Relicが開発したオープンイノベーションデットは、スタートアップの新たな資金調達手段として、また、大企業とスタートアップの新たなオープンイノベーションの形として、大きな可能性を秘めているといえる。
Relicは、オープンイノベーションデットの契約書の雛形を公開し、スタートアップエコシステム全体の発展に貢献することを目指すと宣言。また、産業横断型イノベーション共創コンソーシアムを通じて、異業種の企業との連携を深め、新たな市場創造や社会課題解決に向けた取り組みを加速させていくとしている。
(構成=UNICORN JOURNAL編集部)