この業務提携を、インターネット事業に詳しいアナリストはこう分析する。
「Yahoo! はポータルサイトとして強力ですが、実際に金が動くサービスで盛況なのは、ほとんど『Yahoo! オークション』だけだった。さらに、PCサイト向けのターゲッティング広告が不調なこともあり、Yahoo! はネット通販とリアル物販に力を入れ、その会員情報を生かして、より高い精度の顧客誘致を狙う方針を固めています。その目玉となるのが、今回の業務提携。ネットを通じたポイントサービスとしてYahoo! をリードしていた楽天、amazonも含め、言わば顧客情報の集約をめぐる“仁義なき闘い”が始まった、と言える」
この流れに警鐘を鳴らすのが、「ポイントサービスは利用しない」という情報セキュリティコンサルタントだ。「ネット、リアルともにあらゆる場面で共通のポイントサービスが受けられるようになることを好意的に受け止めているユーザーが多いが、そのリスクに目を向けるべきだ」という。
「今回の提携でいえば、例えばスマートフォンでYahoo!にログインし、そのまま実店舗でサービスを受ける、というキャンペーンが増えるでしょう。その中で、各ユーザーがどんなエリアで行動して、何を買い、何を食べ、どんな趣味を持っているのかまで、すべて情報として押さえられてしまう可能性がある」
同コンサルタントによれば、これだけの情報があれば、各ユーザーの所得、階層はそれなりの精度で予測することが可能で、例えば『所得の割に金を使いすぎている』ユーザーに向けて、消費者金融の広告を当てることも容易だという。現在、長野県警の現役警察官が市民の戸籍や住民票、携帯電話情報などを“情報屋”に流していたことが問題になっているが、「行動パターンまで押さえられるリスクは、その比ではない」ようだ。
7月30日には、ドコモの元派遣社員が調査会社に顧客情報を売っていたとして、愛知県警に逮捕される事件も発生している。顧客情報の取り合いが激化するなかで、「ポイントサービスは利用しない」という選択肢も考えるべきかもしれない。
(文=伊田裕介)