低下した自己資本を回復するために、ソニーやテルモなど有力企業との資本提携交渉を模索しているが、ここにきて共同持株会社方式による経営統合を提案されているテルモから、粉飾決算による株価急落で損失を被ったとして、損害賠償訴訟を起こされた。
「今後、同様の訴訟がさみだれ式に増えそうです。自己資本が400億円しかないので、かなり深刻です」とオリンパス関係者は苦しい胸の内を語る。経営統合を提案する一方で損害賠償訴訟を提起するテルモの姿勢は理解に苦しむが、メガバンク幹部は、
「株主代表訴訟の関係もあり、統合提案と訴訟は別物との判断なのでしょう。オリンパス経営陣への揺さぶりの匂いもしますが」
との見方を示す。オリンパスは東証の「特設銘柄」に指定されているため、公募増資ができない。このまま訴訟リスクにさらされれば、いずれ債務超過に陥り、上場基準に抵触する可能性もある。
自己資本は半減
今年3月末に4.6%あったオリンパスの自己資本比率は、6月末には2.2%まで半減した。円高の進行に伴い純資産が急減したためで、
「円相場が、対ドルで1 円の円高になれば純資産は25億円、対ユーロでは同7億円、それぞれ減少する」(竹内康雄専務)
という状況。直近の4-6月期決算は、マイケル・ウッドフォード元社長への和解金支払いなどで、18億円の特別損失を計上したことも響き、45億円の純損失に沈んだ。
オリンパス幹部は、次のように同社の厳しい内情を語る。
「内視鏡から年間1000億円近いキャッシュフローが生まれるので、資金は回りますが、これによって自己資本を充実させるには時間がかかりますし、その間にリーマンショックのような不測の事態が起こればアウトです。そうなると資本提携しか選択肢はありません。また、融資する銀行団も、現在2000億円の手元流動性を、1年間で1000億円返せと言っています」
提携を迷走させる幹部間の確執
だが、肝心な資本提携先がなかなか決まらない。
背景には依然として社内で力を持つ映像部門と、社内基盤の弱い笹宏行社長との確執にあるようだ。
オリンパスに対して、ソニー、テルモ、富フイルムの3社が提携を打診しているが、出資比率など条件面で折り合いがついていない。オリンパス関係者は、その背景について次のように解説する。