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スポーツライター小宮良之の「フットボールビジネス・インサイドリポート」第9回

中村俊輔は大丈夫? お国の税金事情で有名サッカー選手が流出

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見越してベッカムはアメリカにいったのか?
(「Wikipedia」より)
「現役時代に儲けた? お金なんて貯まらないよ。半分は税金でもってかれちゃうんだからさ」

 先日、週刊誌で元Jリーガーをインタビューしたとき、そんな話題が出た。Jリーグバブルの時代、1億円プレーヤーが何人も出ているが、給料の半分以上は税金で差し引かれていたという。

 これはサッカー選手に限らず、高額所得者であれば当然の義務で驚くに値しないのだが、税率は各国で異なる。

 イタリア、ドイツ、イングランドなど主要リーグは約45%前後、デンマークなど北欧では60%以上だと言われる。

 特筆すべきは、スペインの税金事情だ。

 年俸60万ユーロ以上の外国人選手には優遇税制措置が執られ、税率は格段に低い24%。2004年に施行されることになったこの税法は通称ベッカム法、「人気外国人選手を呼び込んでリーガエスパニョーラを活性化させる」という狙いがあった。単純に年俸1億円の選手の場合、約2千万円も収入に差が出てしまい、実際にビッグクラブはこの”旨味”を餌に、C・ロナウド、カカ、イブラヒモビッチなど多くの有力外国人選手を獲得してきた。

 ところが、国の経済が破綻しかけてユーロのお荷物となっているスペイン政府は、ベッカム法は廃止することを決めた。来年1月から、43%という新税率を制定。リーガエスパニョーラの人気はダウンしかねず、今いるスター選手も他国リーグに移籍する可能性が高くなる。C・ロナウドは現在の年俸1千万ユーロを不服とし、移籍を志願したとの憶測が流れるなど、世界フットボール全体の流れが変わるとも言われる。

 有力選手には間違いなく動揺が走っている。

税率は選手たちが最も気にする点の一つなのだ。例えば、フランスリーグに属するモナコ公国のASモナコが欧州の覇権を争うことができた理由も、「所得税ゼロ」を口説き文句に、デシャン監督の下、エブラ、モリエンテスなど有力選手を手に入れられたからだった。F1の開催地として世界に知られているモナコは治安も良く、選手にとっては渡りに船。彼らは強くなるべくして強くなった。

 世界を席巻するリーガだが、もし有力外国人選手がこぞって流出すれば一気にレベルが低下する恐れもある。事実、代理人たちは怪しい動きを始めている。仮定の話、C・ロナウドがマンチェスター・シティに移籍すれば(実際にこの夏にはオファーが届いたという)、それだけで勢力図は揺らぐことになるだろう。マドリーに対するダメージは計り知れない。

 そもそもスペインのクラブはどこも財政危機に陥っており、今後は一部選手を手放さざるを得なくなるのではないか。

 とはいえ、世界フットボールの覇権を握るリーガエスパニョーラが一朝一夕に没落するかと言えば、それは考えにくい。

 昨季のチャンピオンズリーグでベスト4に進出したのは、スペインのバルサとマドリーだ。バルサは09年、11年の覇者でもある。さらに昨季ヨーロッパリーグ決勝はアトレティコ・マドリッドとアスレティック・ビルバオとスペイン勢同士のカード。CL常連のビジャレアルが降格し、オサスナ、ヘタフェなど地方クラブも常に大番狂わせを演するリーグはまだまだ精強さを誇っている。