1973年のオープンから来年で40年を迎える渋谷パルコは、連日多くの若者でにぎわい、渋谷のランドマークとなっている。このパルコが秋にフロアリニューアルを実施。「原点に立ち戻り、目的性を持って来店されるビル」を目指し、さまざまな店舗が新しく加わった。
この中で注目を集めているのが「シブポップ-SHIBUYA POP-CULTURE MARKET」をテーマにしたパルコPart1 6階フロアの大改装。アニメやまんが、アイドルなど、日本が世界に誇るカルチャーの発信拠点として、マンガ『ONE PIECE』(集英社)のオフィシャルショップである「ワンピース麦わらストア」やサブカル書籍を扱う「渋谷サブカル書店」、アニメ・マンガのキャラクターグッズを取扱う「COSPA」などの店舗が登場。若者や外国人観光客などをターゲットにして、渋谷にさらなる活気を呼び込みたい考えだ。
そしてこの一角に「ソーシャルTV局」として「2.5D」がオープンした。2.5Dは、「10年代のポップカルチャーを再構築する」をテーマに、連日ライブ、DJ、トークショーなどさまざまなイベントを開催し、USTREAMやYouTube Liveでその模様をライブストリーミング配信。ネットとリアルの両面から、10年代のポップカルチャーを発信していく。このオープンを記念した前夜祭イベントに、久々の新曲となる「明日世界が終わるなら」(SMAR)を発売したばかりの中島美嘉が登場し、トークイベントを行った。
中島が登場すると会場に集った60人のファンからは一斉に黄色い声が湧く。普段、中島がライブを行うホールに比べたら考えられないほど小さい2.5D。こんな近くで彼女の姿をみることができる機会は滅多になく、ファンにとってもまたとないチャンスだ。中島も、「かわいい!」という声が飛ぶと「知ってるよ」と冗談めかして応えたり、この日が誕生日というファンに「ハッピーバースデー」を熱唱するなど、リラックスした雰囲気でファンとのコミュニケーションを楽しんだ。
また、映画『バイオハザードV:リトリビューション』に、なんとゾンビ役で出演している中島。この日のイベントでは、ファンにその勇姿もお披露目された。同作では主演のミラ・ジョヴォヴィッチとのアクションシーンもバッチリ決めたという中島。「ミラはすごく優しくて頭がいい女性。普通なら通訳の方ばかり向いてしまうところ、彼女は、まっすぐ私を見てしゃべってくれたんです」とハリウッド女優の真摯な姿に感激したようだ。
およそ40分ほどのトークイベントだったが、オンラインでの視聴者はトータルでおよそ30,000人。横浜アリーナでのコンサート並みの人々がこのトークイベントを楽しんだ計算となる。今後は、ロックバンド「アーバンギャルド」やアイドルユニット「Negicco」のライブなどを予定している。
現在、経済産業省ではアニメやマンガなど、日本のポップカルチャーを輸出する「クール・ジャパン室」を設置し、今年度は9.2億円の予算が振り分けられている。しかし、国策として推進される文化輸出には、村上隆らをはじめとする著名人からの反発も多く、また理念ばかりが先行し、具体的な施策が展開できていないのが現状だ。官僚による文化政策としてではなく、一般市民の力で真のクール・ジャパンカルチャーを発信していくために、渋谷パルコや2.5Dが果たす役割は大きくなりそうだ。