テレビ番組やネットメディアでの報道が相次ぎ、話題となっている「退職代行サービス」。
端的に説明するなら、いざ上司を目の前にしたら口にするのを躊躇してしまいそうな「辞めます」の一声を、自分に代わって会社に伝えてくれるというサービスである。以降の退職手続きは郵送などで進められるため、もう翌日からは出社する必要がないし、仕事の引き継ぎさえノータッチで構わないというから驚きだ。
先駆者と呼べるのは2017年5月にサービスを開始したEXIT(イグジット)で、退職代行費用は正社員・契約社員が5万円、アルバイト・パートが3万円となっている。決して安くはないが、EXITには月に約300件の依頼が舞い込んでくるとのことで、すでに需要の高さは証明されているのだろう。
だが、盲点もある。EXITをはじめとする退職代行サービス会社のスタッフたちは弁護士の資格を持っておらず、会社との交渉ができないため、例えば有給休暇を100%消化できる保証はないらしいのだ。
そこを割り切って依頼する分には便利なサービスといえそうだが、果たして実態はどうなっているのか。著書に『退職金制度の教科書』(労務行政)などがある、人事コンサルタントの秋山輝之氏に話を聞いた。
退職代行サービスは、使われた会社側が歓迎するケースも?
「今の時代、積極的に転職や退職を考えるビジネスパーソンが増えてきた一方で、どの会社も人手不足に直面しています。従業員が『退職したい』と申し出ても、会社側は『はい、そうですか』とすんなり認めるわけにはいきません。つまり現時点ではまだ、従業員は転職することに慣れておらず、会社側も、従業員に転職されることに慣れていない状況。転職や退職についての話をすることが、お互いにとってのタブーになってしまっているのです。
そんなときに退職代行サービスを利用すれば、従業員は上司と面と向かって話さなくても退職できますので、ストレスがかかりません。労働環境に不満があるというよりは、職場の人々と話すのが嫌だからという理由で退職を検討する方も多いのでしょう。たとえ会社でのコミュニケーションが苦手な方であっても、やはり今は人手不足ですし、昔に比べれば転職先が見つけやすくなっていますからね。