データセンター建設に反対運動続出、騒音・排水など不安…三井不動産が説明

全国各地でデータセンターの建設計画が進行するなか、地域住民らによる反対運動が相次いで起きている。昨年には千葉県流山市の約1.3haの空き地で持ち上がっていたデータセンター建設契約が住民による反対を受けて撤回されるという事態も発生。東京都日野市でも地域住民の反対を受けて、データセンターの事業主である三井不動産が計画を一部変更した。AIの普及や大手外資系IT企業による巨額の設備投資計画を受けてデータセンター需要が高まるなか、建設計画の中止や変更が続出すれば、IT業界の広い領域で技術開発やサービス提供に支障が生じる懸念もある。建設への反対の理由としては建物からの排熱や排気、騒音、排水、日照権の問題などが挙げられるが、地域住民に何らかの影響をおよぼす可能性はあるのか。事業者への取材を交えて追ってみたい。
通信端末の進化やデータ通信の大容量化、クラウドの普及などにより通信量は増大。ソフトバンクの推計によれば、日本のデータ処理需要は2020年の6エクサフロップス(1エクサフロップス=毎秒100京回の浮動小数点演算性能)から30年には1960エクサフロップスに増大するという。そのためデータセンターの建設需要が高まっており、政府は一部費用を支援する「データセンター地方拠点整備事業費補助金」を設けてDC建設と地方分散を後押ししている。
一方、地方自治体でも税収増につながるためデータセンター誘致に積極的な動きがみられる。データセンター集積地帯となった千葉県印西市はデータセンター誘致で固定資産税の税収が増加し、子育て支援や福祉など行政サービスの拡充に力を入れることで人口増が続いている。また、大規模な建物が建てられない市街化調整区域や第1種住居地域などを商業地域に変更してデータセンター建設を可能にする自治体も出てきている。
全国各地ではデータセンターの建設計画が進んでいる。ソフトバンクは北海道苫小牧市に将来的に国内最大規模の70万平方メートルに拡張するデータセンターを建設中で、26年度に開業予定。大和ハウス工業は千葉県印西市に27万平方メートルの「DPDC(ディープロジェクト・データセンター)印西パーク」を30年に開業予定。23年3月にはグーグルが日本初のデータセンターを印西市に稼働させている。
「各種法令に則って検討を進めております」
大手の外資系IT企業は相次いで日本国内での巨額の投資計画を発表している。昨年、アマゾン・ドット・コム傘下のクラウドサービス世界最大手アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は、2023~27年の5年間で日本に約2.3兆円を投資すると発表。 米マイクロソフトは生成AIの需要拡大などを見据えて2年間で約4400億円を投資すると発表。オラクルはデータセンターを増強するため10年間で約1兆2000億円以上を投資すると発表している。
こうした動きを受けて全国でデータセンター建設計画が進んでいるが、それに伴い地域住民の反対運動も活発化している。排熱、排気、騒音、排水、日照権の問題などが懸念されてのことだが、前述の日野市の事例について、地域住民の反対を受けて建設計画を一部変更した三井不動産はBusiness Journalの取材に対し、次のようにいう。
「本計画の策定においては、現状建物の設計作業を鋭意進めており、関係行政との協議を踏まえ、各種法令に則って検討を進めております。例えば騒音に関しては、日野市の『騒音規制法の規定に基づく指定地域の規制基準』等の各種法令に則り、用途地域で定められている規制基準を満たすように計画しています。 雨水排水に関しては、敷地内で浸透処理する計画です。東京都開発許可基準では5年確率降雨強度が求められていますが、稀に発生する大雨を想定し、周辺住民の皆様への影響を最低限に抑えるため、建物などで覆われる区画については、100年確率降雨強度にて計画しております。
他にも、周辺住民の方々に影響がなるべく及ばないよう、計画建物の西側には幅約70mのセットバック幅を設け、緑地やレインガーデン(雨水浸透緑地帯)を設けることで景観への配慮や雨水の涵養を図ります。計画建物の北側にも約6,900平方メートルの公園を設け、自然環境を充実させると共に、西側と同様にセットバック幅を確保することで音の距離減衰を図り、公園や緑地の樹木が防音・防風対策の役割を担いうると考えております。
スケジュールの想定については、現時点ではご記載の通りを想定しておりますが、現状建物の設計作業を鋭意進めている段階であり、今後の行政協議や作業状況等により変更となる場合があります」
「住民の皆様からのご質問に関してはできる限りご回答」
周辺住民への対応はどのように進めているのか。
「日野市まちづくり条例に基づく説明会(2024年5月・10月で計3回実施)
・市民からの意見書
・近隣住民の皆様からの個別の問い合わせ
・近隣住民の皆様と対話
の中で、様々なご意見をいただいております。直近では日野市まちづくり条例に基づき、住民の皆様から開発事業に関する意見書が日野市に提出されましたが、当社はその意見書に対する見解書を2025年2月12日に日野市に提出いたしました。引き続き事業者として、住民の皆様からのご質問に関してはできる限りご回答できるよう、鋭意対応してまいります。引き続き各種法規制に則って対応するとともに、計画に関する近隣住民の皆様からの問い合わせ先として開発事業準備室(TEL03 6695 0460受付時間:月~金※土日・祝日除く9時~18時)を設け、ご意見・ご質問など承ってまいります」
(文=Business Journal編集部)