18日付け日本経済新聞記事は、今年夏の賞与(ボーナス)支給額ランキングを公表。上位10社には積水ハウスやソフトバンク、オリンパスなど有名大企業が名を連ねるなか、一般的には馴染みの薄い企業名も複数みられる。知名度は低くても社員に高額ボーナスを支給するほど業績の良いこれらの企業の実態とは――。専門家に解説してもらう。
日経新聞記事によれば、全産業の平均ボーナス支給額は89万4285円で過去最高を更新し、前期比からの伸び率でみると非製造業は11業種中9業種でプラスとなり好調で、業種別でみると不動産・住宅が約173万円、情報・ソフトが141万円、通信が約140万円など高い金額となっている。そして企業別の支給額ランキングでは1位はディスコ(377万3654円)、2位はスター精密(211万5161円)、3位は東京エレクトロンデバイス(208万9069円)、5位はMARUWA(162万円)、9位は立花エレティック(148万円)となっているが、「誰もが名を知っている企業」とはいいがたい。
精密加工装置のメーカーであるディスコは、半導体や電子部品材料を切断・研削する製造装置に強みを持ち、ウエハーを半導体チップに切り分ける装置などで世界シェアを握る。同社は「Will 会計」と呼ばれる独自の個人別管理会計を導入していることでも知られており、社内オークションで公開された仕事を社内通貨「Will」の価格で落札(=収入)する一方、自身の人件費や他人への仕事依頼費分の「Will」は支出にカウントされ、その「Will」収支によって賞与が変動する仕組みになっている。
静岡県に本社を置くスター精密は、自動旋盤など精密部品加工用の工作機械や業務用小型プリンターのメーカーで、海外売上比率と海外生産比率は約8割に上る。米国や欧州、アジアの各国に多数の事業所を構えるグローバル企業だ。
東京エレクトロンデバイスは、半導体関連企業として高い世界シェアを誇る東京エレクトロンのグループ企業であり、半導体・ソフトウェア・電子部品の販売などを手掛ける。
愛知県に本社を置くMARUWAは電子部品用セラミックのメーカーで、高熱伝導基板は世界シェア1位を誇る。製造する製品群は広く、スマートフォン、自動運転車、航空宇宙、医療機器、デジタルカメラなど幅広い分野で同社の技術が活用されている。
大阪市に本社を置く立花エレティックは、産業用の電気機器、半導体などの電子部品を扱う電機・電子技術商社。従業員数1381人(連結、3月末)で売上高2273億円(23年3月期連結)、営業利益103億円(同)となっており、効率よく稼ぐ体制が確立されている。
求められる人材像
人事ジャーナリストの溝上憲文氏はいう。
「上位10社のうち、ディスコと東京エレクトロンデバイスは絶好調の半導体関連企業だ。ディスコは昨年8月にベア一律2万円、夏のボーナスも30万円を上乗せした。年4回のボーナス支給(正社員平均20.9カ月分)もある。半導体製造装置メーカーの東京エレクトロングループの東京エレクトロンデバイスも半導体関連の製品を手がける。東京エレクトロン自体が平均年収1399万円(23年3月期)の超優良企業だ。同じく9位の立花エレテックも半導体製品を手がける。同社は高収入企業のキーエンスと同様に、工場を持たないファブレス企業としても知られる。
また、精密機器は全体として好調だが、スター精密は従業員は492人と少ないが、自動旋盤など工作機械、小型プリンターを製造する東証プライム企業。セラミックメーカーのMARUWAもセラミック技術を活かした電子部品や半導体製品を手がける優良企業だ」
人材サービス会社社員はいう。
「これらの企業に共通しているキーワードは『半導体関連』『ニッチながらも世界的な強みを持つ技術』。就活する大学生は普段耳にする有名大企業を志望しがちだが、一般的な認知度は低いものの高い技術力を持ちグローバルに展開し、財務も堅実で待遇が高い企業は意外に多い。こうした企業は社員に高いパフォーマンスと確実な業務遂行力を求めるので、地味な実務の能力が低かったり、仕事に派手さや華やかさを求める人には向いていないかもしれない」
(文=Business Journal編集部、協力=溝上憲文/人事ジャーナリスト)