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ビッグモーター、あの有名コンサル会社が経営指南…知床遊覧船事故の会社も指南

文=Business Journal編集部
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ビッグモーターのHPより

 自動車保険の保険金水増し請求問題に揺れる中古車販売大手ビッグモーターが、昨年4月に北海道知床半島の沖合で発生した遊覧船沈没事故を起こした運営会社「知床遊覧船」の経営を指南していた経営コンサルティング会社「武蔵野」から、経営指南を受けていたことがわかった。ビッグモーターでは役員が定期的に店舗を巡回し、不備が見つかると店長に降格が命じられる「環境整備点検」や、「幹部には、目標達成に必要な部下の生殺与奪権を与える」「会社と社長の思想は受け入れないが、仕事の能力はある。今、すぐ辞めてください」などと書かれた「経営計画書」が社員に配布されていたが、武蔵野は業務として「環境整備コンサルティング」「経営計画書の作成の指導」をクライアント企業へ行っており、ビッグモーターの環境整備や経営計画書の作成にどれだけ関与していたのかが注目されている。

 ビッグモーターは25日、昨年に不正が発覚して以降初となる会見を開き、兼重宏行社長と長男の兼重宏一副社長が辞任することを発表。和泉伸二前専務が社長に就任したが、その和泉社長が会見当日に全社員向けに「会社支給携帯に入っているLINEのアカウント削除をしてください」とするメールを送付していたことが発覚。同社では役員と店長らが入るグループLINE内で役員が店長に罵声を浴びせるなどの行為が常態化しており、証拠隠滅ではないかという指摘が相次いだ。その後も、下請け会社に対して従業員や家族の保有する車の車検時期など個人情報の提供を強く要求したり(26日放送『情報ライブ ミヤネ屋』<読売テレビ>より)、無償での作業を強要したり(同)、保険金の不正請求先である損害保険ジャパンに提出した報告書で書き換えを行っていた(26日付「テレ朝news」記事)ことなど、次々と新たな不適切行為が発覚。28日には国土交通省が、道路運送車両法に基づき同社への立ち入り検査を始め、同法違反が認められれば行政処分が下されることになる。

 水増し請求を受けていた損害保険会社各社はビッグモーターに損害賠償を請求する方針だと伝えられているほか、同社が税金で整備された店舗前の街路樹に除草剤をまいて枯らしている疑惑について、東京都の小池百合子知事が都として状況を確認する意向を示すなど、今後は同社への処分や損害賠償請求が焦点となる。

「兼重前社長と息子の宏一前副社長は辞任するかたちとなるが、ビッグモーターは両氏が株主である資産管理会社の100%子会社であり、実質的に兼重親子はビッグモーターのオーナーであり、引き続き経営を取り仕切ることができる。また、新社長の和泉氏をはじめ現在の経営陣にはこれまで現場を取り仕切っていた役員がそのまま残っており、要は経営体制はまったく変わらないということ」(全国紙記者)

中小企業向けコンサルの世界ではカリスマ的な存在

 そんなビッグモーターとの関係を取り沙汰されているのが武蔵野だ。1956年創業の武蔵野は、清掃会社ダスキンの東京第1号加盟店として主に環境衛生事業を手掛けていたが、89年に小山昇氏が社長に就任後は事業を多角化させ売上が伸長。そのノウハウを生かし現在では経営支援事業がダスキン事業と並ぶ同社の柱となっており、これまで経営を指導した企業は750社、うち450社が過去最高益を達成しているという(同社HPより)。

「小山氏は多数の経営指南書を出版し、中小企業向けコンサルの世界ではカリスマ的な存在。単なる経営コンサルタントではなく、自身でも実業を手掛けて会社を成長させているので、机上の空論ではなく豊富な経験に基づいた具体的な指南をしてくれると定評がある。その小山氏本人が各地で無料の経営者向けセミナーを開催し、それが新規のクライアント企業の獲得につながっている」(中堅IT企業役員)

 武蔵野がコンサルティングで重視しているのが、経営計画書の作成と環境整備だ。同社HP上ではこの2つの重要性について次のように書かかれている。

「会社の方針や目標(数字)を明文化し、目的(経営理念)を実現させるために『経営計画書』を作成します。社長の思いや考え方を従業員に言葉で伝え、会社(=社長)の価値観を浸透させていくための道具として経営計画書を活用していくことが重要です」

「環境整備:身体で覚えて心を磨く。仕事がやりやすい環境を日々整えることで、社員の意識が変わり、会社が変わります」

「環境整備とは、朝30分の掃除をする事で、社員1人ひとりの業務の見える化・改善・習慣化まで整える仕組みです」

 ちなみにビッグモーターでは環境整備点検として役員が月1回の頻度で店舗を巡回していたが、武蔵野でも小山社長自ら定期的に各事業所を訪問し、環境整備が行き届いているかを点検している。また、ビッグモーターはノルマを達成できない店舗の店長から罰金を徴収する仕組みを導入していたが、武蔵野の経営計画書には、お客からのクレームについて報告・連絡を怠った場合には1回で賞与を半額にし、上司と当事者がかかった費用を負担すると書かれている。

 武蔵野のHP上の「お取引先企業様」にはビッグモーターの社名が記載されているが、果たしてビッグモーターの経営計画書と環境整備点検は武蔵野の指南に基づくものなのか。武蔵野に問い合わせたところ、次の回答が寄せられた。

「経営計画書作成につきましては、セミナーにご参加頂いた事はございます。セミナーでは、作成する意味・目的、またその概要について説明しております。またセミナー参加後に作成された経営計画書は、弊社では把握しておりません。環境整備につきましては、弊社の環境整備プログラムを実施した事がございます。プログラムでは、日々の環境整備や点検方法について、説明しております」

経営コンサルの使い方

 武蔵野が大きくクローズアップされたきっかけが、昨年に北海道知床半島の沖合で発生した遊覧船沈没事故だ。遊覧船を運営していた会社「知床遊覧船」が武蔵野による経営コンサルティングを受けていたことが判明。知床遊覧船では代表の桂田精一氏が法律上の資格要件を満たしていないまま遊覧船の安全統括管理者と運航管理者を務め、さらに経験豊富な船長らを解雇して操船の経験が不十分な人間に船長を任せていたことなどが明らかになり、武蔵野は次のリリースを発表するに至った。

「当該記事執筆時点、あるいは私、小山の知床訪問時点では、あくまでも事業(遊覧船)引き継ぎ(買収)に当たっての総合的な経営判断の観点からのアドバイスをさせていただきました」

「従業員の解雇についての相談は受けておりませんので、事実経過については把握しておりません」

 前出の中堅IT企業役員はいう。

「武蔵野ほどの有名コンサル企業がクライアント企業に不正行為や社員へのパワハラ的行為、解雇の実施を勧めるはずはなく、あくまでコンサルという第三者の立場で助言をしたにすぎないので、さすがにビッグモーターの不正について武蔵野に何か責任があるかのような言い方には無理がある。経営計画書の件も環境整備の件も、ビッグモーターが武蔵野の指南を過度な利益追求のために悪用したというのが正しい言い方ではないか」

 また、中堅マーケティング会社役員はいう。

「無能な経営者ほど、コンサルの話や経営本の話を鵜呑みにして、そのまま自社に導入しようとして失敗する。ビッグモーターの前社長がコンサルの指南をより高い利益の追求のために『アレンジ』していたのだとすれば、経営者としてはある意味で『賢い』といえる。ある企業でうまくいった仕組みや手法が別の企業では通用しないということは当たり前にあり、業種や企業の特徴によって適応するメソッドは違ってくる。例えば楽天では経営陣含め全社員が定期的にオフィスの掃除をしているが、同じIT企業のグーグルはそんなことはやっていないだろう。要は経営者が自社の事業や風土、社員構成に適した仕組みを導入できるかどうか。極端な話をすれば、ビッグモーターが社員に平均年収1000万円といわれる高額な給与を払えるほど業績的には良かったということは、その経営の手法がビッグモーターという会社・業種にマッチしていたともいえる。でもそれが法的・倫理的にアウトでしたということで問題になっている」

 今後ビッグモーターにのしかかる損害賠償の規模や行政処分の内容は計り知れず、道を外れた経営を行ってきた代償は大きい。

(文=Business Journal編集部)

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