生産者が育てたコオロギを買い取り、メーカーに販売する――。
株式会社フードリソースはコオロギを活用した新たなビジネスを展開している。誰でも生産者になることができ、副業感覚でコオロギを育てられるという。ノウハウも全てフードリソースが生産者に提供するため、生産者側に事前の知識は必要ない。昨今、コオロギに関して昆虫食が賛否を巻き起こしているが、フードリソースが買い取ったコオロギは、食用ではなく飼料や化粧品に応用される。社会貢献にもつながるビジネスであると、同社取締役開発者の立石學氏は語る。
虫が大の苦手だという清水あいりさん、「関西弁あいうえお」などの持ちネタで大ブレイクし、女優やタレントとして精力的に活動しているが、特に“黒っぽい”虫は苦手なようだ。とはいえ、昆虫の新たな可能性には興味があるという。黒いコオロギに抵抗を示しつつも、フードリソースの話に耳を傾ける。
人為的に作り出した無菌のコオロギ
「コオロギをまじまじと見たことはないし、形も思い出せない」と言う清水あいりさんに対し、立石氏はコオロギに対する熱い思いを訴える。
「森や草原にいるような通常のコオロギは『エンマコオロギ』と呼ばれ、1匹で約100~150匹を産みます。しかし、我々が扱うのは人為的に開発した『オオガタフタホシコオロギ』という名前で、約150~300匹も産むんです。そして、エンマコオロギは雑草から虫まで何でも食べますが、オオガタフタホシコオロギは人工の餌だけを与えるため寄生虫もなく、無菌状態となっています」(立石氏)
「じゃあ、虫というジャンルにくくってしまうのは可哀想ですね。虫扱いされるのは損している感じ(笑)。そういえばコオロギっていつが発情期なんでしたっけ?」(清水さん)
「普通のコオロギは鳴いている秋が発情期ですね。あと、1年に1回しか繁殖しない『一化性』という性質を持ちます。それに対して我々のコオロギは『多化性』であり、1年に何回も繁殖します。卵から成虫になるまで3カ月間なので、一度飼い始めれば年中、成虫を集めることができます」(立石氏)
フードリソースで扱うコオロギは人工的に開発したものであり、通常のコオロギとは異なるようだ。養殖用に改良したものといえる。意外と2人の会話は弾んでいく。
昆虫食ビジネスではない
立石氏によると、コオロギ1gに含まれるタンパク質の量は牛肉の4倍だ。そのうえ育てるために必要な飼育スペース・コストは牛の10分の1であり、飼育による環境負荷は小さい。だが昨今、インフルエンサーによる非難が相次ぐなど、昆虫食は何かと賛否を巻き起している。
「コオロギは高い栄養価があると聞いたことがあります。人の食用になるコオロギもあるんですよね? フードリソースさんで扱うコオロギは何として売られるのですか?」(清水さん)
「無印良品でも『コオロギせんべい』が販売されるなど、確かに食用コオロギは話題になっていますよね。でも、我々のコオロギは食用にはしないんです。コオロギをメーカーさんに卸すのですが、そこでは例えば牛などの家畜の飼料となるほか、タイ・ヒラメなどの養殖魚の餌にもなります。化粧品の原料としても使われています。」(立石氏)
食用だと思い込んでいただけに、意外だという反応を見せる清水さん。「なぜ食用にしないのか」という質問に対し、再び立石氏は思いを熱く語る。
「円安で輸入品の飼料が高騰する昨今、食料争奪戦の時代が来るのではないかと我々は危惧しています。でも国産のコオロギを増やせば、世界の食料争奪戦に巻き込まれなくて済む。栄養価の高いコオロギは有効活用できる余地が大きいと考えています。ちょっと難しい話ですが、食物連鎖の下の方にあるコオロギを増やすことで、上位捕食者である人間の食料も確保できるようになるんです」(立石氏)
コオロギを人が食べるのは、どうしても抵抗がある。それならば、人間が食べる動物の飼料にしようという考えだ。飼料の“国消国産”化につながり、ひいては食料の安定供給をもたらす。
副業で育てたコオロギを買い取る
なおフードリソースでは、「飼育コース」というサービスを展開しており、生産者が育てたコオロギを買い取っている。同社が取得した特許に基づくノウハウを生産者に提供し、育ててもらう仕組みだ。生産者にとっては副収入を得られるメリットがある。
「『飼育コース』でコオロギを仕入れた生産者に育ててもらい、成虫を我々が1匹2~3円で買い取っています。基本のAコースは餌、種コオロギ500匹がついて8万円です。最初に仕入れる必要がありますが、例えば1ケース500匹として、4ケース分を安定的に供給できれば、生産者はサイクルごとに4~6万円の仕入れを得ることができます」(立石氏)
「個人でも育てられるんですか? あと、コオロギはどういう場所で育つのですか?」(清水さん)
「生産者は個人を対象にしています。我々の特許に基づいた飼育読本に従えば誰でも簡単に育てられるんです。1日に餌1回と水やりを2回。あと、新聞紙を取り替えて虫の排泄物を取り除くだけです。朝晩1回ずつ作業する必要がありますが、それ以外は放置してもらって構いません。朝活と捉えてもらえれば、サラリーマンの副業でもできます。
なお、場所に関しては人間と同じように雨風をしのげれば問題ありません。摂氏0度を下回ると死んでしまうので北海道の方はお断りしていて、南の方であればなおいいです。沖縄は輸送コストの問題もあるので、できれば本州の方がいいです」(立石氏)
カマキリやバッタなど緑色の虫は大丈夫だが、黒っぽい虫が苦手だという清水さん。「育てられそうですか?」と冗談で尋ねる立石氏に対し、意外にも教育面のメリットはありそうだと語る。
「私は本当に苦手なので、無理かもしれないですね(笑)。でも、仮に将来、子供ができた場合、『飼ってよ』って言われたら飼ってあげちゃうかもしれないです。育てるうちに愛着がわきそうですね。3カ月後の別れが寂しいですが、そこも含めて命の尊さを学べるかなって」(清水さん)
「郵送にて無料で資料をお届けしておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください!」(立石氏)
一攫千金を狙う客もいるが、現在は買い取り制限をかけていると立石氏は話す。生産者は50組限定、しっかりと指導を受けた人に生産してもらいたいという。円安で原材料費の高騰が続き、スーパーの食材も値上げが止まらない。そして物価高の昨今、将来への不安のため副業に勤しむ人も増えている。食料問題と懐事情、フードリソースは日本が抱えるさまざまな社会課題を解決しようとしている。
最後に清水あいりさんは、得意のセクシーな持ちネタ「関西弁あいうえお」で「コオロギ」を締めた。
コ…こんなに大きく育ってもうて
オ…おなかいっぱい、食べさせてもろたん?
ロ…路地裏で
ギ…ギリギリアウトなラインで、このアングル見させてくれへん?
日本人がお腹いっぱい食べるために必要な家畜の飼料として、コオロギが一般的になる日が来るかもしれない。
(構成=Business Journal編集部)
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