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大手5行、純利益5.8兆円で過去最高…みずほ「初の1兆円超え」の裏側

2026.08.09 06:00 2026.08.08 22:17 企業
文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=川﨑一幸/金融アナリスト

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●この記事のポイント
三菱UFJ・三井住友・みずほなど大手5行の2026年3月期純利益は合計5兆8351億円と初の5兆円超え、3年連続で過去最高益を更新した。日銀の利上げによる利ざや拡大とM&A手数料の伸びが背景。中でもみずほは初の1兆円超(1兆2486億円、41%増)を記録し、システム障害からの復活を印象づけた。

 2026年5月、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)、みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)のメガバンク3社が2026年3月期(2025年度)決算を発表した。3社合計の純利益は前期比33.9%増の5兆2588億円。りそなホールディングスと三井住友トラストグループを加えた大手5行合計でも、純利益は前期比33%増の5兆8351億円と、初めて5兆円の大台を突破した。5行そろって、あるいはそれに準じる形で過去最高益を更新するのは3年連続となる。

「銀行冬の時代」と呼ばれ、超低金利のもとで収益力の伸び悩みが続いてきた業界が、なぜここまで稼げるようになったのか。そして3メガバンクの中で長らく「一人負け」と揶揄されてきたみずほFGが、純利益1兆2486億円(前期比41.0%増)と初めて1兆円の大台に乗せ、急速な復活を遂げているのはなぜなのか。決算データと業界動向から、その構造を読み解く。

●目次

メガバンクが空前の好況に沸く「3つの構造要因」

① 利ざやの復調——日銀の金融政策正常化

 最大の要因は、日本銀行による金融政策の正常化である。日銀は2024年3月にマイナス金利政策を解除した後、段階的に利上げを進め、2025年12月に政策金利を0.75%へ、2026年6月には1.0%へと引き上げた。1.0%という水準は1995年以来、約31年ぶりの高さとなる(7月の金融政策決定会合では6月利上げの影響を見極めるため据え置きとしたが、日銀は今後も段階的な利上げ方針を維持している)。

 この結果、各行では預金金利と貸出金利の差である「預貸金利ざや」が拡大した。貸出金利の上昇幅が預金金利の上昇幅を上回る構造が生まれ、本業の収益力を示す資金利益が大幅に改善したのである。SMFGの試算によれば、政策金利が0.25%上昇すると初年度で約1100億円の増益効果があるとされる。企業の設備投資やM&Aを背景とした旺盛な資金需要が貸出残高そのものを押し上げたことも、増益を後押しした。

② 非金利収入(手数料ビジネス)の急拡大

 金利変動の影響を受けにくい非金利ビジネスの伸びも見逃せない。国内企業の事業再編・事業承継・M&Aアドバイザリー業務に伴う手数料収入が各行で急増したほか、新NISAの浸透や株高を背景に、個人向けの資産運用・信託ビジネスも収益を押し上げた。

③ コスト構造改革と政策保有株の売却

 長年進めてきた店舗削減やデジタル化(DX)による経費率(OHR)改善に加え、企業統治改革の流れの中で進んできた政策保有株(持ち合い株)の売却益計上も、各行の利益をかさ上げしている。りそなHDでは純利益が前期比21.3%増の2587億円となり、13年ぶりの高水準を記録した背景にも、この株式売却益の寄与が指摘されている。

 なお、この勢いは決算期をまたいでも続いており、2026年4〜6月期の大手5行合計純利益は前年同期比42%増の1兆9564億円と、同時期として4年連続で過去最高を更新した。

「日銀の正常化局面において、貸出金利の再設定は預金金利の上昇よりも先行して進みやすく、利ざやの拡大効果は今後1〜2年程度は残存する可能性が高い。ただし、追加利上げのペースが鈍化すれば増益率は徐々に収斂していくだろう」(金融アナリスト・川﨑一幸氏)

メガバンク3社、際立つ「稼ぎ方」の違い

 3メガバンクは同じ追い風を受けながらも、収益構造にはそれぞれ特色がある。

 三菱UFJフィナンシャル・グループは、純利益2兆4272億円(前期比30.3%増)で国内メガバンク単体として初めて2兆円を突破した。圧倒的な規模とグローバルネットワークが強みで、傘下の米モルガン・スタンレーからの持分法投資利益(約6764億円)だけで純利益全体の約3割弱を占める。海外投資銀行機能の強さが、他行にない収益源となっている。

 三井住友フィナンシャルグループは純利益1兆5829億円(同34.4%増)。業界随一とされる低い経費率(高い収益効率)に加え、スマホ決済・金融サービス「Olive」やクレジットカード事業を軸としたリテール・決済領域の強さが特徴だ。

 みずほフィナンシャルグループは純利益1兆2486億円(同41.0%増)で初の1兆円台に到達。銀行・信託・証券が一体となった「銀信証一体」モデルによる大企業向けソリューション力と、グローバル市場部門(トレーディング)の収益力が際立つ。

 3社とも過去最高益を更新した一方、増益率で最も高かったのはみずほであり、その復活ぶりは業界内でも注目を集めている。

なぜみずほは「一人負け」から急回復できたのか

 みずほFGは2021年から2022年にかけて相次いだシステム障害で金融庁から業務改善命令を受け、経営体制の立て直しを迫られた。長年、経営リソースの多くをガバナンス改革やシステムの安定運用という「守り」に割かざるを得ず、他の2メガバンクに対して収益面で後れを取ってきた経緯がある。

 転機となったのが、2022年に就任した木原正裕社長のもとでの構造改革である。木原氏は就任後、企業風土改革とあわせて、銀行・信託・証券の壁を越えて顧客に一体的なサービスを提供する「銀証兼職」体制などを推進してきた。企業のM&Aや資金調達において、融資(銀行)・証券引受(証券)・アドバイザリー(信託・コンサルティング)をワンストップで提供し、複数の手数料を同時に獲得できる体制を整えてきたことが、近年の決算に結実している形だ。

 2026年3月期の決算発表で木原社長は「(手数料収入など)非金利ビジネスが非常に好調だ」と述べ、クロスボーダー案件を含むM&Aアドバイザリー業務の伸長を強調した。海外の投資銀行の買収を通じて北米事業の体制を強化してきたことも、収益拡大に寄与している。加えて、金利上昇局面をとらえた市場部門(セールス&トレーディング)の運用成果や、政策保有株の売却益も業績を押し上げた。木原氏自身は単純な利益額の大小よりもROE(自己資本利益率)などの「質」を重視する姿勢を示しており、2027年3月期は純利益1兆3000億円を見込む。

 川﨑氏は「みずほの改善は一時的な金利頼みではなく、システム障害という負の遺産を処理し切った上で、グループの縦割りを崩す組織改革を先に済ませていたことが大きい。金利上昇という追い風が吹いたタイミングで、その改革の成果が一気に表面化した典型例だ」と評価する。

今後の業界展望——好調はいつまで続くのか

 日銀は今後も「経済・物価情勢に応じて」段階的な利上げを継続する方針を示しており、市場では年内の追加利上げも視野に入っている。追加利上げが実現すれば、各行の利ざやはさらに拡大し、収益にはなお上振れ余地があるとみられる。企業の設備投資やM&A需要が旺盛な状況が続けば、非金利収入の伸びも下支えとなるだろう。

 一方でリスク要因もある。金利上昇に耐えられない企業のデフォルトリスク(与信関連費用の増加)や、米国の関税政策をはじめとする海外経済の減速リスクは各行が共通して警戒するところだ。りそなHDは2027年3月期予想において与信関連費用の積み増しを見込んでおり、楽観一辺倒ではない姿勢がうかがえる。

 取引先企業にとっては、金利負担の増加という側面がある一方、銀行が持つ事業コンサルティングやM&A・事業承継支援機能を活用できる機会が広がっている側面もある。個人・投資家にとっては、預金金利の上昇という恩恵がある半面、住宅ローン(変動金利)の返済負担増にも注意が必要だ。実際、2026年5月の消費者物価上昇率(生鮮食品を除くコアCPI)は前年比1.4%程度で推移しており、預金金利の上昇ペースが物価上昇に追いついていない「実質金利マイナス」の状況も続いている。銀行株については、増配や自社株買いといった株主還元の拡大も期待される局面だ。

構造改革と金利正常化が噛み合った好例

 大手銀行の好調は、単なる金利上昇という「一時的な追い風」だけで説明できるものではない。長年にわたる店舗網の見直しやデジタル化、非金利収入源の多角化といった構造改革の成果が、金利のある世界の到来によって顕在化したというのが実態に近いだろう。

 なかでもみずほFGの躍進は、システム障害という負の遺産を乗り越えた組織改革と、「銀信証一体」モデルという収益基盤が、金利復活のタイミングと噛み合った好例といえる。企業も個人も、「金利のある世界」を前提とした財務戦略・資産形成戦略への転換が、これまで以上に求められている。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=川﨑一幸/金融アナリスト)

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公開:2026.08.09 06:00