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星野リゾート、大学1年生にも採用内定→「薄給で激務」批判が的外れな理由

文=Business Journal編集部
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星野リゾート青森屋(「Wikipedia」より)

 星野リゾートが10月から大学の学年に関係なく入社試験を受けられるようにすると発表し、大きな話題になっている。大学1年生にでも内定を出すという。これに対し、SNSなどでは「星野リゾートは薄給で社員を使い捨てするから、いつでも人手不足」といった批判が出ている。実際はどうなのか。元星野リゾート社員や、ホテル業界の関係者に話を聞いた。

 星野リゾートが10月から大学の学年に関係なく入社試験を受けられるようにした。同社では通年採用を実施しており、大学生であれば誰でもいつでも希望のタイミングで選考に参加できる。内々定から半年以内に内定を受諾するかどうか決める。卒業から12カ月以内に入社すればよく、入社時期も2月と4月、6月、10月の年4回から選べる。

 大学入学直後から就職を意識することで、大学生活の内容も大きく変わる。特に、早期に内々定や内定をもらった学生は、インターンシップなどで企業の内情を深く知ることができるほか、ほかの学生が就職活動を行う3、4年生の時期に海外留学や研修など、別の活動に注力することもできるなど、学生の側のメリットも大きい。

 では、星野リゾートはなぜ政府や経済界が決めている採用活動のガイドラインを無視した“青田買い”するような採用方法に舵を切ったのか。

 ホテル業界では慢性的な人手不足が続いている。厚生労働省が公表した「令和3年雇用動向調査結果の概況」によると、ホテル業界の入職率は23.5%、離職率は25.6%で、全業界の中でも高いほうだ。その理由としては、不規則な就労時間や、休暇の取りにくさ、残業時間の多さなどが指摘されている。

 厚生労働省が公表した「令和4年 就労条件総合調査の概況」によると、ホテル業界において、労働者が1年間に取得した有給休暇は平均6.6日で、他業種に比べて著しく低かった。休暇を取りづらさが、離職率の高さにもかかわっているのは間違いない。

 そんななかでも、星野リゾートに対しては厳しい見方が多い。SNS上では、同社が大学1年生にも内定を出すと発表したことを受けて、批判的な声が続出している

「早期採用で人材確保とありますが、明らかに何かズレてます。人手不足なのは『薄給激務でも黙って働く都合のいい人』が足りないだけです。それなのに賃金を上げるわけでも福利厚生を充実させるわけでもなく、若者を騙す感じで採用するなんて姑息で卑怯だと思います」

「星野リゾートって、人件費が安い若手をこき使ってコスト下げて、ボロい建物を表面上だけ改修し、客は”高級宿”を知らない層で『わー!星野すごーい!』って盛り上がる、政商・星野社長の金儲け組織。若手が働いてもキャリア形成途中で詰みそうなイメージしかないし、低賃金業界なので行きたくはない」

元社員は批判を否定

 これらの批判は事実なのか、元星野リゾート社員に話を聞いた。

「まず、『薄給激務』との批判ですが、そんなことはないと思います。星野リゾートは複数のブランドを展開していますし、リゾートごとにも差はあると思いますが、他のホテルチェーンよりも著しく給料が低いとはいえないでしょう。ほとんどの人が年収300万円台~400万円台なので、決して高くもないですが、批判されるほどではないと思います。ただ、基本給が月20万円台で、ベースアップもあまりなかったので薄給と言われてしまうのかもしれません。最近はベアもしていますし、きちんと働いていれば、賞与で反映されますね。

 また、『人件費が安い若手をこき使ってコスト下げて、ボロい建物を表面上だけ改修』という部分も、完全に思い込みですね。平均勤続年数が男性10.1年、女性6.9年なので、中高年層は多くありませんが、“若手を使い捨てしている”という感じは受けないですね。社員やスタッフはコミュニケーションをよくとるので、職場の雰囲気も良いです。さらに、建物の建築や設計、インテリアなどは細部に至るまで非常に凝っており、手抜きや表面上だけ取り繕っているということはないです」

 元社員の視点では、そんなにブラックはなく、業界内の他社を比較して悪くはないという印象のようだ。続いて、元他社ホテルマンで、現在はホテル業界でアドバイザー・コンサルタントを行っている人物に話を聞いた。

「星野リゾートは宣伝・アピールが巧みなので、一躍高級リゾートホテルとして名が売れましたが、帝国ホテルや金谷ホテルのような老舗とは異なりますし、ザ・リッツカールトンやマンダリン・オリエンタルのような外資系高級ホテルとも肩を並べる格とはいえません。“良い立地にあるおしゃれなホテル”ではありますが、一流ホテルとはいいがたいのが正直なところです。つまり、『値段が高いのに接客や食事がいまいち』という批判もズレているといわざるをえないですし、同時に星野リゾート社員の待遇等についても超一流ホテルを比べて批判するのは酷だと思います。そのような視点で、一般的なホテルや旅館と比べてみると、決して接客は悪くないですし、給料等の待遇も悪くはないといえるでしょう。ただし、業界全体で見たときに、他業界に比べて改善の余地が大きいのは間違いありません。

 そんななかで、なぜ星野リゾートが大学1年にも内定を出すのかといえば、早期の採用活動で優秀な人材を獲得したいというのが本年でしょう。人手不足で、人材の奪い合いはあらゆる業種で起きています。

 また、『多くの経営者は大学合格直後の学生を取りたがっている』と経済界で言われていますが、星野リゾートはそれを実行したといえるでしょう。昨今の大学生は、4年間ほとんどを遊び、サークル、バイトで時間を潰しており、もっとも優秀なのは入学直後と揶揄されています。たとえば、偏差値の高い高校出身であれば、“地頭”の良さは間違いないところですし、それなりの大学に合格したのであれば、高校時代に努力したことが裏打ちされているとみることができます。つまり、これから4年間を浪費する可能性のある大学1年生を青田買いすることで、成長の手助けをして入社してもらう、というのが筋書だと考えられます」

 星野リゾートの狙いとしては、人材不足で優秀な人材の獲得競争が過熱していなか、ポテンシャルの高そうな学生を囲い込み、4年間の成長をそばで見守ろうということではないか、との分析だ。学生としても、1年生のうちに内定をもらい、インターンシップなどで卒業まで会社と交流を深めておけば、入社後のミスマッチなどは起きにくい。批判も多いのは確かだが、学生と企業、双方にメリットのある採用方法なのかもしれない。

(文=Business Journal編集部)

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