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米の価格高騰で2倍、本当の理由…「今が適正価格、これまで安すぎ」を検証

文=Business Journal編集部、協力=安藤光義/東京大学大学院教授
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「gettyimages」より

 米の価格の値上がりが家計を圧迫するなか、ある米農家がX(旧Twitter)上に「末端でこの価格になって やっと生活が出来る兆しが見えてきました」「今まで米価が安すぎました。高い価格に慣れてもらいたいです」とポスト。これを受け、むしろ現在の価格のほうが適正価格だという指摘が相次いでいる。現在の米の値上がりの原因は何か。そして、今の価格が適正価格といえるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

 9月頃から店頭に24年産の新米が並び始めたが、すでに8月の時点で23年産新米の価格は高騰しており、農林水産省が公表する相対取引価格(JAグループなどから卸会社への販売価格)・速報値は全銘柄平均で玄米60キロ(1俵)当たり1万6133円と、8月としては過去最高を記録していた。そして11月現在、スーパーなどの店頭での5kg入り一袋の価格は、前年同月比の1.5~2倍、約1000円高というケースも珍しくなくなっている。

 たとえば東京都内のある大手スーパーの5kg入り一袋の価格をみてみると、12月現在、代表的な「新潟県魚沼産 こしひかり」は4506円(税込/以下同)、「秋田米 サキホコレ」は4093円、「宮城県産 ササニシキ」は4148円、「岩手県産 ひとめぼれ」は4263円、「秋田県産 あきたこまち」は4148円となっている。

「23年産米で需給が逼迫して供給不足と値上がりが生じたことが影響して、24年産米でJAグループや多くの業者の間で集荷競争が起こり、米の卸会社間での取引価格が昨年と比べて1割ほど上昇しているといわれている。さらに輸送コストや店舗における人件費・エネルギーコストの上昇など、流通経路全体でのコスト増が重なり、最終的に消費者が購入する価格が大きく跳ね上がっている」(小売チェーン関係者)

23年産米の不足と値上がりが影響

 現在の値上がりの原因は何か。東京大学大学院農学生命科学研究科教授の安藤光義氏はいう。

「特に8月に南海トラフ地震臨時情報などの影響で23年産米の不足と値上がりが生じて、それが引き続くかたちで24年産米でJAグループや業者の間で集荷競争が生じて価格が上昇しました。24年産米が流通し始めれば下がるという見方もありましたが、そうはならず、来年も下がらないという見方も出ています。JAグループと集荷業者は収穫前の段階で購入契約を結ぶため、小売企業や外食・中食企業は必要量を確保しており不足は生じていない一方、スポットで調達しているディスカウトストアなどでは欠品が生じたのは記憶に新しいところです。

 農水省が公表する23年産米の作況指数は平年並みを示す101でしたが、実際の収穫量はそれより少なかったという声もあり、24年産米も101となっていますが、収穫量がどうなるかも今後の価格に影響してくるでしょう。コロナが落ち着いて外食需要が回復していることも、全体で見たときの米の需給逼迫につながっている可能性もあります」

 では、現在の価格が適正価格という見方についてはどうか。

「前提として、米農家の経営は余裕があるとはいえない状況ですが、個々の農家の規模にもよるでしょう。4~5ha規模の農家の多くは厳しい経営を強いられていますが、大規模農家は規模の経済がはたらくことで単位収穫量あたりの生産コストを低く抑えられる傾向があります。ただ、現在は肥料や農薬、農業機械、エネルギーの価格、そして人件費が上昇しているため、100ha規模の農家でもコストに圧迫されて苦しい経営となっているところもあるでしょう」

(文=Business Journal編集部、協力=安藤光義/東京大学大学院教授)

安藤光義/東京大学大学院農学生命科学研究科教授

安藤光義/東京大学大学院農学生命科学研究科教授

89年東京大学農学部農業経済学科卒業。94年同大学大学院農学系研究科博士課程修了。博士(農学)。2007年東京大学大学院農学生命科学研究科准教授、2008年英国ニューカッスル大学農村経済研究所客員研究員、2015年より現職。著書に『日本農業の構造変動 - 2010年農業センサス分析』、『北関東農業の構造』など。
研究テーマ:農政学、農地制度、構造政策、比較政策(EU/UK)
安藤光義のプロフィール

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