大手スーパーの西友で台湾米が発売された。米不足を背景に今夏、米価が大幅に値上がりし、新米が流通し始めてからも高止まりしたままだ。そこで、西友は国産米より安価な台湾米の販売を始めたわけだが、実際に台湾米はおいしいのか。米の専門家に話を聞いた。
米の値段が高止まりし消費者の食費を押し上げているなか、大手スーパーの西友が11月14日から関東圏で台湾産の米を発売した。1袋5kgで2797円(税込)と、一般的な国産米に比べて約2割安い。総務省の調査によると、10月のコシヒカリの価格は5kgで3787円と、前年比で約6割高くなっている。
今夏、米不足で価格が高騰。一時期、平年の2倍近くまで跳ね上がった。長い間、需要が減少トレンドにあったことから政府が減反政策を実施し、米農家は減り続け、昨今は需要に対して供給量が十分とはいえない状況が続いている。アナリストたちは一様に今後も、夏場になると米不足が発生する可能性が高いとの見方を示す。
その見立ては飲食業界全体に広がっており、卸業者や大手飲食チェーンなどは直接、米農家から米を仕入れる動きを強めており、小売店に回る米の量はさらに減る傾向にある。つまり、今後も一般消費者向けの米は供給が不足し、価格は高騰したままになる、と悲観的な見方をする向きも多い。
そんな状況を受け、西友は台湾米を販売することで消費者の購入の選択肢を増やした。だが、あまり馴染みのない台湾米に対し、消費者はどのように反応するのか。1993年に記録的な冷夏の影響で米不足に陥った際、タイ米を大量に輸入したものの、日本市場では受け入れられず、ほとんどを廃棄することになった過去があるだけに、台湾米の味が日本人の味覚に合うのか気になるところだ。そこで、一般財団法人日本米穀商連合会が認定する米の専門家「お米マイスター」に話を聞いた。
「台湾の米は、日本統治時代に日本から台湾に持ち込まれたジャポニカ米で、その後品種改良されたものもありますが、基本的に日本の米と似ています。そのため、タイ米のように、あまり口に合わないと拒絶するような状況にはならないと思います。ただ、ややねっとり感や粘り気が国産米に比べて弱いので、ねっとりした米が好きな方は、ごく少量のモチ米を足して炊くといいかもしれません。さらに古米は、国産米よりもパサつきやすい印象です。保存状態によっては味が大きく落ちるので、その場合は炒飯などの調理に使うことをお勧めします」
前出のお米マイスターによると、台湾米を目にする機会はあまりなかったかもしれないが、実は米粉やビーフンなどに形を変え、台湾米は国内でも流通しているという。台湾米を使った酒はファンも多く、高値で売られている。
西友以外では取り扱っている店は多くなく、西友も関東圏の店舗でしか販売していないため、購入できる方は限られるが、興味のある方は一度食べてみるといいかもしれない。発売から約1週間たつが、売れ行きはどうなのか。
西友のある店舗をのぞいてみると、台湾米は売り切れていた。店員に話を聞いたところ、「安いこともあってか、入荷してすぐに売り切れました。再入荷した後もすぐに売り切れるので、お客様には評価されているのだと思います」と語る。台湾米を一度食べたお客が、リピート買いするようになれば、西友は継続的に仕入れ、さらには全国展開する可能性もある。
また、消費者のニーズが高まれば、西友以外の小売店でも台湾米を取り扱うケースも考えられる。国内の慢性的な米不足を解消するきっかけになるのか、注目される。
(文=Business Journal編集部)