「令和のコメ騒動」といわれ、コメ不足が各地で問題を巻き起こしている。そんななかで、やよい軒は相変わらず「ごはんのおかわり自由」を続けており、「どこから大量のコメを仕入れているのか」と不思議がる声が出ている。
スーパーなどの店頭からコメが消え、各地でコメの販売価格が高騰している。買い占めも起きており、「令和のコメ騒動」と揶揄する声もある。コメ不足の要因として、2023年の猛暑による影響でコメの品質が低下したことや、インバウンド(訪日観光客)が急増したことでコメの消費量が増えたことと指摘する専門家が多いが、昨年のコメの生産量自体は減っておらず、インバウンドによるコメ消費が激増したとのエビデンスもない。
政府による減反政策が最大の要因とする指摘もあるが、「コメ不足」との報道に踊らされて買い占めが起きていることが大きいのではないだろうか。実際に、“あるところにはある”ことがわかっており、特に大都市圏でコメ不足は顕著になっている。新型コロナウイルスが蔓延し始めた頃のトイレットペーパー騒動に酷似している。
8月26日に大阪府が農林水産省に対して、政府の備蓄米を市場に流通させるよう要望したと発表したものの、農水省は「市場価格に影響を及ぼすおそれ」「入札など手続きに時間がかかる」「需給はひっ迫していない」などとして備蓄米の放出には否定的だ。
確かに、東北地方や九州地方のスーパーには普通にコメが並んでおり、品薄になっているのは一部の都市圏だけだ。つまり、流通が滞っているか、都市圏在住者が買い占めを行っているかのいずれか、もしくはその両方の可能性が高い。
だが、コメが足りないわけではないとしても、実際に都市圏に住んでいる人にしてみればコメを手に入れることができないという事情は変わらない。ネット販売なら購入できるかと思いきや、需要が高まっていることから通常より1.5倍から2倍程度にまで価格が高騰している。
農業協同組合(JA)や農水省によると、今年のコメの生育は良いとのことで、9月中には新米が流通し始めるとみられている。つまり、遅くともあと数週間すれば品薄事情は解消されるだろう。しかし、それまでは高級品と化したコメを大切に消費していくか、パンや麺などの小麦粉製品で食いつないでいくしかないのかもしれない。
やよい軒、なぜ「ごはんおかわり自由」を維持できるのか
そんななか、「ごはんおかわり自由」を掲げる定食店「ごはん処 やよい軒」が注目を浴びている。やよい軒では、朝食および定食メニューは、ごはんのおかわりが無料で自由にできることが特徴となっている。同店はコメ不足が表面化してからも、おかわり自由の方針は変えていない。
都心の店舗などでも、ごはんのおかわりを自由にできるのはなぜなのか。Business Journal編集部は、やよい軒を展開するプレナス広報部に、コメの仕入れ体制について話を聞いた。
「お米の確保につきまして、今年度使用分の買い付けは既に終了しております。また、来年使用分は3月の田植え前時期から供給を最優先に産地周りを実施しております。産地との取り組みは10年近く実施しておりますが、どのような市場環境においても継続していくことで、不足時に安定した供給を実現できます。
当社は、これまでもお米にこだわり事業を行って参りましたので、今後も安定して供給できるよう努めてまいります」(株式会社プレナス コミュニケーション本部 コーポレートコミュニケーション室)
やよい軒に限らず、飲食店チェーンなどでは、農家から直接一定量のコメを仕入れる契約を結んでいる。そのため、市場に出回る前に優先的にコメを確保できるのだ。ちなみに、やよい軒や弁当店「ほっともっと」などを展開するプレナスでは、北海道から九州まで日本各地の農家からコメを仕入れ、福岡、埼玉、北海道、大阪の4カ所の精米センターで精米してブレンドしている。
実は1995年に食糧法(旧食糧管理法)が改正され、農家は事前に届け出を出せば自由に米を売ることができるようになった。それ以前は、コメの価格と流通は政府の管理下にあったが、農家が民間企業や一般消費者に直接、コメを販売できるようになった。
一般的には、収穫されたコメは農家から農協(JA)へと出荷され、コメ価格センターを通じて入札が行われて価格が決まった後、卸売業者を経てスーパーマーケットなどの店頭に並ぶ。それがある程度、消費量が決まっている飲食店チェーンなどは、直接農家から仕入れられるため、市場でコメ不足になっても安定した量と価格で販売が可能になる。
もちろん、一般の消費者でもネットなどを通じて直接農家からコメを購入することは可能だ。また、ふるさと納税などでコメを返礼品としている自治体に寄付をして、コメを格安に入手することも検討してみるといいのではないだろうか。
(文=Business Journal編集部)