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サウジアラビア発のアニメ「アサティール2 未来の昔ばなし」がテレ東で放送開始

文=横山渉/ジャーナリスト
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 11月3日(日)から『アサティール2 未来の昔ばなし』が放送開始(テレビ東京系/毎週日曜朝7時)されたことを記念し、第1話のプレミア試写会とトークイベントが行われた。

 本作は、サウジアラビアのアニメーション制作会社・マンガプロダクションズと日本の東映アニメーションが共同制作したアニメ。前作の『アサティール』は2020年1月にアラブ諸国で放送され、続いて米国、そして日本でも同年4月から6月までケーブルテレビのJ:COMにて放送された。全世界で40以上の配信プラットフォームで1億回以上の視聴回数を記録した。前作の反響を受け、第2シーズンの今回は地上波での放送となった。

 イベントにはマンガプロダクションズCEOのブカーリ・イサム氏、東映アニメーション顧問の清水慎治氏、主人公マハを演じる声優の大空直美さんなどが登壇した。

 イサム氏は、第2シーズンが日本語やアラビア語だけでなく世界各地の言語での翻訳展開が決定していることを明かし、その反響には“Made in Saudi”でも“Made in Japan”でもなく、“Made in Saudi with Japan”という協業の形が大きく貢献したと話した。

 2055年は日本とサウジアラビアの国交樹立100周年だが、イサム氏は「日本のリーダーがサウジのリーダーと会って『子どものときアサティールを見ました』と言っていただき、素晴らしいパートナーシップが構築される」と夢を語った。そのうえで、「コンテンツは平和へのパスポートです」と締めた。

 清水氏は「当初、中東と生活も風習も文化も違うので、日本人でもできるのかな」という心配があったといい、「リヤド(サウジアラビア首都)に呼ばれたときはどうやって断ろうか」と考えたと振り返った。そして、企画立案から13年半を経た今、「あの時断らなくてよかった」とコメントした。

 大空さんはサウジアラビアの民族衣装アバヤを着用して登場し、本作の魅力についてこう話した。

「日常で悩みや壁に直面する孫のマハたちに対し、優しいアスマおばあちゃんがサウジアラビアの昔話を話しながら寄り添い、背中を押し、生きるヒントを与えてくれます。そうして孫たちが前に進めるようになる素晴らしい作品です」

 また、サプライズとして、アスマおばあちゃん役の声優である野沢雅子さんのスペシャルコメントビデオが上映され、「子どもがアニメから学ぶことは多く、生きていく上で大切なことを学べる」とのメッセージを寄せた。

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ブカーリ・イサムCEO、サウジではマンガで次世代の創造力に投資

 イベント後、ブカーリ・イサムCEOは集まったメディアの囲み取材に応じた。

――作品の魅力はどんなところにあるのか

「日本のアニメも幅広い世代をターゲットにした作品が増えているが、家族で見ることができることが大切。サウジアラビアの物語を世界に伝えることができるのは貴重だ。1つの作品の中で、昔のことと未来への希望と価値観、両方を提供しているのはすばらしいこと」

――視聴者にどんなところを楽しんでほしいか

「私たちは子どもの頃、日本のアニメを見て育ったし、それはすばらしい影響を与えた。(アニメを提供できるのは)日本への恩返しだと思っている。日本の子どもたちにサウジアラビアの物語を楽しんでもらい、これからの生活のパワーにしてほしい」

――サウジアラビアのコンテンツが日本の地上波で放送されるのは初めて。その意義は?

「中東でも影響力が大きいのは地上波。今回、日本だけでなく、世界各地で観てもらえることになり、少しでもサウジアラビアを近くに感じてもらえたらうれしい。そして、日本とサウジアラビアの共同制作コンテンツが増えてほしい」

――マンガプロダクションズはサウジアラビアで、どのような役割を担っているのか 

「マンガプロダクションズはサウジアラビアの教育省と文化省と協力して、350万人の学生に対しオンラインで無料のマンガやアニメ制作の授業を提供している。世界で唯一だと思う。AIの時代だからこそ、マンガというツールを用いて次世代の創造力に投資をしている。自分のアイデアを表現する力、チームでそれを作る力などを身につけてもらうためだ。我々にとってアニメやマンガは商品ではなく文化。次世代を作っていくのが我々のミッションだ」

――共同制作によって文化交流は?

「前作を制作するとき、東映アニメーションに対して、サウジアラビアの若者にインターンシップの機会を与えることを一番始めにお願いした。サウジアラビアにはアニメを教える大学も専門学校もなかったからだ。東映アニメーションでインターンシップしていた学生らは『アサティール2』の制作で活躍している。今のサウジアラビアのアニメ業界で活躍しているのは“Made in Saudi with Japan”だ」

――今後の展望は?

「日本のアニメ市場3400億円に対して、中東は1300億円。2030年までにこれは2倍、もしかすると3倍になる可能性がある。未開拓の地域、未開拓の領域で、これから日本企業とアニメビジネスを展開していく」

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「アサティール」は「昔ばなし」という意味のアラビア語

『アサティール2 未来の昔ばなし』は、現在から少し未来のサウジアラビアに暮らす一家の話。

 サウジアラビア西海岸のNEOM(ネオム)にある「オクサゴン」という海上都市に、小学6年生の少女マハの家族が引っ越してくる。マハは、弟のライアンとスルタン、そして猫型ロボットのアニスと楽しく暮らしている。しかし、3人は悩んだり困ったりすることもしばしば。

 そんなとき、アスマおばあちゃんが、アラビア半島に伝わる素敵な昔話を話してくれる。その昔話からマハたち姉弟は、大切なことを学び、自ら行動していくという物語だ。

(文=横山渉/ジャーナリスト)

※本稿はインフォメーションです。

横山渉/フリージャーナリスト

横山渉/フリージャーナリスト

産経新聞社、日刊工業新聞社、複数の出版社を経て独立。企業取材を得意とし、経済誌を中心に執筆。取材テーマは、政治・経済、環境・エネルギー、健康・医療など。著書に「ニッポンの暴言」(三才ブックス)、「あなたもなれる!コンサルタント独立開業ガイド」(ぱる出版)ほか。

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