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富士通の経営成果を支えた「人への投資」 外部エグゼクティブコーチングは何を変えたのか 

2026.08.04 13:00 2026.08.04 12:54 企業
文=福永太郎

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●この記事のポイント
富士通が進める人的資本経営の一環として導入したエグゼクティブコーチングを取り上げる。副社長5人体制への移行で顕在化した縦割り組織や役員間の連携不足に対し、約8カ月の1on1コーチングを実施。営業・デリバリー・財務部門の対話を促進し、意思決定の迅速化や経営陣の価値観共有、戦略実行力の向上につながったプロセスと、企業変革における人材投資の実践例を詳しく解説する。

 富士通は事業ポートフォリオ改革をはじめとするさまざまな変革に取り組んできた。その間、市場からの評価を示す時価総額は大きく拡大した。こうした変革の一環として、人材をコストではなく価値の源泉として位置づける人的資本経営を推進し、組織のあり方や働き方の変革にも取り組んできた。そして、2024年4月には、経営チームの質や意思決定のスピード向上を目的として、副社長を1名から5名へ増員する新たな経営体制へ移行した。

 同じタイミングで始まったのが、トップマネジメントに対する外部エグゼクティブコーチング(※)だ。執行役員副社長 CRO(Chief Revenue Officer/最高収益責任者)の大西俊介氏が、意思決定や事業連携といった経営成果の土台となる部分に取り組まれ、 目に見える変化が生まれ始めていた。

 今回は、富士通がエグゼクティブコーチングを導入した背景や具体的な実施プロセス、そして経営にどのような影響を与えたのかを、大西俊介氏と、コーチングを担当したビジネスコーチ株式会社取締役副社長 橋場剛氏へのインタビューをもとにひもといていく。

●目次

「副社長5人体制」で直面した課題

──「副社長5人体制」に移行した直後、どんな課題が見えてきたのでしょうか。エグゼクティブコーチング導入前の状況から教えてください。

富士通 執行役員副社長 CRO 大西俊介氏(以下、大西):2024年に「副社長5人体制」に移行した時点で、社長としては「一人ひとりの副社長の存在感と影響力がこれまで以上に重要になる」と考えていました。副社長同士の連携を強め、変革のスピードを上げたいという意図がありましたが、「課題感を持っていた時にコーチングの話があり、一つの手段として導入」 という判断になり、エグゼクティブコーチングが導入されました。 

 その時、当社の課題となっていたのが、日本の大企業にもよく見られる縦割り構造です。事業ごとに組織と役員が分かれ、それぞれ自分の領域だけを見て意思決定するため、若手も含めて他部門と交わる機会が少なく、「富士通としての全体価値」を提示しにくい状況でした。顧客側はクラウドから金融・流通までを束ねた全体提案を求めているのに、社内では部署間を何段階も経由しなければならず、判断やレスポンスが遅くなるという問題も起きていました。

 そこで、従来の「業種別組織」から、営業機能とデリバリー機能をそれぞれ副社長の担当領域として横断的に束ねる体制に切り替え、営業・デリバリーのやり方を全社でそろえやすくしました。ただ、その副作用として、今度は営業側のトップとデリバリー側のトップの間に新たな壁が生まれ、「副社長を5人置いたのに、生産性がかえって下がっているように見える」という現場の声も上がっていました。

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富士通 執行役員副社長 CRO 大西俊介氏

――新体制に移行する中、営業とデリバリーの間に新たな課題も生まれたわけですね。では、コーチングはどのようなかたちで実施されたのでしょうか。 

ビジネスコーチ 取締役副社長 橋場剛氏(以下、橋場):1対1 を軸にしたプログラムで、週1回・1時間程度のセッションを約8カ月、その後の社長報告なども含めると、トータルで1年弱のプロジェクトでした。

 大きなミッションは「副社長同士の一体感と連携を高める」ことで、「他の副社長とどのようなコミュニケーションを取っているか」「どこにギャップを感じているか」を一つずつ言語化し、「どんな対話を重ねればよい影響が生まれるか」を一緒に考えていきました。大西さんが「あまりやりたくない」と感じれば、別のやり方をいくつか提案し、その中からご本人がやれそうなものを選んでいただくスタイルです。 

 大西さんは複数のプロジェクトを抱え、全体を俯瞰する時間を取りにくい状況でした。そこで「時間配分をどうするか」「どの領域をどの程度ケアするか」といった整理を促し、課題解決につながるきっかけを提供することが私の役割でした。

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ビジネスコーチ 取締役副社長 橋場剛氏

大西:最初は「コーチ」という響きから、「アレコレ指導されるのかな」というイメージでしたが、実際には違いました。橋場さんは、まずはよい聞き役として話を徹底的に聞いてくれます。そのうえで「こういうやり方はどうですか」と少しだけ提案がついてくるので、自分としても素直に受け入れやすい。普段考えていない問いを投げられるので、頭の中が整理されていく感覚がありました。

橋場:問い掛けると、「ここは誰かをサポートにつけよう」「ここは任せて大丈夫だ」といった気づきが、大西さんの中から次々に生まれてきました。その結果、大西さんの働きかけで 、他の副社長 との関係強化 に向けた月次1on1も始まります。毎回のセッションで小さなアクションを決めて実行し、その結果を次回の対話で振り返る。私が直接何かをしたというよりは、その積み重ねの中で、大西さんの中にもともとあったアイデアが整理され、行動に変わっていったと感じています。

コーチングによる経営幹部マインドの変化

――コーチングを受けてみて、率直にどう変わったと感じていますか。

大西:優しい雰囲気を出すことを意識するようになり、スタッフから「変わりましたよね」と言われるようにもなった。十分に取り組めていなかった 他の副社長との関係も、意識的にコミュニケーション頻度を上げたことで、プロセスが共有され、問題が起きても一緒に解決できるようになりました。

――エグゼクティブコーチングへの投資は、経営や組織にどのようなインパクトをもたらしたと感じていますか。

大西:役員の間にあった価値観のギャップは、確実に縮まりました。研究開発・事業・コーポレートという立場の違いから生まれる「長期で見るか短期で見るか」といった時間軸の違いや、現場と管理側の視点の違いも、以前より冷静にすり合わせられるようになってきたと感じています。

 業績には好不調いずれのケースもありますが、「なぜそうなったか」「次にどうするか」と建設的に振り返れるようになったことが、何より大きな変化だと思います。トップ同士が直接対話する機会が増えたことで、従来はいくつもの部門を経由していたコミュニケーションがより短い経路で済むようになり、意思決定のスピードと戦略実行の一貫性も高まってきました。

――こうした変化は、第三者がコーチングを担ったからこそ生まれた部分もあると思いますか。

大西:第三者であることは大きかったと思います。同じことを30代の若手が60歳近い経営幹部に直接伝えても、意図せず相手の反感を招いてしまい、受け入れられなかった可能性もあります。そもそも社内の立場からは、経営幹部に踏み込んだことは言いにくいものです。その点、橋場さんのように社会性や経験値のある第三者が担当してくれたことは、非常に大きく作用したと感じています。

業種や規模に左右されにくい、コーチングの再現性

──今回のエグゼクティブコーチングは、事業にもよい影響を与えているようですね。業種や規模の異なる企業でも、同じような効果は再現できるのでしょうか。

大西:業種や規模は、そこまで関係ないと思います。コーチのアプローチの仕方は変わるでしょうが、コーチングは個人の置かれている境遇や責任、会社の背景と目指す方向性に合わせて設計するものでしょうから、業種そのものが本質的な差になるわけではないと感じます。

橋場:コーチングの設計で重要なのは、まず「社長などステークホルダーの期待と現状のギャップ」を言語化することです。そこで見えてきた前提を踏まえ、コーチングの対象となる人が「どんな立場と責任をもち、どんな役割を果たすべきか」「周囲にどんな影響を与える必要があるのか」を明らかにしていくことだと思います。そして、期待を実現するために何がポイントになるのか、具体的にどんな言動を変える必要があるのかを、対話の中で明確にしていきます。これはどの企業にも当てはまるやり方であり、こうした地道な作業の積み重ねがコーチングだと考えています。

──実際にエグゼクティブコーチングの導入を検討する際は、どのタイミングがよいとお考えでしょうか。 

大西:会社には、大きな転換点がいくつかあります。創業者交代などの経営トップ交代、大企業同士の合併や統合、大きな事業転換などです。そうした局面では、「誰が新しい経営の中心に立つのか」「どの組織や事業が主流になるのか」といった選択が行われ、その過程で価値観の違いや「自分や自分の組織は選ばれなかった」という感情が生まれやすい。それが経営レベルでこじれると、組織が壊れるリスクもあります。一方で、うまく乗り越えられれば成長のきっかけにもなるので、こうしたタイミングで摩擦や対立を減らし、シナジーを生む手段としてエグゼクティブコーチングを導入するのがよいと思います。

──経営や事業の転換点を迎えている企業は少なくないと思います。そうした企業のトップやCHROの方々に、エグゼクティブコーチングを検討するうえで伝えたいことがあれば教えてください。

大西:営業とエンジニアというふたつのタイプの人がいて、それぞれに「社長」のようなリーダーがいるのがIT業界の特徴ですが、両者の距離が近づくことで顧客に対する責任を共有できるようになります。そうした関係ができると、顧客との信頼関係が深まり、次のビジネスにもつながっていく。コーチングを導入したことで、営業とエンジニアの距離感や財務との関係性は強まるきっかけになったのではないかと思います。

 もし自社の経営幹部の関係性や、事業部間の連携に課題意識がある場合は、エグゼクティブコーチングを一つの選択肢として検討してみてもよいのではないでしょうか。


 *  *  * 


 富士通の「副社長5人体制」という改革は、「トップ同士の関係性」を変えたことに大きな特徴がある。外部のエグゼクティブコーチングを導入し、役員間の価値観ギャップや縦割りから生じるノイズを対話によって解きほぐした結果、「なぜそうなったのか」「次にどうするのか」を建設的に語れる経営チームへと変わっていった。人への投資を無形資産として捉え、継続的に取り組むことが、経営成果の質そのものを変えうることを示した事例といえるだろう。

※エグゼクティブコーチングとは
経営層やCxOを対象に、意思決定や組織運営、リーダーシップの向上を目的として実施されるコーチング。欧米企業ではCEOや経営幹部への導入例が多く、日本でも人的資本経営の広がりを背景に導入企業が増えている。

(取材・文=福永太郎)

※本稿はPR記事です。

福永太郎

福永太郎/フリーランス編集者・ライター

ライフスタイル系メディアの家電記事の担当を経て独立。現在は複数のWebメディアに寄稿。
福永太郎プロフィール

X:@fukunaga_taro

公開:2026.08.04 13:00