ゲオHD、7カ国目・カンボジア進出…なぜセカンドストリートは世界で伸びているのか

●この記事のポイント
ゲオHDが2026年9月、カンボジアに子会社を設立し「セカンドストリート」出店へ。TSUTAYA運営のCCCが5年で500店超閉店する一方、ゲオは2026年3月期に売上4812億円・営業利益142億円と増収増益。国内880店の買取網を軸に米国・台湾など海外100店超へ展開する脱・レンタル戦略を解説。
TSUTAYAが店舗網の縮小に苦しむ一方、ゲオホールディングス(HD)は増収増益を重ね、カンボジア進出まで発表した。「セカスト」のグローバル展開を支える在庫循環システムと「脱・レンタル」の全貌に迫る。
●目次
- カンボジアに子会社設立、止まらない海外出店ラッシュ
- TSUTAYAとの明暗…レンタル撤退で勝機見いだした決断
- なぜ海外で「セカスト」は支持されるのか
- 国内で買い、世界で売る―在庫循環システムの正体
- 2027年カンボジア出店の先にある課題
カンボジアに子会社設立、止まらない海外出店ラッシュ
ゲオホールディングスは9月10日、カンボジアの首都プノンペンに現地法人を設立したと発表した。2027年中には、中古品専門店「セカンドストリート(2nd STREET)」の同国1号店を出店する計画だという。
同社のリユース事業は、すでにアメリカ、台湾、マレーシア、タイ、シンガポール、香港の6カ国・地域に展開しており、2026年9月だけでも香港・銅鑼湾の商業施設「Windsor House」や、バンコクの大型ショッピングモール「サイアム ディスカバリー」への新規出店が相次いでいる。カンボジアはこれで7カ国・地域目の進出先となる見込みだ。
なぜ、ゲオはこれほどのスピードで海外展開を続けられるのか。その背景には、レンタル事業からの構造転換を早期に、かつ徹底して進めてきた経営判断がある。
TSUTAYAとの明暗…レンタル撤退で勝機見いだした決断
CD・DVDのレンタル市場は、NetflixやAmazon Prime Videoといった配信サービスの普及によって縮小の一途をたどってきた。かつて全国の商店街や住宅地に店舗を構えたレンタルチェーンの多くが、この十数年で撤退や業態転換を迫られている。
「TSUTAYA」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)も例外ではない。ここ5年で閉店した店舗は500を超えるとされ、1999年開業の旗艦店「SHIBUYA TSUTAYA」も2023年10月にレンタル営業を終了、カフェ・ラウンジを併設した新業態として再出発している。CCCは書籍・雑貨・IPビジネスなど多角的な事業への転換を模索しており、その苦闘は今も続いている。
対照的な動きを見せてきたのがゲオHDだ。「セカンドストリート」はもともと1996年に別会社として創業したブランドで、2008年にゲオの連結子会社となり、2013年に吸収合併された経緯を持つ。合併当初は、レンタル店舗への併設出店を試みたものの客層の違いから苦戦したとされるが、その後は独立した総合リユース業態として舵を切り、2016年に500店舗、2022年に800店舗と着実に拡大してきた。レンタル事業が縮小していく過程で、店舗網で培った出店ノウハウや不動産知見、接客オペレーションを、時間をかけてリユース事業に転用してきたことが大きい。レンタル需要が消えても、店舗という「箱」と立地は残る。この資産をゼロから作り直すのではなく、業態転換によって活かし続けてきた点に、ゲオの経営判断の妙があったといえる。
そして2026年10月1日、ゲオHDは社名を「株式会社セカンドリテイリング(2nd RETAILING Co., Ltd.)」へと変更する。創業40周年の節目に、英語で中古を意味する「セカンドハンド」の概念を社名に込め、リユース事業でのグローバル展開を加速させる意思を明確に打ち出した格好だ。もはや同社にとって、レンタルは過去の事業であり、リユースこそが本業だといっていいだろう。
なぜ海外で「セカスト」は支持されるのか
セカンドストリートが海外で伸びている理由は、単に「安い」からではない。むしろ現地では、状態の良いブランド品やデザイナーズブランドを扱う「セレクト型リユースショップ」として認知されている面が大きい。
アメリカでは2018年、ロサンゼルスのメルローズ地区に1号店を出店した。その後、複数の州にまたがって店舗網を広げており、客単価は日本の約2倍とされる。コムデギャルソンをはじめとする日本発のブランドが、現地では相応の高値で取引されているという報道もある。台湾では2024年6月末時点で30店舗を展開し、当初の郊外立地から商業施設内への出店へと戦略をシフトしてきた。もともと古着文化が根付いていなかった地域だからこそ、逆に競合の少なさが追い風になったとの見方もある。
戦略コンサルタントの高野輝氏は、次のように指摘する。
「海外、とりわけ欧米やアジアの都市部では、サステナビリティやサーキュラーエコノミーへの関心の高まりを背景に、リユース市場そのものが拡大しています。そこに『日本発』というブランド価値が加わることで、セカンドストリートは単なる中古品店ではなく、品質管理が行き届いた信頼できる店という評価を得やすい。真贋管理や商品状態の均質性は、海外の消費者が古着や中古ブランド品を買う際に最も懸念する部分であり、そこに応えられている点が強みでしょう」
カンボジアへの進出も、この延長線上にある。若年層人口比率が高く経済成長が続く東南アジア市場において、手頃な価格でファッション性の高い商品を購入したいというニーズは今後も伸びる余地があるとみられる。同社にとって、進出先の選定は闇雲な拡大ではなく、都市化の進展度や中間層の購買力、既存進出国での成功パターンを踏まえた、比較的堅実な判断の積み重ねといえそうだ。
国内で買い、世界で売る―在庫循環システムの正体
ゲオHDの海外展開を支える最大の武器は、日本国内に築き上げた圧倒的な買取ネットワークだ。セカンドストリートは2025年4月に国内外累計1,000店舗を突破しており、内訳は国内880店舗、海外100店舗超(米国47、台湾39、マレーシア23、タイ4)となっている。この国内店舗網が、日々大量の中古品を買い取る「入口」として機能している。
この仕組みが利益を生む理由は、商品ごとの需給ギャップにある。国内では値がつきにくい、あるいは在庫が積み上がりやすいアイテムでも、ブランド認知や希少性の異なる海外市場に回せば、高い粗利益率で販売できる可能性がある。実際、海外事業の売上高はここ数年で急拡大しており、米国事業だけでも2021年度の約20億円から2023年度には80億円超と、4倍近い伸びを記録したとされる。
もうひとつの強みが、査定業務の標準化だ。中古品ビジネスの品質は、突き詰めれば「誰が、どう値付けするか」に左右される。ゲオグループは独自のデータベースと査定システムを整備することで、経験の浅いアルバイトスタッフでも一定水準の適正査定を行える体制を構築してきたとされる。属人的な目利きに依存せず、店舗を増やしても品質を保てる仕組みは、多店舗展開を前提とする海外進出との相性がいい。
「リユース業は、拠点が増えるほど査定のばらつきという課題に直面しやすい業態です。ゲオの場合、国内で長年かけて磨いてきた査定の標準化と、それを支えるシステム投資があったからこそ、海外でも一定の品質を保ったまま出店スピードを上げられている。単なる店舗展開ではなく、オペレーションごと輸出しているという見方もできるでしょう」(同)
決算面でも、この構造転換の成果は数字に表れている。2026年3月期の連結売上高は4,812億円(前期比12.5%増)、営業利益は142億円(同26.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は87億円(同92.6%増)と大幅な増収増益となった。なかでもリユース事業の売上高は1,552億円(同17.6%増)に達し、国内64店舗の新規出店に加え、シンガポール・香港への進出が寄与している。
2027年カンボジア出店の先にある課題
もっとも、ゲオHDの経営陣自身は、今後についてやや慎重な見通しを示している点も見逃せない。2027年3月期の業績予想では、営業利益は130億円(前期比8.7%減)、純利益は60億円(同31.3%減)と、増益基調に一服感を織り込んでいる。海外出店には現地の物件取得コストや人材育成コスト、初期の店舗運営の非効率さがつきものであり、急拡大の裏側にある投資負担を考慮した保守的な予想とみられる。
競合各社も海外進出を強めている点も無視できない。ブックオフグループホールディングスはマレーシアで「Jalan Jalan Japan」を展開し、近年はカザフスタンにも出店するなど新興市場の開拓を進めている。ハードオフコーポレーションも海外事業強化に向けた専任部署を設け、パートナー企業の選定を重視しながら1,000店舗体制を目指す方針を掲げている。リユース業界全体が「国内で買い、世界で売る」という発想に本格的に舵を切りつつある中、ゲオが優位を保ち続けられるかは、現地物流網の構築や模倣品対策、現地採用スタッフの育成といった、地道なオペレーション面の巧拙にかかってくるだろう。
人口減少と国内市場の成熟が避けられない日本において、「レンタルからリユースへ」という事業転換に成功し、さらにそのノウハウを海外市場向けの成長エンジンへと発展させたゲオHDのモデルは、他業種の企業にとっても示唆に富む。主力事業の寿命が尽きかけたとき、何を捨て、何を残し、どう転用するか。セカンドリテイリングへの社名変更を控えた同社の歩みは、その一つの解答例として、しばらく注目を集め続けることになりそうだ。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=高野輝/戦略コンサルタント)
【主な参照データ・出典】
セカンドストリートやゲオを運営する株式会社ゲオホールディングスが「株式会社セカンドリテイリング」に社名変更(PR TIMES)
アセアン:ゲオHDがカンボジアに子会社、古着店を展開へ(亜州ビジネス)
中古品販売ゲオが子会社設立、1号店出店へ(NNA ASIA)
ゲオグループ2026年4月新規出店のお知らせ
ゲオHD 決算/3月期増収増益、国内外のセカンドストリートが好調(流通ニュース)
ゲオHD 決算/4~12月増収増益、国内外で出店強化(流通ニュース)
ゲオ傘下のセカンドストリートが海外で急成長(Business Insider Japan)
セカンドストリート、国内外1,000店舗突破!(PR TIMES)
ゲオとの合併、コロナ禍や海外進出の苦戦…セカンドストリートが世界1000店舗を達成したビジネス戦略とは(GOETHE)
5年で閉店は500超!TSUTAYA運営会社のもがき(東洋経済オンライン)
すてない社会を実現する「Jalan Jalan Japan」マレー半島の東海岸へ初出店(ブックオフグループHD)
海外事業強化へ専門部署 ハードオフ、目標1000店へ パートナー選定重視(日本経済新聞)











