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PS5「980円」レンタルが大ヒット、なぜ実現?ゲオがレンタルビデオのノウハウをフル活用

2025.06.06 2025.06.06 10:42 企業
提供:ゲオ
提供:ゲオ

●この記事のポイント
・ゲオ、PlayStation 5を7泊8日で980円という手頃な価格で提供するレンタルサービスが好評を博している
・既存のレンタルビデオの仕組みを活用してPS5を貸し出すというアイデアから誕生
・約400店舗で計約2000台が提供され、約80%の高い利用率を維持

 人気ゲーム機ながら7万9980円(税込/Ultra-HD Blu-ray ディスクドライブ搭載版)という価格を前に購入をためらう人も少なくないソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の「PlayStation 5(PS5)」。そんなPS5を7泊8日で980円という手頃な価格で提供するレンタルサービスが好評を博している。手掛けるのはゲーム、DVD、家電などの買取・販売の「GEO(ゲオ)」。高額なPS5本体を借りられるため、試しにプレイしたい人や長期休暇中の利用を考える人にぴったりのサービスだ。店舗での受け取りに加え、ネットレンタルも利用可能で、料金は店舗と同額だが、送料が別途かかる。そこで今回はゲオに、PS5レンタルサービスの企画の背景と低価格で提供できる理由について話を聞いた。

●目次

PS5を体験してほしいという想いが原動力

 PS5のレンタルサービスは、ゲオの全国約1,000店舗のうち約400店舗で展開されており、1店舗あたり約5台、合計約2,000台が提供されている。2025年2月28日のサービス開始以来、現在まで約80%の高い利用率を維持しているとのことだ。

 サービスが企画されたのは、2024年の夏ごろ。当時、PS5は発売当初の品薄状態が解消され、待ち時間なく入手しやすくなったものの、2024年9月2日に通常版が66,980円(税込)から79,980円(税込)へと大幅に価格改定され、購入のハードルが上がる形となっていた。その中でPS5のレンタルサービスは、より多くの人にPS5の魅力を体験してほしいという思いが原点となっている。

「ゲオのスタッフにはゲーム好きが多く、PS5には従来のゲーム機とは一線を画す、実際に体験してこそわかる特別な魅力があると感じていました。多くの方にとってPS5を購入するハードルが高い状況にもどかしさを感じ、社内での議論を重ねた結果、既存のレンタルビデオの仕組みを活用してPS5を貸し出すというアイデアが生まれました」(ゲオのシェアリング商品部の塚本佑紀さん)

 この柔軟な事業展開の背景には、「豊かで楽しい日常の暮らしを提供する」という企業理念があり、ホームエンターテインメントを軸とした事業の多角化を推進してきた実績にある。

「ゲオあれこれレンタル」では、カメラ、スマートフォン、家電などのレンタルサービスを展開。推し活用の双眼鏡や旅行用スーツケース、iPhoneのレンタルは高い人気を誇る。さらに、店舗において安価で品質の高いオリジナルブランド商品も展開しており、イヤホンやタンブラーの売れ行きも好調だという。DVD・CDのレンタル市場はストリーミングサービスの普及により近年急速に縮小しているが、こうした新たな展開が好調の維持につながっているようだ。

 PS5の店舗レンタルは前例のない挑戦的な取り組みだったが、事業テーマに沿っていれば新規事業も臨機応変に展開できる社風をもっているからこそ実現できた施策といえる。

レンタルビデオのスキームで低価格を実現

 このサービスが支持されている主な理由は、7泊8日でわずか980円(税込)という圧倒的な低価格にある。他社もPS5のレンタルサービスを提供しているものの、ゲオは1日あたりの料金が低く、さらに最低レンタル期間も短いという特長がある。

「ゲオでは旧作DVDを110円(税込)という低価格で提供しているため、価格が4桁になるとレンタルのハードルが高くなると考え、980円(税込)に設定しました。

 低価格での提供を実現できたのは、実店舗で培ってきたノウハウがあったからです。貸出・返却システムはレンタルビデオの仕組みを活用でき、PS5の取り扱いに必要な本体確認とメンテナンスには、ゲーム買取の経験を活かしています。既存のシステムを利用することで、人件費やスタッフ育成などの追加コストを抑え、店舗へのサービス導入もスムーズに進めることができました」

 PS5には無料でプレイできるゲームもあるものの、専用ソフトが必要なタイトルも多い。他社のレンタルサービスでは、ゲームソフトを通販や家電量販店で別途購入する必要があるが、ゲオはソフト販売も手がけているため、その利益を料金設定に還元できている。

ロードサイド店以外への展開も視野に

 PS5本体のレンタルサービスは、PS5の販売元であるソニー・インタラクティブエンタテインメントの許可を得て実施された。ユーザーに試しにプレイしてもらうことで、購入をためらうユーザーにもPS5の魅力を実感してもらえるというメリットが評価され、サービスの実現に至った。

「『原神』はスマートフォンなどPS5以外でもプレイできますが、PS5でプレイすると、スマホと比べて表現がより精細で、没入感が格段に違うんですよね。私自身、PS5でアクションRPG『エルデンリング』をプレイしたときは、本当に圧倒されました。迫力があり、映像も美しく、まるで映画だなと。PS5は本体価格から入手のハードルは高いですが、レンタルで実際に体験していただければ、その価値を実感していただけるゲーム機だと確信しています」

 PS5は本体が大きく重いため持ち運びが困難であることから、現在は車でのアクセスが便利なロードサイド店舗を中心にサービスを提供している。今後の展開について塚本さんは語る。

「サービス開始前は、貸出・返却の際に店舗への来店が必要なため、時間効率を重視する現代において、お客様がわざわざ足を運んでくださるのか心配でした。しかし、予想以上の好評をいただき、私を含めチーム全体は安堵しているところです。サービス開始から3カ月が経ち、手応えを感じており、今後はロードサイド以外の店舗への展開も検討しています」

 レンタルビデオで培ったノウハウを活かしたPS5のレンタル事業は、消費者のニーズに見事に応えている。物価高騰によりシェアリングエコノミーへの注目が高まるなか、レンタル事業で業界を牽引してきた実績をもつゲオの今後の展開から目が離せない。

(文=福永太郎/編集者・ライター)

福永太郎

福永太郎

フリーランスの編集者・ライター。ライフスタイル系メディアの家電記事の担当を経て独立。現在は複数のWebメディアに寄稿。
福永太郎プロフィール

X:@fukunaga_taro