世界各地でモノの所有権やサービスの利用権を購入、独占するのではなく、多くの人と共有することが増えている。それが「シェアリングエコノミー」だ。これは「複数の人がモノやサービスを共同利用すること」などと定義される。具体的には、「相乗り」などと訳される「ライドシェア」、会員間で自動車を共同利用する「カーシェアリング」、住宅(戸建、集合住宅)を活用して宿泊サービスを提供する「民泊」などがある。
シェアリングエコノミーが社会に広がっているということは、多くの人にとって、新しいモノを買う意義が低下していることを意味する。幅広い利用権を活用し、ライフスタイル、ライフステージなどに合わせて生活の環境を整えればよいという考えが強くなっているようだ。そうした需要を刺激し、消費拡大につなげることが経済の成長には欠かせない。
外国人旅行者の増加などによって、国内でも民泊を中心にシェアリングエコノミーの裾野は拡大している。そうした需要を取り込む企業の活動を支えることは、地方社会の活性化にも重要な役割を果たすだろう。反対に、そうした取り組みができないと、人口減少に伴う消費の落ち込みを抑制することは容易ではない。政府・自治体は民間企業の創意工夫を活かし、需要の創造を目指すべきだ。
民泊事業に進出する大手リゾート企業
外国人旅行者の増加によって、わが国の社会には新しい価値観が持ち込まれるようになってきた。その一例が、民泊だ。問題は、わが国では対価をとって宿泊サービスを提供する行為が旅館業法によって規制されてきたことだ。この法律は昭和23年に施行され、一般の住居にて宿泊サービスを提供することを想定していない。規制の隙をつき、中国の企業が国内で不動産を取得し、民泊用に運用することも増えてきた。白タクも同様だ。
昨年、民泊新法(住宅宿泊事業法)が成立した。それは、わが国での民泊を法的に認め、違法と考えられるサービス提供の取り締まりを強化することを目的にしている。2018年6月15日に、民泊新法は施行される予定だ。
民泊新法の成立を受けて、軽井沢に拠点を置く星野リゾートは、民泊事業への参入を検討している。同社が運営する「星のや」などの宿泊施設は、高価格帯のサービスを提供している。一方、民泊を利用する顧客は、バックパッカーなどの低価格志向の人が多い。そのため、マーケティングのセグメンテーションとして、同社と民泊のコンセプトはマッチしないともいえる。