岐阜県の山間部に位置する高山。東京から新幹線と特急を乗り継いで3時間半、名古屋からでも特急で2時間半と、決してアクセスがよいとはいえないこの地に、国内外から多くの観光客が押し寄せている。
近年、日本への外国人観光客の激増はよく話題になるものの(『インバウンド地方創生 真・観光立国へのシナリオ』<山﨑朗・久保隆行/ディスカヴァー・トゥエンティワン>参照)、その話題の中心は、東京、大阪などでの爆買いである。
一方、高山に爆買い目的で来る外国人観光客はいない。しかも、アジアに加えて、欧米からの訪問客も大きな割合を占めている。
確かに、高山は日本の原風景が残る山間の小さな美しい集落であり、陣屋、古い街並み、川沿いの朝市に加え、周囲には合掌造りで有名な世界遺産の白川郷・五箇山、奥飛騨温泉郷など、恵まれた観光資源があることは事実である。
また、もともと高山の人々のなかには「よくぞ山深い、こんな辺鄙なところまで来てくださった」という、「おもてなしDNA」のようなものが強くあり、こうしたことも観光地としての魅力を高めているといえる。
しかし、東京~大阪のゴールデンルートに位置する、箱根や京都のような便利な立地でないにもかかわらず、外国人観光客が急増しているのには、恵まれた観光資源のほかにも、さまざまな要素があるのではないか。
高山を訪れる外国人観光客の実態
昨年、高山には国内外から430万人を超える観光客が来訪し、200万人が宿泊している。このうち、外国人の宿泊者数は36万人であり、全宿泊者の約2割を外国人が占めている。
外国人宿泊者の出身地域に注目すると、全国平均ではアジアが83%を占めるものの、高山では58%にとどまり、欧米を中心に多様な地域から来訪してきていることがわかる。具体的には、欧州19%、北米6%、オセアニア5%、中東2%、中南米1%となっている。国別に落とし込むと、台湾25%、香港13%、タイ10%、中国、アメリカ、オーストラリア6%、スペイン5%、シンガポール、マレーシア、イギリス、フランス4%となっている。
日本の主だった観光地においては、中国や韓国といった特定の国からの外国人観光客が多数を占めている。一方、高山においては多様な地域から観光客が押し寄せており、こうした多様性は以下の通り、高山に大きな恩恵をもたらしている。