インバウンド(訪日外国人客)の取り込みを狙って、旅行業界や流通業界があれこれと策を巡らせるなか、観光業界ではあるデータが話題を呼んでいる。それが、じゃらんリサーチセンター(運営元:リクルートライフスタイル)が発表した「じゃらん宿泊旅行調査2015」だ。
これまで旅行業界では、流行に敏感な女子をいかに取り込むのかがキーポイントとされてきた。旅行代理店は20代をターゲットにしたツアーも多数扱っているが、ここ数年にわたって力を入れてきたのが「女子旅」だ。女子だけで楽しむことを主眼に据えた旅行ツアーは、年を経るごとにシェアを拡大してきた。
さらに30代以降の家族旅行もメインターゲットに据えてきた。旅行代理店としても個人に売るより3~4人の家族に売るほうが効率的に稼げる。家族旅行の際に決定権を持つのは、財布を預かる母親が圧倒的多数。そのため旅行業界は、女性が行きたくなるような旅を提案してきた。
じゃらん調査が衝撃的だったのは、これまで旅行業界がとってきた戦略をすべて覆すような結果が出たからだ。同調査によると、すべての世代で一人旅が拡大傾向にあるという。特に顕著に伸びているのが、これまで旅行業界が無視してきた20代男子である。旅行代理店関係者は語る。
「これまでも20代男子の一人旅需要は決して低くありませんでした。それにもかかわらず、旅行代理店がこの層をターゲットとするコンテンツをつくってこなかった理由は、彼らは旅行代理店を通さず自分ですべて旅の計画を立て、交通機関のチケット手配もホテルの宿泊予約もしていたからです。いくら旅好きの男子が多くても、旅行代理店にとってはお金を落としてくれる“客”ではなかったのです」
もともと一人旅男子は、今になって急に増えたわけではない。実際、04年度のじゃらん調査を見ても、一人旅に出る20代男子の割合は11.0%にも上る。これは20代女子の9.1%と比較しても高く、子供が独り立ちし金銭的にも自由になる50代男性9.7%、女性8.8%よりも高い。
観光業界にとって衝撃的だったのは、なによりも20代男子の一人旅に出る割合が10年間で2.5倍増に拡大している点といえる。最新の調査では、20代男子の一人旅に出る率は27.3%で、どの年代よりも高い割合になっている。また、20代女子13.8%と比較しても大きく上回っている。