中高年ともなれば、誰もが一度や二度は関節痛を感じたことがあるだろう。多くは「加齢」と片付けてしまいがちな関節痛だが、実は見過ごしてはいけない関節痛もある。
手首や指の痛みなどが長く続く場合、リウマチの可能性を疑うことも必要である。実はリウマチを専門に診る、地域に根ざしたクリニックはまだ少なく、初期段階での判断が遅れるケースも少なくない。加齢や運動負荷などが原因の関節痛と、リウマチとの違いなどについて「さとう埼玉リウマチクリニック」院長の佐藤理仁医師に話を聞いた。
リウマチとは
関節リウマチとは、関節に腫れや激しい痛みが生じ、関節が変形し、さらに悪化すれば関節としての機能が失われる病気である。その原因は免疫異常であり、全国で70~80万人のリウマチ患者がいると推定される。特に女性に多い傾向にあり、発症する年齢は30~50代がピークである。初期症状は関節の痛みで、多くの患者が整形外科を受診する。
「リウマチは、骨の周りの関節が炎症を起こしますが、レントゲンには映りません。そうすると整形外科では『骨に異常もないので、痛み止めで様子をみましょう』となるのが常ですが、痛み止めを服用して半年経っても治らず、そうなると患者さん自身も『これはおかしい。リウマチかもしれない』と考え、そこから紹介状を書いてもらうということも少なくありません」(佐藤医師)
リウマチによる炎症が進行すると骨が壊れてしまうため、そこでようやくレントゲンに映る。しかし、そうなってからリウマチの治療を開始するのでは遅いという。
「1~2年診断が遅れると、骨が変形して関節が曲がってしまいますが、そうなると元には戻らないので、初期症状のうちに関節痛なのかリウマチなのかを見極めることが大切です」(同)
最近ではエコー検査を取り入れることで、リウマチを早期に発見できるようになった。関節痛が続く場合は、漫然と痛み止めを飲むのではなく、リウマチを疑うことが必要だろう。
リウマチを疑うべき症状
「患者さん自身がリウマチかどうかを判断するのは難しいとは思いますが、目安になる症状があります。1週間以上の痛みが続く、腫れがある、腫れを押すと凹む感じがあるといった症状です。リウマチの場合は、痛みだけということは珍しく、ぶつけた覚えはないのに腫れているといった場合は、リウマチを疑うってもいいと思います」(同)
また、リウマチというと、手の痛みをイメージしがちだが、必ずしも手の痛みだけではない。
「リウマチは手だけではなく足にも出ます。リウマチの9割の方は、足の指の付け根の関節『MTP関節』に腫れや痛みが出ますが、足の指は痛みに鈍感なので自覚に乏しく、見逃しが多い傾向にあります」(同)
足の指が痛い、足の裏が痛い……、そんな症状が続く方は、ぜひ靴下を脱いで、普段目にすることが少ない足の指が腫れていないか確認してほしい。
「早期の治療により関節機能を保ち、QOL(生活の質)の低下を防ぐことができます」(同)
コロナ禍のリウマチ治療
長引くコロナ禍で、医療機関の受診を控える傾向にもるが、リウマチ治療中であれば、しっかりと受診し、治療を継続してほしいという。
「患者さんに対して1番にお願いするのが、『ちゃんと治療を継続してください』ということなんですが、それは、リウマチは症状が酷くなってしまうと仕事や家事ができなくなってしまうことがあるからです。さらに悪化してからでは、元に戻すことができないので、早い段階で気づいて治療を継続することが健康のためにも経済面にも有益だと思います」(同)
コロナ禍で基礎疾患が重症化リスクになると懸念する患者もいるが、その点も問題ないという。
「これまでの報告では、リウマチはコロナの重症化リスクになるという報告はありません。むしろ、コロナ感染によるサイトカインストームを、リウマチの治療薬アクテムラ(トシリズマブ)やステロイドが改善した可能性が報告されており、リウマチの患者さんに薬の供給が滞ることがないようにしてほしいと思います」(同)
佐藤医師の目標は、リウマチの早期発見から治療継続が容易になるよう、また患者がアクセスしやすいように、2040年までに全国100医院をつくることだという。リウマチ患者のために、佐藤医師のような地域に根差した専門医が増えることを願う。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)