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〔財金レーダー〕円相場、方向感定まらず=米関税注視、日米金融政策は視界不良

2025.03.28 2025.03.31 08:04 経済
時事通信
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 3月の日米金融政策決定会合は波乱なく通過したが、外国為替市場で対ドルの円相場は方向感が定まらない。日銀、米連邦準備制度理事会(FRB)とも政策の現状維持を決定。トランプ米政権による関税政策を背景に経済の不透明感が強まり、両中銀ともリスクを注視する姿勢を強調したため、今後の日米の金融政策が見通しづらくなっていることが一因となっている。

◇日銀の警戒感受け、150円台に下落

 日銀は19日の金融政策決定会合で、政策金利である短期金利の誘導目標を現行の「0.5%程度」に据え置いた。結果は市場の想定通りだったが、声明文では先行きのリスク要因として「各国の通商政策等の動きやその影響」を新たに挙げ、「わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い」と指摘。植田和男総裁は終了後の記者会見で、「特に海外発の不確実性は急速に高まっている」と警戒感をあらわにした。会見中、円相場は2週間ぶりに1ドル=150円台に下落する場面もあった。

 一方、植田総裁は「経済・物価見通しが実現すれば、引き続き政策金利を引き上げる」と利上げ路線の継続を改めて表明。春闘の第1回集計結果については「オントラック(想定通り)の中でもやや強めだった」との見方を示し、米関税政策についても「4月初めにはある程度(詳細な内容が)出てくるかもしれないので、(4月30日、5月1日の)次回決定会合などの中ではある程度消化できるかなと思っている」と言及した。

 このため、市場では「会見全体では、利上げにやや前向きだった」(邦銀)、「5月利上げの可能性も残った」(大手証券)といった受け止めもあり、円売りの一巡後は再び149円台に上昇する場面もあったが、総じて相場の反応は限定的だった。

◇FRBは利下げ急がず

 FRBが同じ19日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利を2会合連続で据え置いた。声明では「経済見通しを巡る不透明感は増した」と明記。「金利の追加調整の程度や時期を検討する際は指標などを注意深く精査する」との方針を示した。パウエルFRB議長は会見で関税政策について「一時的なインフレ要因になる」と分析。利下げを急がず、今後の動向や影響を注視する考えを強調した。

 FRBは、金融引き締め効果のある保有米国債の縮小策について、4月からペースを月250億ドルから50億ドルへ落とすことも決めたため、円相場は20日には一時148円10銭前後まで上昇したが、その後は下落基調に転じ、足元では150円を挟んだレンジ相場になっている。

トランプ関税動向に一喜一憂も…

 日米の金融政策決定会合後の円相場は、「トランプ関税」関連の報道に振り回される展開になっている。米政権が4月2日に発動予定の「相互関税」について、トランプ大統領は21日、「柔軟性がある」などと臨機応変な対応を示唆。23日には一部報道で、米政権が相互関税の対象を絞る可能性があり、輸入自動車の追加関税については当初計画していた4月2日の正式発表を見送る予定だと伝えられた。これらを受け、トランプ関税を巡る警戒感が和らぎ、安全資産とされる円を売ってドルを買う動きが強まり、25日には一時151円近くと、約3週間ぶりの安値水準となった。

 もっとも、トランプ氏は同日、「4月2日は米国解放の日となる」と相互関税発動の意欲を改めて表明。米景況感関連の指標は高関税への不安感から軒並み悪化傾向となっている。米コンファレンス・ボードが25日発表した3月の消費者景気信頼感指数は前月から大幅に低下し、市場予想も下回った。これらを受け、円相場は一時149円50銭台まで上昇するなど、最近は150円付近を上下している。

 トランプ氏は26日には日本車を含むすべての輸入車に25%の追加関税を課すと発表したが、トランプ政権は「朝令暮改が常」(別の邦銀)。4月2日まで、相互関税や個別関税の発動の有無、対象の国・地域や品目、程度などを巡る大統領や要人の発言、報道などが相次ぎ、市場も一喜一憂することが見込まれる。とはいえ、各主要中銀とも様子見姿勢を示す中、「明確な方向感は出にくい」(銀行系証券)との見方は多い。(経済部兼金融市場部・小代田淳一)
(記事提供元=時事通信社)
(2025/03/27-14:05)

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