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汐留、ゴーストタウン化が話題…テナント半数が空き、企業が続々と他へ移転

文=福永太郎/編集者・ライター、協力=牧野知弘/オラガ総研代表
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東京・汐留エリア(「gettyimages」より)

 日本有数のビジネス街として発展を遂げた、東京・汐留。3駅9路線が利用できる抜群のアクセスを誇り、名だたる大企業の本社機能が集結。「カレッタ汐留」はさまざまな飲食店や四季劇場などの文化施設で構成され、話題の観光スポットとしても人気を博した。しかし、最近では汐留のゴーストタウン化が危惧されている。今年9月には、汐留に本社機能を置く富士通が移転を発表。電通は本社ビルを売却した。人通りは目に見えるほど減少し、カレッタ汐留のテナントの約半数が空きとなり、SNS上では「枯れた汐留」と揶揄する声も見られる。なぜ汐留は衰退したといわれるようになったのか。そこで今回は、汐留エリアが人気エリアになった経緯や衰退の理由、そして今後の展望について、不動産事業プロデューサーでオラガ総研代表の牧野知弘氏に話を聞いた。

貨物ターミナルの跡地が、ビジネスの拠点に

 もともと、汐留は国内の物流を支える貨物専用の駅だった。トラック輸送の発展によりシェアが低下した影響などを受け、1986年に旧汐留駅は廃止。その後、31haに及ぶ広大な跡地は11の街区に分割され、「汐留シオサイト」として再開発が進められた。

 2002年には、地上48階建ての商業施設「カレッタ汐留」が開業。約60店舗の飲食店やショップで構成され、劇団四季の専用劇場「電通四季劇場[海]」や日本初の広告ミュージアムもあり、東京の新名所として話題を呼んだ。超高層マンション「東京ツインパークス」や高級ホテル「コンラッド東京」も進出し、汐留は食・住・遊の巨大なエリアとして開発が進んだ。特にビジネスエリアとしての発展が目覚ましく、2003年に超高層オフィスビル「汐留シティセンター」が竣工。各街区には、電通、富士通、日本テレビ、日本通運などの名だたる大企業の本社機能が次々に移転した。

「2002年に都営地下鉄大江戸線、ゆりかもめの東京臨海新交通臨海線に汐留駅が開業しました。また、新橋駅も近く、羽田空港へのアクセスも良好です。整備された交通機関は、ビジネスエリアとしての価値が高く評価されていました。そんな汐留エリアで再開発を進める最中、2000年に容積率規制緩和により、それまでは認められていなかった高層ビルの建設許可が下りる。当時の開発業者からすれば、広大な更地に最新鋭の高層ビルが並び、そこに最先端の企業が集まり、大規模なビジネスエリアが形成されることは容易に想像できました」(牧野氏)

 巨大なビジネス街になるという期待感は、ビジネスチャンスを求めた企業を呼び寄せ、汐留のビジネスエリアとしての成長を後押ししたわけだ。

コロナよりも深刻な交通の利便性

 しかし、なぜ汐留のゴーストタウン化が囁かれることになったのか。

「当然、新型コロナウイルスの影響もあるでしょう。汐留は、最先端企業の本社機能が集結したことで発展を遂げましたが、そういう企業ほど働き方改革に前向き。コロナ禍が落ち着いた後もテレワークを推進し、電通では最近の出社率は約30%程度だと聞いていて、最近では空いた部分に関係子会社を集める事態になっています」(同)

 ただし、衰退の要因は、コロナよりも街づくりの設計の問題のほうが大きいという。

「これは開発当初から指摘されていた問題なのですが、汐留エリア内には交通利便性に大きな欠点があります。地図で俯瞰するとよくわかりますが、汐留は首都高速道路と線路に挟まれたエリア。新橋側から汐留側に進むと、浜離宮に突き当たり、通り抜けることができないため、人の流れが生まれません。

 また、各街区の間には広い通りがあり、街区をまたぐ際に渡る必要がありますが、これがしんどい。街区の間は歩道やデッキでつながっているだけで、目に入る風景はビルばかりで無味乾燥なもの。大江戸線の地下通路が深く、汐留駅から街区に出るまでの道のりが長いことも相まって、地図上ではそうでもないのですが、目的地に着くまで、体感として非常に長く感じる。汐留エリアで働いていたときには、交通利便性に関する不満の声を多く聞き及んでいました。ここ10年間は、汐留よりも利便性の高いエリアで、次々と超高層ビルが建設されています。そのため、汐留にオフィスを構える利点が減少し、本社機能の移転が相次いでいるのでしょう。これはいわば、2000年初頭頃の汐留に対する期待値と現実が乖離した結果だともいえますね」(同)

 汐留にオフィスを構えてみたものの、実際に生活してみて、不便な点に気づいていったというわけか。また、街の設計の問題は波及し、衰退を加速させる要因となっているという。

「街全体を回遊するような設計になっていないため、街区としての賑わいが創出できないのも問題です。各街区はデッキでつながっていますが、大企業の本社ビルやテナントビルが並んでいるだけで、街区を移動する動機がありませんし、人の流れも生まれません。街区全体が殺風景な印象で、往来して楽しめるような環境が整っていないのです。また、夜に飲みに行く際は、会社から少し離れたエリアに行きたいもの。近くには雑多なお店が集まる新橋の飲み屋街がありますので、カレッタ汐留を選ぶ人も限られます」(同)

 立派な建物を個別に建設した結果、街全体のシナジーが生まれなかったわけだ。

再生の鍵は、街区全体の連携強化

 では、今後の汐留の状況はどうなるのか。

「現在、JR・高輪ゲートウェイ駅周辺の開発が進んでおり、大規模なオフィス群や商業施設ができる予定です。2025年頃に順次開業予定の施設で、駅直結のオフィスも備えており、汐留よりもアクセスが良好。汐留からテナントが移転する可能性があり、今後はより厳しい状況を強いられそうです」(同)

 それでは、汐留が活気を取り戻すにはどうすればよいのだろう。

「とはいえ、各施設や建物を個別に見れば魅力的です。街区全体に有機的なつながりをつくれば、人々が往来するようになり、賑わいを取り戻す可能性はあるでしょう。そう考えると、汐留の街区全体の会員になることで、企業同士の施設を相互利用できるようにするなど、連携を強化する動きをしていくことが、活気を取り戻すことにつながるのではないでしょうか」(同)

 現在、汐留では新たな魅力を創出する動きも進んでいる。今年8月、「カレッタ汐留」にオープンした「汐留横丁」には、約390平方メートル(8月時点)の広大な空間に、ネオ居酒屋やワイン角打ち、経営者のみが入店できる会員制のバーなどのユニークな店舗が出店。店舗のメニューを横断的にセルフオーダーできる画期的なシステムも採用し、おしゃれなフードコートとして話題を呼びそうだ。確かに、汐留は衰退の兆候が見て取れるが、活気を取り戻すための取り組みを続けている。今後、汐留がどういう変遷を辿るのか、注視していきたい。

(文=福永太郎/編集者・ライター、協力=牧野知弘/オラガ総研代表)

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

オラガ総研代表取締役。金融・経営コンサルティング、不動産運用から証券化まで、幅広いキャリアを持つ。 また、三井ガーデンホテルにおいてホテルの企画・運営にも関わり、経営改善、リノベーション事業、コスト削減等を実践。ホテル事業を不動産運用の一環と位置付け、「不動産の中で最も運用の難しい事業のひとつ」であるホテル事業を、その根本から見直し、複眼的視点でクライアントの悩みに応える。
オラガ総研株式会社

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