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中学受験の最新動向と変化…中国人受験生が増加の経済的背景、受験目的の移住も

2025.03.27 2025.03.27 17:12 経済
「Unsplash」より
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 首都圏の中学受験ブームは2025年も高い水準で続いている。首都圏模試センターによると、首都圏の私立・国立中学受験者数は過去3番目に多い5万2300人と推計され、受験率も18.10%と過去2番目の高さとなった。一方で、ここにきて話題になっているのが、中国人受験生の増加だ。日本に永住している家庭だけでなく、日本で中学受験をするために移住した家庭が増えているとみられる。中学受験の現状について、首都圏模試センター取締役教育研究所長の北一成氏に聞いた。

中学受験で移住による中国人受験生が増加

 首都圏模試センターは2025年の私立・国立中学受験者数の推計を2月20日に発表した。受験者数は5万2300人で、前年より100人減少したものの、過去40年で3番目に多い受験者数だった。また、受験率は18.10%で、過去2番目の高さ。過去最高だった前年の18.12%よりわずか0.02ポイントの低下にとどまった。

 中学受験ブームが続く中、2025年入試では男子の御三家と言われる最難関の麻布、開成、武蔵がいずれも前年よりも志願者を減らした。その一方で、神奈川県内の慶應義塾普通部と聖光学院が志願者数を伸ばしている。

 2025年入試では、各学校の志願者数以外にも話題になっていることがある。それは、首都圏の中学受験で中国人の受験生が増えているとみられることだ。長年中学受験に関わり、多数の中高一貫校を取材している北氏が次のように説明する。

「今年の中学受験が終わった後、大手塾の関係者の間では中国人受験生が増えたことが話題になっています。都内の中高一貫の学校からも、ここ数年中国人の割合が増えていると聞いています。正確な数字があるわけではないのですが、本格的に調べると、驚くような結果が出てくるのではないでしょうか」

 中学受験に臨む中国人家庭は、従来から一定数存在した。開業している医師や国際弁護士など、資格が必要な職業に就いて永住している家庭が中心だ。北氏によれば、ミッション系の学校をはじめ、多くの私立中高一貫校では、外国人の生徒を差別することなく積極的に受け入れてきた学校もあり、その中で中国人が一定の割合を占めていたという。ただ、最近中国人の受験生が増えているのは、これまでとは違う理由だと北氏は指摘する。

「日本に永住している家庭に加えて、日本にわざわざ移住して子どもに中学受験をさせている家庭が増えていることが考えられます。都内で個別指導をしている学習塾では、中国人受験生が約4分の1を占めているケースがあります。北区や江戸川区など、中国人のコミュニティがある地域でその傾向は強いようです。

 中国では不動産バブルなどによって、新たに富裕層になった家庭が少なくありません。そういった家庭の中には、北京大学など受験戦争が熾烈な国内の一流大学への進学は難しくても、日本の中高一貫校で勉強すれば『東京大学くらいは入れるだろう』と考えて日本に来た人たちがいると聞いています」

日本の中高一貫校は割安で指導も良質

 一般的に富裕層であれば、インターナショナルスクールに通って、アメリカやイギリスなどの大学を目指す方法もある。しかし、インターナショナルスクールは学費も高い。中国人の富裕層にとっては、日本の中高一貫校は割安と感じるのだという。

「インターナショナルスクールに比べれば、日本の中高一貫校の学費は年間で3分の1程度です。学校の指導は良質で、国民性は親切で、治安もいい。中国のトップ層が国内や欧米の一流大学進学を目指すのに対して、経済的にも学力的にも準トップ層の子どもたちが、日本での進学を目指してきている可能性があります」(北氏)

 一方で、学校側でも2025年の中学入試で変化が表れている。それは、英語入試を志願した受験生が大幅に増えたことだ。

 2025年入試では首都圏の中高一貫校のうち、140校が英語入試を実施した。実施校は昨年よりも2校減った一方で、受験者数は前年の3298人から365人増えて3663人だった。前々年の受験者数は2560人だったことから、わずか2年で1100人も増加した。英語入試を実施する学校は2015年頃から増えていて、受験者数は過去最も多い水準になっている。

 割合まではわからないものの、英語入試には外国籍の受験生がある程度含まれているとみられ、増加している中国人受験生の受け皿になっている可能性もある。北氏は今後について次のように分析している。

「正確なデータはないものの、移住によって中学受験に臨む中国人家庭が増えていることは、大手塾でも個別指導塾でも感じています。おそらく日本で中学受験をする中国人家庭のコアな層は、物価の高騰や不況などの影響は受けないでしょう。中国人の富裕層は何千万人もいるわけですから、まだまだ日本で中学受験をする家庭が増えてもおかしくないのではないでしょうか」

 首都圏の中学受験ブームが続く中で、中国人受験生の存在が大きくなっているのは間違いなさそうだ。

(文=田中圭太郎/ジャーナリスト)

田中圭太郎/ジャーナリスト

田中圭太郎/ジャーナリスト

ジャーナリスト、ライター。1973年生まれ。大分県出身、東京都在住。97年、早稲田大学第一文学部東洋哲学専修卒。大分放送を経て2016年からフリーランスとして独立。警察不祥事、労働問題、教育、政治、経済、パラリンピック、大相撲など幅広いテーマで執筆。著書に『ルポ 大学崩壊』(ちくま新書・2023年2月9日発売)、『パラリンピックと日本 知られざる60年史』(集英社)。メールアドレスは keitarotanaka3000-news@yahoo co.jp、 HPはジャーナリスト 田中圭太郎のWEBサイト

Twitter:@k_taro_tanaka