最近は外で飲む人が減ったため、電車で酔客を見かけることもほとんどなくなりました。少し前までは、遅い時間帯の電車へ乗り込むとドアが開いた途端に飲酒臭を感じることがよくありました。
お酒を飲んでいる時は、酔っている状態のため自分の口臭は自覚しにくいものです。そのため、知らず知らずに飲酒臭を発していることがあるかもしれません。お互いに気を付けていきたいものです。
お酒を飲むと、肝臓がアルコールを分解してアセトアルデヒドを生成。さらにアセトアルデヒドは酢酸となり代謝されて二酸化炭素と水になります。アセトアルデヒドは、肝臓で分解する力が追い付かなくなると体の中にたまり二日酔いの原因になりますが、息や皮膚の表面からも発散され飲酒臭の要因にもなります。エタノールもわずかですが、そのまま分解されずに、尿や息、汗として体外へ排出されるので飲酒臭をつくります。
飲酒臭は、歯周病、口腔内の常在菌など、ほかにも臭気を強めるものがあるかもしれませんが、アセトアルデヒドとエタノールの占める割合が高いでしょう。
酢酸菌の働き
実は、簡単にお酒を飲んだ時の飲酒臭を防ぐ方法があります。キユーピー株式会社の研究開発本部がパーソナルスペース(他人が自分に近づくことを許せる限界範囲)まで飲酒臭を感じさせない画期的な考察を、「日本醸造協会誌」(第115巻第2号)に発表しています。
健康な成人男性を対象とし、酢酸菌粉末またはデキストリン粉末(プラセボ:見た目や味は薬と同じで薬効成分を含まないものを示す言葉で、偽薬とも呼ばれます)を含むカプセルを、アルコール当量として0.5g/kg 体重のアルコール飲料を同時に摂取させ、飲酒から0、30、60,120、180分後に呼気および血中のアルコール濃度を測定。その結果、呼気中のアルコール濃度は、酢酸菌粉末のカプセルを飲酒とともに摂取したほうが低い結果になりました。
さらに、飲酒臭のアルコール臭がどの程度まで「臭う」のかを検討した結果においても、酢酸菌を摂取した場合、飲酒臭を感じる距離は約0.5m、酢酸菌を摂取しない場合、約1mから飲酒臭が感知されることが判明しました。0.5mは人のパーソナルスペースに匹敵する距離であり、飲酒時に酢酸菌を摂取することで、飲酒臭を相手に感知されずにコミュニケーションができるのではと考察しています。
酢酸菌は、その表面にアルコールを分解するのに必要な2つの酵素、アルコール脱水素酵素、アルデヒド脱水素酵素を持ち合わせています。酢酸菌は、ろ過されていない食酢、ナタデココ、はちみつ、フルーツの皮などに含まれています。
しかしわずかな量のため、キユーピーは同社研究開発本部の奥山洋平氏が開発した酢酸菌酵素を配合したサプリ「よいとき」の摂取を勧めています。2粒に酢酸菌1億個分60mg相当の酢酸菌酵素が濃縮されています。このサプリを飲むと、胃の中で酢酸菌酵素がアルコールを分解、肝臓の負担が軽くなる効果が期待できるとのことです。
ただし、お酒が弱い方が、これを利用すればたくさん飲めるかというと、そういう話ではないようですのでご注意ください。個人的にも、気になるサプリです。飲酒臭が気になる方、在宅勤務で飲酒量が増えてきた方は、試してみていはいかがでしょうか。
(文=森由香子/管理栄養士)