チョコレートに含まれるカカオポリフェノールは、体を老化させる活性酸素を抑える働きがあることが知られ、生活習慣病に有効であるといわれています。
実際に、カカオポリフェノールはコレステロール値の改善、血圧低下、血管内皮機能の改善、心疾患リスクの低減、インスリン抵抗性の改善など、多くの健康効果が確認されています。
一方、日本人では優位なデータは長らく確認されていませんでした。しかし2014年、愛知県蒲郡市・愛知学院大学・株式会社 明治の産官学の共同で、日本人を対象としたチョコレートを用いた初の大規模調査を行ったところ、血圧低下、HDL(善玉)コレステロール値上昇などの効果に加え、BDNF(脳由来神経栄養因子)の上昇や、炎症指標と酸化ストレス指標の低下といった効果が新たに確認されました。
このような結果から、さまざまなメディアで「チョコレートは健康によい」と報じられています。
しかし、気をつけなければならないのは、すべてのチョコレートが健康によいとはいえないという実態があることです。
チョコレートは、主にカカオと砂糖からつくられますが、カカオは非常に高価なため、板チョコ1枚を100円前後で販売するのは困難です。つまり、安いチョコレートは、カカオの代わりに別の原料を使っているのです。
実際に、コンビニエンスストアで売られているチョコレートの原材料を確認してみましょう。
商品A:植物性油脂、砂糖、低脂肪ココアバター、ホエイパウダー(乳製品)、ココアバター、レシチン(大豆由来)
商品B:砂糖、カカオマス、全粉乳、ココアバター、植物油脂、乳化剤(大豆由来)、香料
A、Bいずれにも、「植物性油脂」が使われています。原材料欄には含有量の多い順に表記されるため、Aでは植物性油脂がもっとも多く使われていることになります。
ブラックチョコなどの苦味が強い商品を除いて、一般的なチョコレートは砂糖の含有量は30~40%程度です。したがって、それよりも前に植物性油脂が表記されている場合、40%を超えていると考えられます。つまり、商品Aは植物性油脂と砂糖だけで7割を超えているのです。
油と砂糖の塊を食べて健康に良いはずはありません。毎日食べ続ければ、肌荒れや内臓疾患、免疫力の低下を招く恐れがあります。
健康効果はなく、かえって病気を招く恐れのある商品も
また、カカオは融点が摂氏30~35度と低いため、特に夏場は品質保持が大変です。ところが、安いチョコレートは常温でも溶けないように植物性油脂を混ぜることで品質を安定させているのです。
そして、カカオ(カカオバター)の代わりに植物油脂を使うということは、舌触りの滑らかさや香りが足りなくなるため、乳化剤や香料といった添加物を加えなければならなくなります。
乳化剤、香料は、一般的に複数の成分を混ぜ合わせていますが、法律上は一括表示が認められているため、詳細な成分は表記されません。複数のメーカーに問い合わせてみましたが、いずれも「企業秘密」として回答を得られませんでした。
食品添加物のすべてを否定するわけではありませんが、一つひとつの安全性が確認されていても、添加物は複数の成分が合わさることで想定外の危険が生じることもあるため、何が入っているかわからない食品は極力避けることが賢明です。
さらに、植物性油脂はアレルギーや糖尿病を招く恐れがあります。また、植物性油脂は「狂った脂肪」「悪魔の油」といわれるトランス脂肪酸を含んでいます。トランス脂肪酸は、糖尿病やがん、うつ病、認知症といった病気を招く危険が指摘され、米国では使用が禁止されました。
チョコレートは、食べると幸せな気分をもたらし、また中毒性もあるため、つい多量に食べてしまいがちです。しかし、十分に商品を選ばなければ、健康効果がまったくないばかりか、さまざまな害悪をもたらす危険すらあります。
チョコレートを買う際には、植物性油脂が入っておらず、カカオ含有量の多いものを選び、少しだけ食べるようにしましょう。
(文=豊田美里/管理栄養士、フードコーディネーター)