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京都から苫小牧に転勤命令で落胆→移住したら「快適すぎて笑う」は本当?

取材・文=文月/A4studio、協力=ふるさと回帰支援センター
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インバウンド向けSNS「クールジャパンビデオ」の苫小牧市のアカウントより

 少し前にネット上に投稿された「京都から北海道苫小牧市に移住したら大満足だった」という記事が一部で話題となっていた。投稿主は転勤を言い渡された当初は「ぼくの人生もここまでだね」と落胆したものの、住み始めるうちにいくつものメリットに気づき始めたという。具体的には、

・梅雨がない
・雪が少なく、さらさらとした雪質でもあるので雪かきが楽
・平均年齢が低くて若め
・道が広く歩行者や自転車も少なく、車幅が広い自動車でも運転しやすい
・人口17万人都市なので、買い物、外食に困らない
・札幌市内まで1時間でアクセス可能。新千歳空港まで20分
・港からフェリーも出航しているので、日本各地に車を乗せて移動可能
・夏の平均気温が低く、涼しい

といったメリットを指摘。「真面目に理想都市すぎて笑うしかない」「夏があまりにも快適すぎて変な笑い出てくる」「普通にこの街最高すぎて笑うしかない」などと綴り、苫小牧ライフに満足している模様。

 コロナ禍で一躍ブームになった地方移住。テレワークが進んだことにより、都市部の喧噪を離れ、自然豊かな地方へと移住してスローライフを送りたい――そう夢見る人が多くなった。ただ、いきなり縁がなかった土地に移り住むことに不安もあるだろう。実際にもともと住んでいた地域と移住先とでは、気候はもちろん、人間関係やショッピング事情、交通の便も異なる場合が大半に違いない。そういった心配は尽きないが、もちろん地方移住、もしくは地方に引っ越して大正解だったと語る移住経験者が多いのも事実だ。

京都市(京都府)と苫小牧市(北海道)の気候や特徴の違い

 ここで京都市と苫小牧市の気候・特徴の違いについて簡単におさらいしよう。京都市は年平均気温が17.4℃(2023年、気象庁調べ)となっているものの、地形が盆地であることから夏は蒸し暑い日が続く。一方で三方を山に囲まれている都合上、冬の冷え込みも激しい。また降水量も多く、梅雨の時期には雨の日が続くことも。人口は約144万人、かつ観光地として栄えていることから歴史的建造物とともに商業施設も多く建ち並んでおり、バス・地下鉄といった公共交通も発展。しかし近年ではオーバーツーリズムが深刻化しており、特にバスが混雑気味だという。

 一方の苫小牧市は、年平均気温が9.5℃ほどと低めであり、基本的に夏は涼しい。冬はそれなりに冷え込むものの、降雪量が少ないので、北海道の他の地域と比べると過ごしやすい面があるかもしれない。人口は約16.6万人であり、製紙・石油・自動車部品製造産業が盛んな工業都市である。港もあり、フェリーで日本全国の港へと旅することも可能。ただし、バス・鉄道などの公共交通は京都ほどは充実しておらず、地域住民の移動はもっぱらマイカーがメインとなる。

 ちなみに筆者は北海道出身で幼少期から高校卒業までを札幌市で過ごした人間のため、その経験に基づき少し補足しておこう。道民の苫小牧に対するイメージは、ほどよく田舎暮らしやレジャーを楽しみながら、たまのお出かけで札幌まで通えるため、全般的に“ほどよい”というものだ。地方感を楽しみつつ、同時に都市ならではの利便性を享受できるよい塩梅の自治体だといえる。札幌市、旭川市、函館市に続く北海道4位の人口を誇る地域でもあるし、生活していくうえでは特に不自由なく過ごせるだろう。

 だがあくまで道民視点の見解であるため、本州出身者がどのような印象を抱くかはわからない。そこでここからは、地方移住を支援する、有楽町にある認定NPO法人「ふるさと回帰支援センター」の北海道担当相談員の方に、苫小牧市の住みやすさや地方移住する際の注意点について聞いていきたい。

涼しくて降雪量が少ない、港・空港で全国に移動しやすい

 相談員の方いわく、「投稿主の主張は概ね実情に沿っている」とのこと。では苫小牧に移住して得られるメリットについて教えてもらおう。

「まず気候が穏やかで夏も冬も快適に過ごしやすいことでしょうか。北海道は寒冷地のイメージが強いですが、札幌や旭川などの都市は夏に暑い日が続くことも多く、意外と暑さに苦しむことも珍しくありません。一方、苫小牧は道内でも涼しい地域に該当し、避暑地として有名な軽井沢と似た気候となっています。

 また降雪量が少ないことも有名ですが、雪質にも注目してもらいたいです。苫小牧の雪は、パウダースノーと呼ばれる軽い雪が多く、除雪がしやすい。そのため、本州の湿った重い雪を知っている人からすると、冬の間の手間はそれほどかからないかと思われます」

 先述したとおり京都は高温多湿であるため、苫小牧の涼しい気候が心地よいと感じる人は多いかもしれない。冬はやはり北海道なので、それなりに寒さと降雪を覚悟しなければいけないが、除雪などの手間が道内でもマシな事情だということを踏まえると、北海道の居住地域としては過ごしやすいほうだと評価できよう。

 そして買い物やレジャーへのアクセスも良好なのが、苫小牧市の大きなメリットだという。

「苫小牧は道内のなかで4番目の人口規模を誇る自治体ですので、買い物できる場所もしっかりとあります。北海道というと、札幌や旭川などの都市以外は、田舎だと認識している人も多いでしょうが、苫小牧は日常的に生活していく分には、あまり困らない街といえるのです。そして、電車を使えば苫小牧駅から札幌駅まで1時間ほど、新千歳空港駅まで30分ほどであり、市の南部には苫小牧港もあることから札幌近郊はもちろん、全国を訪れやすい場所であることも特徴。遊びたい、ショッピングしたいというときでも札幌に向かいやすいですし、飛行機で旅行にも行けます。また自動車を所持していれば、温泉がある洞爺湖やスキー場のあるニセコまで2時間ほどで行けますし、何ならフェリーに乗せて到着先で車に乗りながら観光もできるでしょう」(同)

マイカー移動は必須…働き口にギャップを感じるケースも

 適度な地方都市感を味わいつつ、遊びや買い物もしやすい苫小牧は、北海道をコスパよく楽しみたい人はもちろん、お出かけを頻繁にする人にとっては、かなりおすすめできる街だといえそうだ。

 とはいえ、苫小牧に住むにあたっての注意点もある。

「前提として、自動車の所有はほぼ必須かと思われます。苫小牧に限らず、北海道は車社会でして、スーパーマーケットや市役所までも基本的に自動車に乗って向かうのが一般的。首都圏などと比べるとバスや鉄道も不便になってしまうので、公共交通機関に過度な期待はできません。自動車に縁のない生活を送ってきた人からするとハードルは高めに映るでしょう」(同)

 たしかに北海道に移住して思う存分レジャーやグルメを楽しみたいとなると、マイカーは必要不可欠。温泉やスキー場など北海道ならではの観光スポットはもちろん、飲食店もロードサイドに出店しているケースが大半なので、移住前に自動車の購入や免許の取得は検討しておきたいところだ。

 また苫小牧に移住して現地で就職する場合には、あらかじめ下調べを徹底すべきだという。

「苫小牧は、道内屈指の工業都市ですので、自動車関連の産業や紙・パルプ系の企業が多く、求人もあります。そのほか、バスのドライバーや倉庫の管理会社などの職がありますが、一般的な事務職や他業界で働いていた人からすれば、ギャップを感じてしまうかもしれません。現在お勤めの企業にそのまま在籍し、テレワークで働ける人であれば問題ないでしょうが、現地で働く場合、ミスマッチが起こらぬようどんな求人があるかは目を通しておくべき。苫小牧市が運営する『とまジョブ』という仕事マッチングサイトがありますので、検討する際に参考にしてみてください」(同)

移住検討先には夏と冬に行くべき、スーパー事情も重要

 移住してみたいと思った地域が、実は想像とまったく違っていたというケースは珍しくない。後悔しない地方移住のためにも、できれば数回は移住検討先に足を運ぶべきだろう。

「昨今、地方移住に関する相談数は右肩上がりでして、コロナ禍の影響が薄まってきた現在でも依然として地方移住へのニーズは高いです。ですが、やはり移住検討先の事情をあまりよく知らないまま移住を決定してしまう人は少なくありません。そういう人は、『残念ながら移住に失敗してしまった』と感じることもあるようです。

 妥協点と不満点を見つけつつ、楽しく暮らすことができている人は、移住先でも楽しく暮らすことができている印象です。自分にとって、何を優先すべきか、知識と自分の目でしっかりと見極める必要があるでしょう」(同)

 では移住検討先で見ておくべき具体的なポイントは何か。

「移住検討先には、最低でも夏と冬にそれぞれ一回ずつぐらいは足を運んで、様子を窺うべきだとアドバイスしています。自分に合う気候かどうか、見極めないと住み始めてから後悔する可能性が高いからです。あとはスーパーの立地や物価の目安を調べておくこともおすすめします。地方によっては、スーパーが限られた場所にしかなかったり、営業時間が極端に短かったりするケースが少なくありません。加えて、スーパーの数が少ないと、競合店の不在や運送費などが重なり、かなり高値の商品が並ぶことも考えられます。ネットショッピングが発達した現在とはいえ、すぐに買い物できる場所があるのは大切ですので、生活インフラの確保だけは徹底しておくほうがよいでしょう」(同)

(取材・文=文月/A4studio、協力=ふるさと回帰支援センター)

認定NPO法人ふるさと回帰支援センター

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2022年11月で20周年を迎えた、都市と地方の交流・移住・定住を支える非営利のNPO団体です。全国各地域の自治体と連携し、地方暮らしに希望を見出し新しい生き方を模索する人たちを応援しています。東京・有楽町の東京交通会館にある「ふるさと回帰支援センター」には、各地域の相談員が常駐し、さまざまな移住相談(対面・電話・オンライン)に対応しています。移住者を地方に送り出すことで、地方再生と地域活性化を目指しています。
認定NPO法人ふるさと回帰支援センター

Twitter:@furusatokaiki

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