原因不明の体調不良、銀歯や刺身が原因かも…重金属蓄積で免疫低下、糖尿病や認知症の恐れも
我々は通常通りの生活を送るなかで、知らず知らずのうちに有害な重金属を摂取していることをご存じだろうか。何気ない体の不調は、重金属の毒性によるものかもしれない。また、重金属の蓄積は認知症を招くリスクにもなる。
予防医療の意識が高まる今、蓄積した重金属による健康被害を防ぐため、キレーション治療が注目されている。
キレーション療法とは、体内から有害な重金属や老廃物を取り除く治療のことで、血管内に薬剤を点滴して行う。キレーション治療を行う麹町皮膚科・形成外科クリニック院長、苅部淳医師に話を聞いた。
「キレーション治療は細胞外の重金属を排出することを目的とし、デトックス治療は細胞内の重金属を排出します。細胞の外に蓄積しているキレート剤が届く範囲の重金属は、腎臓を通して尿中に排出されます」
重金属の蓄積は、後に大きな健康被害を引き起こすという。
「重金属の蓄積は血管の障害を引き起こし、高血圧、動脈硬化、心臓疾患、視力障害、肌の衰えなど、加齢に伴う変化すべてに関与します。血管の状態が若ければ、身体の若さを維持できるのです。キレーション治療によって、老化した血管を若返らせ、体に生じてくるさまざまな加齢現象の進行を遅らせることができます」
マグロ、クジラなどの刺身を好んで食べる日本人は、水銀の蓄積量が欧米人に比べて2~6倍も高いといわれている。また、水銀は銀歯(アマルガム)、ワクチンなどからも知らず知らずのうちに体内に取り込まれている。特に妊婦に関してはマグロ類の摂取を控えるべきことは広く知られている。
「自然界に存在する無機水銀は消化管からほとんど吸収されませんが、人間がつくり出したメチル水銀は容易に吸収されます。体内に取り込まれたメチル水銀は、妊婦の胎盤を通じて胎児に移行したり、さらには血液-脳関門をも通過して脳に到達してしまいます。メチル水銀は神経系に作用し、高濃度に暴露するとヒトに神経障害や発達障害を引き起こします。胎児の発育中の脳はメチル水銀に対する感受性が高いため、比較的低濃度の暴露であってもその影響が懸念されています」
水銀だけでなく、アルミニウム、カドミウム、ヒ素、鉛、ニッケル、ベリリウムなどの有害重金属は、食事、水、空気、日用品などから体内に取り込まれ、さまざまな不調を引き起こす。
「水銀に限らず有害重金属により、さまざまな疾患を引き起こします。たとえば、過敏性腸症候群や便秘、リーキーガット、リウマチ、骨粗鬆症、慢性疲労症候群、甲状腺ホルモン異常、副腎疲労、不妊症、自閉症、不眠、認知症、アトピー性皮膚炎、肌荒れ、免疫低下、アレルギー、糖尿病、肥満、やせすぎなど。重金属の解毒とそれぞれの疾患の治療法を併用することで、さまざまな慢性疾患の改善に役立ちます」
原因不明の不調が続く場合は、有害重金属の蓄積を疑ってみることも必要かもしれない。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)