肩こりは国民病
令和元年の国民生活基礎調査では、自覚症状のランキングが発表されています。男性の1位が腰痛、2位が肩こり、3位が鼻水・鼻づまりでした。一方、女性では1位が肩こり、2位が腰痛、3位が手足の関節痛でした。男女とも肩こりを訴える人は多く、この肩こりを制すればほとんどの人が健康で快適な生活が送れるといっても過言ではないでしょう。
首から背中上部にかけて、肩から腕にかけて、これらの筋肉が痛く、重く、なんとなくだるい、張っていると感じる症状すべてを「肩こり」と呼んでいます。「僧帽筋」といって首、肩、背中の3点を結ぶ三角形の形をした筋肉があり、ここが緊張して、押すと痛くなるのが確認されると「肩こり」と診断されることが多いようです。
肩こりの原因
わたしたちヒトは二足歩行をします。首や肩の筋肉のおかげで、重い頭と手先を器用に使うための腕を支えることができるのです。肩には先ほど紹介した「僧帽筋」と腕側にある「三角筋」が表面に大きく張り出しています。インナーマッスルとして首側から肩甲拳筋、棘上筋、棘下筋と続きます。肩甲挙筋は首と肩甲骨を結ぶ筋肉です。棘上筋、棘下筋は肩を回すのに必要です。
筋肉というものは緊張と弛緩を繰り返すことで、しなやかに動くことができます。しかし、同じ姿勢を続けると姿勢を維持するための筋肉たちはずっと緊張を続けます。筋肉というものは緊張を続けると疲れます。試しに腕に力こぶをつくってこぶに力を入れ続けてみてください。10秒もしたら疲れてやめたくなるでしょう。
筋肉が緊張し続けると筋肉で血管が圧迫されて血行が悪くなります。血行が悪くなると栄養が筋肉に行き渡らなくなるので、筋肉が疲れます。筋肉と血液の間で無限ループが生まれます。また、筋肉が緊張し続けると末梢神経が圧迫されて傷ができます。末梢神経の傷は痛いので、筋肉がきゅっと緊張します。筋肉と末梢神経の間で無限ループができます。
デスクワークは姿勢を維持する筋肉たちを緊張させ続けますし、猫背の方は生きているだけで常に筋肉を緊張させ続けます。女性は男性より筋肉量が少ないので、少ない筋肉で同じように体を支える必要があり、肩こりになりやすいです。私は猫背な上、原稿を書くときはデスクワークになるので、こうして原稿を書いていると肩が自分のものではないように痛いです。一日中デスクワークをしている方はこの状況が一日中続くのですね。仕事とはいえ、本当に「お疲れ様」です。
肩こりの原因として病気が隠れている時があるので、たかが肩こりだからと思わず病院へ行くようにしてください。狭心症や心筋梗塞といった心臓の病気です。胸から左肩へ締め付けられるような痛みが走ります。これらの症状が出たらすぐ救急車を呼びます。
更年期障害はイライラしたりのぼせたりするといった症状が有名ですが、肩こりを併発することがあります。ストレス→血流が悪くなる→筋肉に栄養が行き渡らない→筋肉が疲れる、といった具合です。変形性頚椎症といって、首の骨が棘のように変形して刺さるといった症状もあります。肩が痛いから肩こりだと思わずに病院で調べてもらうことが大切です。
肩こりを治す方法
肩こりは筋肉、血行、神経が原因で起こります。これらを同時に強化したり、組み合わせで強化をしたりしていけばいいのです。
・1.お風呂に入る
40度くらいの湯船に肩まで浸かります。肩にしっかりお湯が届くことで血行がよくなります。お風呂に入ることでリラックスしますので、ストレスから始まる肩こりから解放されます。
・2.運動をする
しっかり腕を振ったウオーキングは肩回りの筋肉を動かすことになります。そして、血行がよくなります。また、肩回りを強化する筋トレにより、大きな筋肉で姿勢を維持することができるようになります。整形外科を受診して肩こりと診断され、「肩こり体操」の紙をもらって帰ると、ガッカリしてしまう方がいるかもしれませんが、どうか「肩こり体操」をやってほしいと思っています。体操をやるだけなら「無料」です。しかも、やった分だけよくなります。
・3.ビタミン剤を飲む
「アリナミンEX」に代表される目・肩・腰に効くビタミン剤です。筋肉疲労に効くビタミンB1、筋肉を作る手助けをするビタミンB6、神経を修復するビタミンB12、血行をよくするビタミンEがメインの成分となっています。このアリナミンEXですが、「プラス」「プラスα」「ゴールド」の順にグレードが上がっていきます。
ビタミンEには「合成」「天然型」「天然」の3つがあります。合成<天然型<天然の順に吸収がよくなります。ビタミンB群は水溶性、ビタミンEは脂溶性なので両方を混ぜることはできません。そのため天然のビタミンEはこうした配合剤では不向きです。天然型にすることで、配合剤でも安定して存在できるようになります。「アリナミンEXゴールド」は天然型のビタミンEが配合されているので、より効果が高いです。血行をよくするという目的においては、天然型のビタミンEは有効です。
ビタミンB12は末梢神経を修復する効果があります。これも通常型の「シアノコバラミン」と活性型の「メコバラミン」があります。「ゴールド」には活性型が含まれています。
「ロキソニン」などの痛み止めを使うのは一時的にし、筋肉・血行・神経の3点を考えて対策をしていきましょう。
(文=小谷寿美子/薬剤師)