圧倒的な低価格を強みとするスーパーマーケット「ロピア」の快進撃が止まらない。年間約10店舗のペースで新規出店を続け、2025年度までに北海道・東北から撤退すると発表したイトーヨーカ堂から同エリアの一部店舗を引き継ぐなど、北日本への進出も加速。ロピアを運営するOICグループの24年2月期の売上高は4126億円だが、32年2月期にグループ企業100社、売上高2兆円を達成することを目標としている。そのため、新規出店に加えて積極的なM&Aを行っており、22年には食品スーパーとホームセンターのスーパーバリューを買収している。売り場担当のチーフの年収が最高で1000万円となるケースもあるなど、徹底した競争主義・成果主義で社員のモチベーションを向上させ業績伸長につなげる取り組みに力を入れていることでも知られているが、なぜ今、ロピアが急成長を遂げているのか。そして、ロピアがスーパー業界で大手の一角を占める存在にまで上り詰める可能性はあるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
ロピアの創業は1971年、「肉の宝屋藤沢店」としてスタートし、1994年にスーパーマーケット業態の運営を開始。2011年に株式会社ロピアに組織・社名変更して株式会社ロピア・ホールディングス(HD)を設立。23年にロピアHDをOICグループに社名変更した。グループとしては約30のグループ企業からなり、そのうちの一つであるロピアは国内に99店舗、海外に5店舗が展開されている。
本部は川崎市にあり、もともとは神奈川県など関東を中心に店舗を運営していたが、 2020年に寝屋川島忠ホームズ店をオープンさせ関西に進出。全国で出店エリアを徐々に拡大しており、今月には北海道にも初出店を果たす予定。
ドン・キホーテと似たスタイル
スーパーとしては「西友」や「オーケー」などと同様にEDLP(Everyday Low Price)型の「毎日安売り」がウリの形態だが、経営スタイルや店舗の特徴としては、どのような点があげられるのか。流通アナリストの中井彰人氏はいう。
「一つの店舗内の各売り場を独立した部門として扱い、屋号をつけて責任者を置き、各責任者の裁量のもとで仕入れや売り場づくりを行わせ、部門間で競わせるという点が特徴的です。ディスカウントストア『ドン・キホーテ』と似たスタイルですが、本部で決めたフォーマットを各店舗が画一的に導入することで規模を拡大させていくというチェーンストアの常識とはかけ離れているといえます。イオンやイトーヨーカドーに代表されるマニュアル重視の従来型チェーンストアはすでに国内では飽和状態にあり、同じ戦い方をしても大きな成長は見込みづらいです。そうした既存大手に対抗するために、ある程度のしっかりとしたマニュアルを持ちつつも、そこにプラスアルファで強い個性のある店舗づくりを行うために、個々の従業員のモチベーションを高める仕組みを導入しているのだと思われます。
そして現時点ではこうしたロピアの取り組みは順調に成果を上げています。店舗に行くとわかりますが、売り場が毎日のように大きく変化して常に新鮮さがあり、お客を飽きさせないよう努力しています。各売り場は同じ店舗内、さらには他の店舗の売り場とも競争しており、お互いに良い取り組みは真似し合いつつ切磋琢磨するため、どんどん売り場がブラッシュアップされていきます。その効果は数字にも出ており、スーパー業界では一店舗あたりの年間売上高が20億円ほどあれば合格とみなされるなか、ロピアは40億円ほどとみられます。格安をウリにするなかで、これだけ高い売上高を上げるということは、どれだけ多くの量が売れているのかということを表しています」
新規出店をし続けなければならない
では、ロピアはスーパー業界で大手の一角を占める存在にまで成長する可能性はあると考えられるか。
「今の勢いが続けば業界上位の1社になれると思います。先ほど例に挙げたドン・キホーテを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)の売上高は2兆円ですが、ロピアはまだ4000億円レベルなので伸びしろは大きいです。あえて死角をあげるとすれば、企業の成長力の源となっている個々の従業員の高い競争意識を維持するためには、責任あるポストの数を増やし続ける必要があり、そのために新規出店をし続けなければならないという点です。当面は問題ないとは思われますが、今後、現在の出店ペースを維持できない環境になった場合、成長が止まる懸念があるかもしれません」
(文=Business Journal編集部、協力=中井彰人/流通アナリスト)