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カドカワはソニーGによる買収で「中国企業による買収」を免れる?

文=Business Journal編集部
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KADOKAWAの公式サイトより

 19日、ソニーグループ(G)がKADOKAWAの買収に向けて協議中だと一斉に伝えられた。大手出版社であるKADOKAWAはマンガ、アニメ、ゲーム、映画など豊富なコンテンツを保有しており、ゲーム、アニメ、映画事業を手掛けるソニーGがKADOKAWAに関心を示すのは不思議ではないが、「KADOKAWAはソニーGに買収されなければ中国企業に買収される可能性もあり、今回の取引は日本のコンテンツ産業全体にとってはよいこと」(大手銀行系ファンドマネージャー)という見方もある。買収の効果について検証してみたい。

 KADOKAWAの前身・角川書店は1945年に文芸出版社として創業し、1970年代から角川映画の製作を開始。80年代には「週刊ザテレビジョン」「東京ウォーカー」など雑誌を次々と創刊し、その後はデジタルコンテンツ、漫画、アニメ、ゲームなど幅広い領域で事業を拡大し、総合コンテンツ事業の地位を確立。2014年には「ニコニコ動画」を運営するドワンゴと経営統合したのを契機にインターネット事業を拡大させ、22年にはゲーム子会社フロム・ソフトウェアが発売した「エルデンリング」が世界で累計出荷本数2500万本を超えるヒットとなっている。

 KADOKAWAの24年3月期連結決算は、売上高は2581億900万円(前期比1.0%増)、営業利益は184億5400万円(同28.8%減)、最終利益は113億8400万円(同10.2%減)。

 同社の強みは自社が保有する豊富なコンテンツ・IPだ。同社公式サイトによれば、書籍は12万点以上、映像は2000本以上、紙書籍と電子書籍の新規IP数は年間約5500点、実写作品数は年間19本、アニメ作品数は年間59本に上る。

 一方、ソニーGもゲーム(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)、映画(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)、アニメ(アニプレックス)などコンテンツ事業を幅広く手掛けており、21年にはアニメ配信サービス「クランチロール」を運営する米国企業を約1222億円(当時の為替レート)で買収。今年7月にはソニー・ミュージックエンタテインメントとアニプレックスが、世界的にヒットしているゲーム「パルワールド」の開発会社ポケットペアと共同で、同タイトルのIPやライセンスビジネスを世界で拡大させるジョイントベンチャーを設立すると発表するなど、IPビジネスに力を入れている。

「KADOKAWAは海外事業拡大を経営目標として掲げていますが、独力では限界があります。そこでソニーGと一緒になったほうが大きく成長できると判断したのかもしれません。ソニーはPlayStationをはじめとする海外で普及しているプラットフォームを持ち、コンテンツを世界に届ける基盤を持っているので、それらを使ってKADOKAWAの持つコンテンツやIPをさまざまなかたちで展開できますし、また海外企業とアライアンスをする際にもソニーGの看板があったほうが主導権を持って進めやすいでしょう」(デジタルマーケティング会社プロデューサー)

中国テンセントとの資本提携

 今回の買収協議の背景には中国企業の存在があるのではないかという見方もある。

「KADOKAWAは2021年に中国テンセントと資本提携し、同年時点でテンセントの出資比率は6%超で第3位の株主になりました。当時からテンセントがKADOKAWAを手中に収めたいと考えているという見方はありましたが、テンセントに限らずお金のある海外企業にとって、豊富なIPを抱えるKADOKAWAが魅力的なのは事実でしょう。今年6月には電子コミック配信サービスの『めちゃコミック』が米投資ファンドに買収されることがわかりましたが、日本のコンテンツ企業への海外企業からの注目度は高くなっています。KADOKAWAは売上高2000億円を超える大企業ではありますが、時価総額はテンセントの100分の1レベルであり、法規制の問題はあるもののテンセントが本気で買収しようと考えれば不可能ではないかもしれません。

 また、KADOKAWA同様に豊富なコンテンツの権利を抱える大手出版社の講談社、小学館、集英社は非上場であり、上場企業のKADOKAWAが狙われやすいという面もあるでしょう。ソニーGによる買収協議はまだ初期の段階ということなので、この先どうなるのかは流動的ですが、外資による買収防止策のひとつという捉え方もできます。KADOKAWAとしては仮に買収されるのであれば、外資系企業よりは、何かと話が通じる同じ日本企業のソニーGのほうがよいと判断しているのかもしれません。そして、日本のコンテンツ産業全体にとっても、KADOKAWAを外資に取られるよりは日本にとどまってくれたほうがプラスでしょう」(大手銀行系ファンドマネージャー)

(文=Business Journal編集部)

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