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鈴木貴博「経済を読む“目玉”」第1回

“限界地”シャープ、ソニーのおかげで韓国メーカー大躍進?

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依然苦しい経営が続くソニーのHPより
 数多くの大企業のコンサルティングを手掛ける一方、どんなに複雑で難しいビジネス課題も、メカニズムを分解し単純化して説明できる特殊能力を生かして、「日経トレンディネット」の連載など、幅広いメディアで活動する鈴木貴博氏。そんな鈴木氏が、話題のニュースやトレンドなどの“仕組み”を、わかりやすく解説します。

 日本の家電大手シャープ、パナソニック、ソニーが苦境にある。サムスン、アップルのように大きく儲けるグローバルな競争相手に業績面では歯が立たない。

 会社はなぜ儲かるのか?

 コンサルティングファームに入社した直後に教わったことは、大企業がどれだけ儲かるかは、経済学でいう“限界地”よりもどれだけ優位性で上回ることができるか次第で決まるという法則だ。

 限界地とは経済学の用語で、その業界の中に通常1社、ないしは数社存在する“まったく儲からない”競合相手のことである。限界企業といったほうが一般的かもしれないが、もともとはイギリスの古典派経済学者リカードが農地の価格について提唱した理論のため、このコラムではリカードにならって“地”という表現を用いる。

 限界地の理論は土地の価格だけではなく、企業の利益水準についてもあてはまることがわかっている。

 例えば、アメリカの自動車業界ではクライスラーやGMが限界地に相当するし、国内のビール業界でいえばサッポロビールが限界地である。

 利益がかつかつの状態に陥っている限界地企業の商品価格は、市場原理の中で“これ以上安くては会社が存続できない”レベルで落ち着く。他の企業はその価格を基準とした場合、限界地企業より高い生産性で、ないしはより高いブランド力で商品を供給することができるため、その分だけ儲かる。

 アメリカの自動車業界では、デトロイトを中心に強い労働組合がビッグ3に対して高い交渉力を持っていたため、労働組合に所属しないカリフォルニア州などに工場を持つトヨタら日本車メーカーは、そもそもコスト的に優位にあった。

 そのうえ工場の生産性は日本車メーカーのほうが高くて故障も少ないし、性能もいい。だから日本車はクライスラーの車よりもコストが低いだけではなく、ブランドイメージもよく、価格も若干高く売れる。

●限界地はビジネスを止められない

 そして、限界地としてのクライスラーは、ビジネスを止めることができない。なぜならクライスラーの存在は大量の雇用を生んでいて、かつ銀行団にとっては多額の融資につながっている。ビジネスを止めれば失業が生まれ、銀行も資金が回収できなくなる。クライスラーの経営が傾くたびに、政治問題として国家が救済策を講じるようになる。

 その間、クライスラーが限界地として存在する限り、日本車メーカーは利益を上げることができる。クライスラーよりもどれだけ高く売れ、どれだけ安くつくれるかで日本車メーカーの儲けが決まる。

 経済学では、このように企業の利益は相対的に決まることを示している。

●限界地になってしまった日本メーカーたち

 シャープ、パナソニック、ソニーの現在の問題は、自分たちが限界地になってしまった点にある。