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シリアルアントレプレナー・小川浩「Into The Real vol.13」

アップル、電子書籍参入の真の狙いとは?…Kindle、kobo駆逐なるか

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「Apple Japan HP」より
 現在のソーシャル × モバイル化へと続くWeb2.0時代の到来をいち早く提言、IT業界のみならず、多くのビジネスパーソンの支持を集めているシリアルアントレプレナー・小川浩氏。そんな“ヴィジョナリー”小川氏が、IT、ベンチャー、そしてビジネスの“Real”をお届けする。 

 新年早々に、Appleが日本国内での電子書籍市場に本格的に参入するという記事が、1月1日付日経新聞の一面に掲載された。

 AppleはiBooksという電子書籍リーダーを持ち、米国市場ではAmazonのKindleとのシェア争いをしているものの、日本国内市場はほぼ手つかずの状態が続いていた。今回Appleは、講談社などの大手出版社との提携関係を強め、Amazon、楽天らがしのぎを削る市場での覇権を狙うのだが、その理由は何か?

 僕が思うに、この市場再参入の背景にあるのは、7インチタブレット市場の成長だ。Nexus 7、Kindle Fire HD、GALAXY Tabなどが次々と発売され、活況を示す7インチタブレット市場は、明らかに10インチタブレット(つまりiPadなど)とは用途が異なり、新聞や雑誌、コミックや小説などの活字を中心とした媒体の閲覧を中心としている。つまり、電子書籍リーダーとしての需要が明確になっている。

 メールやLINEなどのコミュニケーションサービスやSNSの利用についていえば、片手で持ち、持った手の指で入力できるスマートフォンのほうが向いている。その点、7インチタブレットは、入力そのものは10インチタブレットやスマートフォンに比べるとやや不都合な大きさだが、電車の中で片手でつり革につかまりながらも、快適に本や新聞を読むという用途に非常に向いている。また、ソファーに寝転びながらの“カウチリーディング”にも最適だ。

●タブレット市場全体の変化を無視できず

 Appleは7インチタブレット市場が急速に伸び、タブレット市場全体のシェアを食い始めていることを無視できず、ジョブズの遺志に背いて(7.9インチだからNexus 7などとは違う代物とでもいうような言い訳は用意しつつ)、iPad miniを市場投入し、先行するライバル機種よりもかなり高いプライシングをしつつも、緒戦では相当の成功を収めた。

 兄貴分のiPadがネットブックを駆逐し、ノートパソコンの代用品としての地位も獲得しつつある中で、iPad miniは電子書籍リーダー専用機を駆逐して、市場を奪取する役目を負っている。

 とはいえ、日本国内において、iPad miniで電子書籍を読むには、自社のiBooksにはコンテンツがなく、Kindle for iPadを使って、Amazon経由でコンテンツを購入するというスタイルが一般化しつつある。となると、iPadとKindle Fire HDの併用を考えるユーザーも多くなってくる。そうなれば、いったんは侵攻に成功したと思われた7インチタブレット市場からiPad miniは追い出されてしまう恐れも十分にある。

●7インチタブレットにおけるキラーコンテンツ

 スマートフォンのキラーコンテンツは、ゲームやLINEなどのメッセージングシステム、またはソーシャルネットワーク型のアプリだが、iPadにおけるキラーコンテンツはWeb閲覧や画像、動画の視聴だ。そして、7インチタブレットにおけるキラーコンテンツは、電子書籍コンテンツなのだ。そのコンテンツがないということは致命傷になりかねない。そうAppleは判断したのだろう。

 iPhoneやiPadまでは、電子書籍のニーズはさほど高くなかったが、それでも好事家の間では新聞は紙からWebに移り、書籍は一部の好事家が自炊(自分で書籍をスキャンして電子化すること)するなど、徐々に一般化が進んだ。しかしiPhoneでは小さすぎ、iPadでは(片手で持つには)大きすぎた。そのニーズにはまったのが7インチタブレットというわけだ。