プロフェッショナルの教科書』
著:俣野成敏/PHP研究所
4月の入社を控えている新入社員の皆さんは、期待と不安でいっぱいな毎日を過ごしていることだろう。イメージトレーニングなどで準備しておくのは結構だが、自分は出来る奴だと思い込んでしまうと、いざ仕事を始めたときに、すぐに挫折を経験するかも知れない。
なぜなら、職場では、学校で教えてくれないようなことばかりが要求され、時には理不尽な人間関係に巻き込まれることもある。それまで小さかった社会が、急に大きくなる。通勤電車に乗っている会社員たちがどうしてあんなに疲れているのか、理解できるようになるのだ。
そんな中で、プロとして業務に従事し、成長していかなければいけない。上手くいかないときは自分以外の何かのせいにしたくなるだろうが、責任転嫁をせずに自分の至らなさを認めなければ、仕事のプロフェッショナルへ成長することはできないだろう。
では、プロフェッショナルになるために、入社してから一体何を身につけるべきなのだろうか。『入社3年目までに知っておきたい プロフェッショナルの教科書』(俣野成敏/著、PHP研究所/刊)からご紹介しよう。
当たり前のレベルを上げろ
自社やお店に来たお客様が帰るとき、見送りをするのは「当たり前」のことだ。しかし、多くの人はお客様が外に出て二、三歩したらすぐにお店や社屋内に戻ってしまうだろう。しかし、もしかしたら、少し離れたところでお客様が振り返るかも知れない。そんなときに、まだ見送ってくれていたなら、嬉しくなるのではないか。
「当たり前」のことをこなすのは「当たり前」。だからこそ、プロとして、その上の「当たり前」を目指す必要がある。普段から一つひとつの業務の「当たり前」のレベルを少し上げる、その積み重ねの結果が大きな差となると俣野氏は述べる。
仮説を立てる癖づけをしろ
上司から指示を受けたとき、その仕事がどのように全体業務に関わるのか、その目的は何か教えてもらえることは少ない。特に大企業にいると、それが見えづらいので「自分のやっている仕事は本当に意味があるのだろうか」と考えてしまいがちだ。
しかし、そこで自分なりに「これはこういうことかな」と仮説を立ててから上司や先輩に聞くことで、何でも自分で考える癖を身につけることができるようになる。日本のトップ経営コンサルタントである大前研一氏は、電車に乗ると中吊り広告を眺めて、「自分ならその会社をどうコンサルティングするか」を考えるという。普段の生活から仮説立てて考えておくことで、いざ意見を求められたときも何かしらのオリジナルな意見を言うことができるようになるだろう。
指示されたことは何とかこなせ
これも当たり前の話ではあるのだが、実はとても難しいこと。
上司が部下に対して何を求めているかというと、「指示したことを何とかしろ」ということである。もちろん、それは部下ができると見越して命じているのだが、時にはできないこともあるだろう。そんなときは、どんな手を使ってもいいからやりとげなければならない。もちろん犯罪や反社会的行為は論外だが、ビジネスパーソンは学生時代には使えなかったいろいろな武器を使うことができる。「制限時間内には終わらないので、もっと時間が欲しい」とお願いするのも、“参考書や辞書を見ながら答案を書く”こともできる。こうしたウラ技を知らずにオロオロしてしまう若手は多いと俣野さん。指示されたことはこなす、その積み重ねが成長に結びついていくのだ。
30年、40年も同じ会社で働き続ける時代ではなくなった、という言葉を耳にしたことがあるだろう。それは、ステップアップのための転職が一般化する一方で、30代でもリストラの対象となるようになったという意味も含まれている。
事実、俣野氏も時計メーカーに勤務し、30歳にリストラ対象となった。しかし、そこから発起、社内ベンチャー制度を活かして業績を上げ、33歳でグループ約130社の現役最年少役員に、40歳でメーカー本体に戻り史上最年少の上級顧問に就任。2012年6月には独立した。
また、上司がプロフェッショナルになるための心構えとして部下に本書を配布しても良いだろう。
そう甘くはないビジネスマン社会。そこで本当に一歩差をつけるために、新入社員や若手には身につけるべきことがたくさんある。
(文=新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。