両社は昨年3月27日、資本・業務提携で基本合意。鴻海がシャープ株の9.9%を取得し(1株=550円)、約670億円を本日までに支払うことで一旦合意したが、シャープの業績悪化に伴う株価急落や、シャープの最新型液晶パネルに関する鴻海への技術供与などで交渉は難航していた。鴻海は、シャープ株の取得価格が市場価格を上回ると、差額を減損損失として計上しなければならないため、出資に消極的になっていたと見られている。
こうした状況を受け、3月6日、サムスン電子ジャパンがシャープに103億円の出資をすることが発表された。議決権ベースで、約3%の新株式が発行されることになる。シャープは、今回提携したサムスンをはじめとする液晶パネルの安定供給先を確保したうえで、冷蔵庫など白物家電と複写機の販売の拡大を図る計画を立てている。
この前日3月5日には、郭・鴻海会長はシャープ幹部と会談を行う予定で来日までしていたが、サムスンとの提携を耳にした鴻海側は直前になって会談をキャンセル。シャープと鴻海の関係は「かなり悪化していた」(全国紙記者)と見られている。
また、シャープは、サムスンに加え米クアルコム(半導体)に対する第三者割当増資を発表するなど、相次ぎ他社との資本提携を進め、約200億円の資金調達の見通しがたった模様。
しかし、シャープは13年9月に、約2000億円の新株予約権付社債(転換社債=CB)の償還を控えている。「今回の出資見送りは既定路線。シャープの経営は予断を許さない状況が続くことに変わりはない」(金融業界関係者)との見方もある。
(文=編集部)