ついにダイエー消滅する!? イオンのやり手専務がダイエー社長に就任 赤字垂れ流し経営にメス
(ダイエー摂津富田店「Wikipedia」より)
イオンは、ダイエーを子会社にするための株式公開買い付け(TOB)の開始時期を4月上旬としていたが、公正取引委員会の独占禁止法の審査の関係で7月中旬にズレ込む見通しだ。TOBの手続きの完了を待たずに、先行してトップを派遣する。
村井正平氏は慶應義塾大学法学部卒。大学時代はモデルをこなしたほどの長身の美丈夫。74年ジャスコ(現イオン)に入社以来、スーパー一筋。08年に、イオンの総合スーパー運営子会社、イオンリテールの社長に就任し、今年3月から会長を務めている。現在もイオングループで海外を含めた総合スーパー事業の最高経営責任者(CEO)を務める。
イオンリテールの社長として改革を手掛けた。在庫圧縮や人員配置の効率化でコストを削減しつつ、自転車や酒など自前の専門店を開発し、収益力を高めた。その手腕を買われて、ダイエー再建の切り札として送り込まれた。
村井氏はこう語る。ジャスコ三木店(兵庫県三木市)などの店長時代、しのぎを削ったダイエーのオレンジ色の看板は憧れだった。「店長はかくあるべし」と教わったのは社内の先輩ではなく、ライバルのダイエーの店長だった。ひと言では言い尽くせないほどの複雑な思いを抱いてダイエーに乗り込むことになる。社長就任の記者会見の席上、「趣味は?」との問いに、村井氏は「ダイエーの改革のみ」と答えた。
だが、前13年2月期まで、5期連続で最終赤字を垂れ流しているダイエーを再建するのは容易なことではない。13年2月期の連結売り上げは4%減の8312億円、営業損益は26億円の赤字(前の期は37億円の黒字)、最終損益は36億円の赤字(同113億円の赤字)だ。営業段階で赤字であることが、競争力の低下を如実に物語っている。14年2月期の最終損益も30億円の赤字の見込みで、6期連続の最終赤字となる。
ダイエーは8月にも3カ年の中期経営計画(14年3月スタート/以下、「中計」)をまとめる。中計には全約480店の改装などを盛り込む。店舗の競争力を高めて15年2月期の最終黒字を目指す。しかし、イオンの主導で進む再建計画は、こんな甘いものではないはずだ。もっと抜本的なものになるのは確実だろう。ダイエーの店舗のうち過半数が赤字店舗といわれている。最初に荒療治に手をつけなければ、子会社にする意味が、まったくないからだ。
イオンがダイエーを買収する狙いは大都市部での事業の拡大である。郊外型ショッピングモールを中心に、地方に強みを持つイオンにとって、首都圏や関西圏に地盤があるダイエーの店舗網はメリットが大きい。
イオンは海外事業の強化と並んで、国内での大都市シフトを重要戦略に掲げている。最優先課題は首都圏での事業だ。これまでも首都圏攻略に着々と手を打ってきた。
今年1月、英テスコから首都圏を中心に小型スーパー113店を運営するテスコジャパンの株式の50%を取得。3月には、J.フロントリテイリングから首都圏や関西圏に88店舗を展開している食品スーパー、ピーコックストアを買収した。そして、今度はダイエーの子会社化だ。
手薄だった首都圏の営業基盤の強化を狙い、イオンは2000年前半から食品スーパー4社に出資した。東京西部地区の、いなげや(売り上げ2217億円=13年3月期見込み)、茨城県のカスミ(2283億円=13年2月期)、埼玉県のベルク(1331億円=同)、都心で小型店を展開するマルエツ(3156億円=同)の4社の売り上げの合計は8987億円。ダイエーのそれ(8312億円)を上回る。
自前の食品スーパーであるマックスバリュー関東や、「まいばすけっと」と子会社にしたイオンエブリ(旧テスコジャパン)、ピーコックストア、ダイエー、さらにはマルエツ、いなげやなどを隊列に加えた関東圏の食品スーパー連合を目指す。
とはいっても、ダイエーの大型店がネックになるかもしれない。ダイエーの店舗は平均築年数が約30年と老朽化が激しいうえに、小売業の置かれた競争環境からみても、総合スーパーの大型店舗は使い道が、ほとんどない。「ダイエーというブランドでは客を呼べない」(流通業界のカリスマ経営者)という根本的な、そして一番大きな問題が横たわる。
ダイエーの看板をいつ降ろすか。ダイエー改革のハイライトはこれだ。村井・新社長がいつ決断するかにかかっている。
(文=編集部)