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ブラック企業アナリスト・新田龍「あの企業の裏側」第15回

銭湯、客数減でもなぜ潰れない?多額補助金、水道料金実質無料、税金免除…

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「Thinkstock」より
 「ブラック企業アナリスト」として、テレビ番組『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)、「週刊SPA!」(扶桑社)などでもお馴染みの新田龍氏。計100社以上の人事/採用戦略に携わり、数多くの企業の裏側を知り尽くした新田氏が、ほかでは書けない「あの企業の裏側」を暴きます。

 なぜ、銭湯は潰れないのだろう?

 統計数字を見る限り、銭湯は全国的に減少しているが、相応の人口規模を持つ都市では依然として健在だ。東京都の場合、わずか450円の料金で、それほど盛況というわけでもない銭湯が生きながらえているのはなぜだろうか。実は、その背景には「それでもやっていけるカラクリ」があることは、あまり知られていない。

 日本には「公衆浴場法」という法律がある。その中で「公衆浴場」は「一般公衆浴場」と「その他の公衆浴場」に分類されており、前者が「銭湯」と呼ばれ、施設の衛生基準や浴槽水の水質基準、そして入浴料金などが法律で定められている。後者は俗にスーパー銭湯、健康ランド、サウナなどと呼ばれる施設で、「温湯や温泉で公衆を入浴させる施設」であることは同じだが、営業形態が銭湯とは異なる浴場であり、料金規制などは受けない。今回は主に前者の「銭湯」について述べていく。

「一般市民向けに料金を徴収して温浴を提供するビジネス」としての銭湯は、日本においては鎌倉時代から存在しているといわれ、長い歴史がある。戦後も都市人口の増大によりその数は増え続け、1965年頃には全国で約2万2,000軒存在していた。しかしその後、風呂付き住宅が一般的になったことや、スーパー銭湯などその他の営業形態が増えたことなどで利用客と軒数が減っており、2013年時点では全国で約5,200軒にまで減少している。東京都内だけでみても、この約50年間で約2,600軒から約800軒への減少である。

 数の減少もあり、銭湯は報道などでは「厳しい経営環境」「燃料費の高騰や消費税増税などで今後さらに厳しく」「古きよき日本の伝統がまた一つピンチに」といった同情的な論調で語られることが多いが、実際はどのような状況なのか。

 確かに事業者も減っており、産業として衰退していることはその通りなのだが、実はその業界内部においては、利権と規制に守られた「経営努力をしない組織」が温存され、その維持に対して多額の税金が投入されているのである。

 まずは基本データとして、銭湯(一般公衆浴場)の年間売り上げの現状(09年・東京都内)を以下に記載してみよう。

 ※以下、年間売り上げ:施設数
 1,000万円未満:142施設(18.37%)
 1,000万円~1,500万円未満:255施設(32.99%)
 1,500万円~2,000万円未満:193施設(24.97%)
 2,000万円~2,500万円未満:96施設(12.42%)
 2,500万円~3,000万円未満:42施設(5.43%)
 3,000万円以上:45施設(5.82%)

 都内の銭湯のうち約4分の3が、年間売り上げ2,000万円未満なのである。個人の年収として2,000万円なら十分かもしれないが、これはあくまで「店舗の売り上げ」だ。ここから地代や水道光熱費、人件費や機材メンテナンス費を差し引けば、半分残るかどうか、というところだろう。ちなみに「公衆浴場業(一般公衆浴場)の実態と経営改善の方策」(厚生労働省 03年)によると、都内の銭湯における営業費割合はだいたい42~57%で推移している。