(「Wikipedia」より)
この調査を評価するのは、いわゆるブラック企業の被害に遭った若者の労働相談を手がけるNPO法人・POSSE代表で、昨年11月に『ブラック企業ビジネス』(朝日新聞出版)を上梓した今野晴貴氏である。
「ブラック企業問題では、現在の若者は粘りがなくて、何か嫌なことがあるとすぐに退職してしまうから離職率が高くなるという見方もあった。しかし、国がブラック企業問題は企業側に責任があるという見解をはっきりと示して、長時間労働や残業代不払いなどの改善が見られない企業を取り締まるというメッセージを出した。これには大きな意義がある」(今野氏)
実は昨年、ユニクロを展開するファーストリテイリング(ファストリ)とワタミから今野氏宛てに、相次いで通告書が送られてきた。まず3月27日付でファストリは、今野氏が自著『ブラック企業』(文春新書)内で同社(同書内では「衣料品販売会社X社」と記述)の過酷な労働環境について指摘した箇所について、次のように通告してきたという。
「この書籍において貴殿が摘示されている『衣料品販売会社X社』なるものが通告人会社らを指すものであることは、(略)明らかです」
「通告人会社らに対する虚偽の事実の摘示や違法な論評などを二度となされませんよう警告申し上げます」
この通告に対して、今野氏は「ユニクロはみずから過重労働を強いているX社は自社だと名乗り出たわけで、このX社と同じようなブラック体質がユニクロにあると自白したようなものです」と指摘する。
さらに5月29日付でワタミから通告書が届いた。「週刊文春」(文藝春秋)誌面で今野氏が「ワタミは長時間労働で鬱病になって辞める社員が多い」などと「虚構の事実を摘示し、もって通告人会社の名誉信用を毀損したものである」と抗議して、次の要求をしてきた。
「よって本書到着後5日以内に、上記週刊誌記事掲載内容の根拠を示すとともに謝罪文を提出されたく通告します。万一不履行の場合は法的措置に及ぶ所存につき申し添えます」
通告書が送付されて以降、両社からのアプローチはないというが、今野氏は通告書を送りつけてきた目的は2つあると見ている。
「ひとつは私を黙らせること。もうひとつは、私を見せしめにしてブラック企業批判をする人々を黙らせるという萎縮効果を狙ったことでしょう」
●違法企業の多い業種
POSSEのもとに寄せられる労務相談は、年々増加傾向にあり、昨年は2000件に迫る勢いだ。違法行為が多いのは新興企業で、業種ではITベンチャー、外食、介護などが多いという。ブラック企業の定義については特に統一基準はないが、今野氏は「入社3年以内の正社員離職率が30%を超える企業はブラックの疑いが強い」としている。