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片田珠美「精神科女医のたわごと」

インスタ写真も投稿…三浦瑠麗氏、国葬「透け喪服」に感じる無自覚型のナルシシスト

文=片田珠美/精神科医
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インスタ写真も投稿…三浦瑠麗氏、国葬「透け喪服」に感じる無自覚型のナルシシストの画像1
三浦瑠麗氏のInstagramより

 国際政治学者の三浦瑠麗氏が日本武道館で執り行われた安倍晋三元首相の国葬に参列した際に着用した喪服が、物議を醸している。胸の前と腕がスクエアに透けた“透け透け喪服”で、称賛の声だけでなく批判の声も上がっているようだ。

 インスタグラムにアップされた喪服姿の三浦氏を私も拝見して、以前から抱いていた「無自覚型のナルシシスト( Oblivious Narcissist )」という印象がさらに強くなった。確信に近くなったといっても過言ではない。

「無自覚型のナルシシスト」と名づけたのは、アメリカの精神科医グレン・ギャバードである。ギャバードは、強い自己愛の持ち主を「無自覚型」と「過剰警戒型 ( Hypervigilant Narcissist)」の2種類に分けたのだが、三浦氏には「無自覚型」の特徴がいくつも認められる。

「無自覚型」の特徴

 ギャバードは、「無自覚型」の特徴として次の6つを挙げている。

1)他人の反応に気づかない

2)傲慢で攻撃的

3)自己陶酔

4)注目の的でいたい

5) “送信器”はあるが、“受信器”がない

6)他人の気持ちを傷つけることに鈍感

 まず、三浦氏はたびたび炎上騒動を起こしているが、その一因として1)他人の反応に気づかないことがあると考えられる。いや、より正確には他人の反応なんかどうでもいいという感覚の持ち主なのかもしれない。東大卒の優秀な国際政治学者なので、愚かな大衆、つまり“愚衆”の反応なんかどうでもいいと思っているのではないか。

 この特徴は、5)“送信器”はあるが、“受信器”がないことによる。自分がいかに優秀で、どれだけすごい経歴の持ち主かを認めてほしいという承認欲求が強すぎ、発信ばかりしている。だから、周囲がそれをどのように受け止めるかに想像力が働かない。いや、そもそも想像してみようとさえしない。当然、敵意や反感を買う。だが、それを敏感にとらえる“受信器”がない。もしくは、“受信器”は一応あるのだが、少々ずれている。あるいは、薄々感じてはいても、しばしば「どうでもいい」と軽視して、意に介さない。

 こうした“受信器”の機能不全は、6)他人の気持ちを傷つけることに鈍感なように周囲の目には映りかねない。もっとも、“鈍感力”という言葉もあるように、これにはメリットもある。“鈍感力”を発揮して、批判をものともせず突き進んだからこそ成功した作家や芸術家、実業家や政治家は枚挙にいとまがない。

 その典型がアメリカのドナルド・トランプ前大統領だ。そういえば、2016年の大統領選で、トランプ氏の勝利を予測していた数少ない識者の1人が三浦氏だったと記憶している。同じ「無自覚型のナルシシスト」として惹きつけ合うものがあったのだろうか。

 三浦氏からは、2)傲慢で攻撃的な印象を受けることもある。「愚かな人にはわからないでしょ」というスタンスで上から目線で話すことが少なくないからだ。まあ、高学歴のうえ、華々しい経歴なので、小馬鹿にしたような態度になりがちなのは、仕方ないかもしれない。

 さらに、3)自己陶酔に陥っていて、4)注目の的でいたいという自己顕示欲も強そうに見える。とくに今回インスタグラムにアップした喪服姿の写真からは、「私きれいでしょ。センスいいでしょ」という自己陶酔の匂いがプンプン漂ってきた。しかも、「見て、見て。私を見て」というメッセージも伝わってきた。

 国葬も一種の葬式にほかならないと私は思う。だが、三浦氏の喪服姿の写真は、自分をアピールする場と勘違いしているような印象を与えかねない。だからこそ、批判や反感の声が上がっているのではないだろうか。

周囲に助言や忠告を与える人がいないのかもしれない

 それでは、なぜ無自覚なのか?もちろん、5)“送信器”はあるが、“受信器”がないことが大きいのだが、それに加えて次の2つの要因があると考えられる。

1)他人の反応を遮断

2)周囲の容認

 1)他人の反応を遮断するのは、自己愛が傷つかないようにするための防衛メカニズムである。意外に思われるかもしれないが、ナルシシストは「無自覚型」であっても、自己愛が少しでも傷つくことに敏感で、何とかそれを避けて自己評価を守ろうとする。三浦氏はプライドが高そうなので、この傾向がとくに強いのかもしれない。

 2)周囲の容認によって、本人の無自覚さに拍車がかかることもある。三浦氏は、頭脳明晰なだけでなく美人なので、テレビ番組のコメンテーターとして活躍してきた。大物芸能人にも気に入られていると聞く。また、SNSでの発信が注目を集め、メディアで取り上げられることも少なくない。

 その結果、たとえ炎上を繰り返しても、三浦氏の言動を周囲が容認するようになったとしても不思議ではない。このような成功体験から、「自分は特別な人間だから、少々のことは許される」という特権意識を三浦氏が抱くようになった可能性も十分考えられる。

 もっとも、周囲の容認が度を超し、三浦さんに助言する人がいなくなっているのではないかと危惧する。今回、「“透け透け”ではない喪服で国葬に列席したほうがいい」と忠告する人は周囲にいなかったのだろうか。三浦さんは美人なので、黒のシンプルな喪服、とくに和服をお召しになったら、その美しさが一層際立つと個人的には思う。

(文=片田珠美/精神科医)

参考文献

片田珠美『高学歴モンスター』小学館新書、2018年

Glen 0.Gabbard : Two Subtypes of Narcissistic Personality Disorder. Bulletin of the Menninger Clinic.53, 527-532. 1989

片田珠美/精神科医

片田珠美/精神科医

広島県生まれ。精神科医。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士(京都大学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。DEA(専門研究課程修了証書)取得。パリ第8大学博士課程中退。京都大学非常勤講師(2003年度~2016年度)。精神科医として臨床に携わり、臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。社会問題にも目を向け、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析学的視点から分析。

Twitter:@tamamineko

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