マイナンバーカードの申請件数の割合が70%を超えた。2016年1月に交付が始まったマイナカードだが、なかなか普及が進まず、ポイント付与などの特典によって、約7年かけて70%にまで達した。
今後、政府は保険証との一体化や運転免許証との統合などの施策によって、3月末までに“ほぼすべての国民”に所持させることを狙っている。河野太郎デジタル大臣は、その目標達成について「いけるのではないか」と自信をみせている。さらに河野大臣は、TwitterなどのSNSの利用の際にも、マイナンバーを紐づけることを提案するなど、普及を加速させようとしている。
だが、いまだに反対の声も根強くある。もっとも大きな理由のひとつは、個人情報のセキュリティの問題だ。当初、政府はマイナカードを歩かず、自宅で保管すること前提としていた。カードに記載されたマイナンバーを他人に読み取られないように、と注意を呼び掛けていた。それがいつのまにか、身分証明書として利用されることになり、買い物の際のポイントを付与するなど、持ち歩くことが当たり前のようになってきた。
さらには、保険証や運転免許証との一体化により、常に携帯することが必要な状況にしようとしている。将来的には、スマートフォンに組み込むことも見込んでおり、すでにアンドロイドのスマホでは実証実験が始まっている。iPhoneについても、搭載できるようにアップル社と交渉中だ。
マイナポイントをもらうことを目的としてカードをつくった方も多いことだろう。ポイントをもらうためには、2月中にカードを申請しなければならず、駆け込み申請で多くの自治体の窓口は混乱しているという。なかには外部の業者にマイナカード業務を委託しているケースもあるが、自治体によっては役所の職員が担当しており、普段の業務とマイナカードの業務を兼務している場合には多忙を極める。ある自治体の職員は、マイナカード業務によって、心身ともに疲弊しているとこぼす。
「今は2月末までのマイナポイント第2弾のために、カードの駆け込み申請が殺到していて、その対応のために忙しくなっています。しかし、それ以上に大変なのが、窓口にできあがったカードを取りに来られた方への応対です。マイナポイントの制度が複雑すぎるので、説明してもなかなか理解してもらえないんです。特に高齢の方は、ポイントを受け取るための手順が飲み込めず、怒り出す方も毎日のようにいます。カードをつくるだけで、当然に2万円分のポイントがもらえると思っている方がとても多いんです」(マイナカード担当職員)
「マイナカードを取得すると最大2万円分のポイントがもらえる」との謳い文句だけが一人歩きし、カードをつくるだけで2万円分のポイントがもらえると勘違いしている人が多いというのだ。
マイナポイントを受け取るためには、2月末までにマイナカードを申請する必要がある。ここで注意が必要なのは、2月末までにカードを申請すれば、最大5000円のポイントをもらえる“権利”が取得できるという点だ。カードをつくったからといって、当然にポイントがもらえるわけではない。
まず、スマホなどでマイナポイントの申請を行う。次に、マイナカードと、自分が利用したいキャッシュレス決済を紐づけなければならない。そのうえで、そのキャッシュレス決済で買い物もしくはチャージした分の25%がポイントとして付与される。つまり、2万円分以上の買い物もしくはチャージをして、初めて5000円分のポイントがもらえることになる。
それに加え、健康保険証としてマイナカードを登録すれば7500円分、公金受け取り口座を登録すればさらに7500円分のポイントが付与される。これらの合計額が「最大2万円」となる。もちろん、さまざまなところで広報活動は行われているが、この手順を理解できていない方も多いようだ。
「高齢者の多くは、ポイント付与の手順を面倒くさがって、自治体の職員に代理で行ってほしいと苦情が多く寄せられます。しかし、説明などお手伝いはできますが、代行するわけにはいかないんです。さらに、すでにマイナカードを持っている方でも、ポイント申請する際に暗証番号を忘れてしまって手続きができないとの相談が非常に多くあります。このようなカード作成業務以外の仕事に、膨大な時間を費やしているのが実情です。ここ数カ月は、時間外労働が150時間から200時間に上っています。きちんと時間外手当は支給されていますが、心身ともに限界です」(同)
2月末までの駆け込み需要が終われば、マイナカード担当の窓口は一段落するのだろうか。マイナカードは5年に一度更新が必要になる。その更新の際にも、暗証番号の失念などで慌てる方も多くなり、役所の窓口の仕事も増えるのかもしれない。
(文=Business Journal編集部)